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本編

第七十八話

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遠乗りを終え、キャメロット公爵家に戻ろうとすしていた私は、ジェイド様によって強引に王宮へと連れ帰られた。

「もう離してやれないと言っただろう?」
「しかし、お義母様達も心配されますし………」

本音を言えば、私だってジェイド様と一緒にいたいし、離れたくなんかありませんけど………。

「公爵家には使いを出した。会いたければ、王宮に呼び出せば良い」
「しかし、まだ私は婚約者として公にもなっている訳ではないですのに………。あまり外聞がよろしくないのでは?」
「既に大半の高位貴族は知っている。それに、これでもう隠したりする必要はないからな。今後はエリーゼ・キャメロット公爵令嬢として、そして私の婚約者として堂々と振る舞えばいい」

…………まるで、獲物を追い詰める肉食獣のように、ジェイド様は私の逃げ道を先手を打って、どんどん塞いでいく。
結局、初めから全部この方の手の平の上で転がされていたのですわね。

「いきなり、と言うわけにはいきませんけれど、ジェイド様の隣に立つ者として恥ずかしくないように精進して参りますわ」

私がはにかみながら微笑むと、ジェイド様が抱き締めて来た。

「ジェイド様………?」
「そなただって狡いではないか。こんなにも、私を虜にさせるのだから」

そう耳元で囁かれて、私は頬を赤らめた。

「そうやって恥じらうそなたを見るのも悪くないな」
「お、お戯れはおやめ下さい…………っ」

更に恥ずかしくなって顔をそむけようとすると、ジェイド様が私の顔を覗き込んできた。

「そう言えば、カレルを出る時の約束を忘れてはいないだろうな?」
「や、………約束?」

私、何かジェイド様と約束をしましたっけ?

「その様子だと、覚えていないようだな?」
「も………申し訳ございません」
「それだ」
「はい?」

ジェイド様が仰る意味がまるでわかりませんわ。私は首を傾げた。

「立場が変われば、言葉遣いを正すと約束しただろう」

ジェイド様に言われて、ようやく思い出す。
そう言えばあの断罪の後、言葉遣いをもっと気安くしろと言われて………。

「そなたはもう、属国の貴族でも、従者でもない。私の婚約者で、未来の王太子妃だろう?」

私は、返す言葉が出て来なかった。
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