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本編
第四十一話
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「夜会の招待………?」
最近は、大分王宮に通うのも慣れ、少しずつだけれど仕事をお手伝いできるようになりましたわ。
やはり、サイラス様のようにはいきませんけれど、それでも書類の振り分けなどの簡単な仕事はさせてもらえるようになりました。
「あぁ。もう一つの公爵家、グラッドフォード公爵家主催だ。私と、エリーゼ宛だな」
夜会なんて、あの婚約破棄劇場の時の夜会から出ていないけれど、そもそもエルカリオン王国に来てから夜会への出席があるだなんて………。いくらお義父様達の後見があるとはいえ、私はこの国の貴族ではないのに、何故私宛に招待状が届くのかしら。
「それは、お断りできないのでしょうか。私、夜会用のドレスなど持ってきておりませんもの」
「私と、キャメロット公爵の顔に泥を塗るつもりなら欠席しても構わん。ドレスは今から手配すれば充分に間に合うだろう」
「でも、ドレスを新調するには費用もかかりますし………」
私のお給金は全てキャメロット公爵家にまわしてもらっているけれど、ドレスを新調出来る程は稼いでいない。
「何だ、そんなことか。それは全て私が持つから気にするな」
「え?何故ジェイド様が私のドレスを買うのです?」
「そなたは私の従者だから、その身支度の費用くらい出すのは当然だ」
そういうものですの?
「エリーゼ嬢、殿下の仰るとおりにしておけばいいのですよ」
戸惑う私に、サイラス様がこそっと助言を下さる。
「承知いたしました。お心遣いありがとうございます」
「………何故サイラスの言う事は、素直に聞き入れるのだ?」
物凄く憮然とした表情で、私を睨んでくる。また、何か気に入らないご様子ですわね。
「サイラス様が一番信用できるからです」
「………私は信用ならないと?」
「そういうわけではありません。ただ、ジェイド様は時々強引な事がございますので、判断に困るのです」
「ぶっ………!」
隣で、サイラス様が吹き出した。私、面白い事など言っておりませんのに。
「………強引で悪かったな」
「いえ。ジェイド様は、王族でいらっしゃいますので当然かと存じます」
「………もういい。おい、サイラス。どこかに適当な仕立て屋を手配しておけ」
「かしこまりました」
ご機嫌斜めなジェイド様は、そのままどこかに行ってしまわれた。
最近は、大分王宮に通うのも慣れ、少しずつだけれど仕事をお手伝いできるようになりましたわ。
やはり、サイラス様のようにはいきませんけれど、それでも書類の振り分けなどの簡単な仕事はさせてもらえるようになりました。
「あぁ。もう一つの公爵家、グラッドフォード公爵家主催だ。私と、エリーゼ宛だな」
夜会なんて、あの婚約破棄劇場の時の夜会から出ていないけれど、そもそもエルカリオン王国に来てから夜会への出席があるだなんて………。いくらお義父様達の後見があるとはいえ、私はこの国の貴族ではないのに、何故私宛に招待状が届くのかしら。
「それは、お断りできないのでしょうか。私、夜会用のドレスなど持ってきておりませんもの」
「私と、キャメロット公爵の顔に泥を塗るつもりなら欠席しても構わん。ドレスは今から手配すれば充分に間に合うだろう」
「でも、ドレスを新調するには費用もかかりますし………」
私のお給金は全てキャメロット公爵家にまわしてもらっているけれど、ドレスを新調出来る程は稼いでいない。
「何だ、そんなことか。それは全て私が持つから気にするな」
「え?何故ジェイド様が私のドレスを買うのです?」
「そなたは私の従者だから、その身支度の費用くらい出すのは当然だ」
そういうものですの?
「エリーゼ嬢、殿下の仰るとおりにしておけばいいのですよ」
戸惑う私に、サイラス様がこそっと助言を下さる。
「承知いたしました。お心遣いありがとうございます」
「………何故サイラスの言う事は、素直に聞き入れるのだ?」
物凄く憮然とした表情で、私を睨んでくる。また、何か気に入らないご様子ですわね。
「サイラス様が一番信用できるからです」
「………私は信用ならないと?」
「そういうわけではありません。ただ、ジェイド様は時々強引な事がございますので、判断に困るのです」
「ぶっ………!」
隣で、サイラス様が吹き出した。私、面白い事など言っておりませんのに。
「………強引で悪かったな」
「いえ。ジェイド様は、王族でいらっしゃいますので当然かと存じます」
「………もういい。おい、サイラス。どこかに適当な仕立て屋を手配しておけ」
「かしこまりました」
ご機嫌斜めなジェイド様は、そのままどこかに行ってしまわれた。
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