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本編
第三十話
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その後、ジェイド様も加わって王妃様とのお茶を楽しんだ。
これから、キャメロット公爵邸に行かなければならないので、席を立とうとすると、王妃様に引き止められた。
「ねえ。私、エリーゼちゃんの事が気に入っちゃったわ。話をしていて楽しいし、何より冷静でとても博識だわ。退屈な令嬢たちの、ピーピーと甲高い、九官鳥のようなお喋りとは違って、落ち着いてお茶が楽しめるもの。………そうだわ。公爵には連絡を入れておくから、今日も王宮にお泊まりしていけばいいじゃない」
王妃様。結構辛辣な事を仰るのね。しかし、いくらなんでもそれは無理ですわ。王妃様と言えどもそんな我儘を通すのはよろしくありませんもの。
「王妃様。私は今後も登城の機会はいくらでもありますので、また是非その機会にお邪魔させていただきますわ」
「そうね。じゃあ週に一度はお茶会にしましょう。いいわよね、ジェイド?」
「………どうせ、だめだと言っても聞かないんでしょう。エリーゼは母上のおもちゃではありませんからね」
またここでも私の意思は関係ないようですわね。とりあえず無事にキャメロット公爵邸に行けるようなので安心ですけれど。これからお世話になる方々に迷惑はかけられないですからね。
「では、ごきげんよう」
「またね、エリーゼちゃん」
私は、ジェイド様と共に中庭を後にした。
「………すまなかったな」
「はい?」
少しだけバツが悪そうに、ジェイド様が謝罪してきた。突然どうしたのかしら。
「先程、いきなり怒ったことだ。そなたの身に何かあったらと、不安で………」
「………普通、従者の身の安全を心配する主人なんて、いらっしゃらないと思いますけれど」
「そうか?主人と従者は一蓮托生だからな。心配だってするさ」
「では、サイラス様の事も心配してらっしゃいます?」
「あれは殺しても死なない男だ」
「そんなはずありませんわ。ちゃんと人間ですからね」
ジェイド様は、この国にまだ不慣れな私を、心配してくださったのだと思う。少し傲慢だけれど、本当は優しい方なのだ。
そんな事を考えたら、胸が甘酸っぱく疼くのを感じた。
これから、キャメロット公爵邸に行かなければならないので、席を立とうとすると、王妃様に引き止められた。
「ねえ。私、エリーゼちゃんの事が気に入っちゃったわ。話をしていて楽しいし、何より冷静でとても博識だわ。退屈な令嬢たちの、ピーピーと甲高い、九官鳥のようなお喋りとは違って、落ち着いてお茶が楽しめるもの。………そうだわ。公爵には連絡を入れておくから、今日も王宮にお泊まりしていけばいいじゃない」
王妃様。結構辛辣な事を仰るのね。しかし、いくらなんでもそれは無理ですわ。王妃様と言えどもそんな我儘を通すのはよろしくありませんもの。
「王妃様。私は今後も登城の機会はいくらでもありますので、また是非その機会にお邪魔させていただきますわ」
「そうね。じゃあ週に一度はお茶会にしましょう。いいわよね、ジェイド?」
「………どうせ、だめだと言っても聞かないんでしょう。エリーゼは母上のおもちゃではありませんからね」
またここでも私の意思は関係ないようですわね。とりあえず無事にキャメロット公爵邸に行けるようなので安心ですけれど。これからお世話になる方々に迷惑はかけられないですからね。
「では、ごきげんよう」
「またね、エリーゼちゃん」
私は、ジェイド様と共に中庭を後にした。
「………すまなかったな」
「はい?」
少しだけバツが悪そうに、ジェイド様が謝罪してきた。突然どうしたのかしら。
「先程、いきなり怒ったことだ。そなたの身に何かあったらと、不安で………」
「………普通、従者の身の安全を心配する主人なんて、いらっしゃらないと思いますけれど」
「そうか?主人と従者は一蓮托生だからな。心配だってするさ」
「では、サイラス様の事も心配してらっしゃいます?」
「あれは殺しても死なない男だ」
「そんなはずありませんわ。ちゃんと人間ですからね」
ジェイド様は、この国にまだ不慣れな私を、心配してくださったのだと思う。少し傲慢だけれど、本当は優しい方なのだ。
そんな事を考えたら、胸が甘酸っぱく疼くのを感じた。
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