3 / 102
本編
第三話
しおりを挟む
「貴様は俺を侮辱した罪とボニータを虐めた罪で投獄されるんだ!ふはははは!」
いや、普通に考えておかしいでしょう。
いくら公爵家嫡男とはいっても、私は侯爵家の出身で彼の正式な婚約者なのに不敬罪ですって?
王族相手ならまだ分かりますけれど、彼の先祖が王族だったのはもう何代も前の話ですもの。無理な理屈だわ。
ほら、私を捕らえている騎士さんたちが凄く申し訳無さそうな顔をしているじゃありませんか………。
「私がアーロン様への不敬罪に問われるのでしたら、アーロン様もボニータ嬢との姦通罪に問われるのでは?」
私は静かに、アーロン様達を見つめる。
「あたしはただアーロン様に従っただけよぉっ!それにまだ婚約できないから、一回しかヤッてないんだからっ」
………頭のネジも股も緩い女って、本当にいるものなのね。カマをかけたら見事に引っかかってきましたわ。
「ボニータ!ちゃんと節度を守っているんだな。かわいい奴め」
「アーロン様、好きぃっ♡」
周囲に広がる異様な空気をまるで感じない甘ーい雰囲気のお二人。イチャつくならイチャつくで結構ですが、どこか他所で、それも陸か海の孤島でお願いしたいですわね。
「私が告発せずとも、今の発言はこの場にいらっしゃる皆様方も聞いていらっしゃいますので、お忘れなきよう」
「ふんっ、俺は次期公爵だぞ!そんな脅しが効くと思っているとは愚かなことだなっ」
あらあら、愚かなのはどちらでしょう?
姦通罪は、この国では重罪なのをご存知ないのかしら?
まして、婚前交渉などもってのほかですのに………。
「それに嫌がらせをしたとの件は、ボニータ嬢の証言以外の証人はいらっしゃいますの?」
「そんなもの、必要なかろう!ボニータの証言が全てだ!」
「では嫌がらせとは、具体的にいつ、どこで、何を、どのようにされたのですか?私は毎日日記をつけておりますので、それと照らし合わせれば確認はできますわね?」
「そんなもの、いつでも偽造出来る!」
「少なくとも物的証拠のない、一方的な証言よりは遥かに信用されると思いますけど。何なら貴族院で審議にかけていただきましょうか?それならば公平な判断が下されますので、どちらの言い分が正しいのか………」
バシッ!
私がそこまで喋ると、大股で歩み寄ってきたアーロン様が、いきなり私の頬を平手打ちした。
周囲のギャラリーから小さな悲鳴があがるのが聞こえる。
突然の衝撃と、頬に走った熱さはじんじんと痛みを伴ってくる。
同時に口の中に鉄の匂いと血の味が広がってきた。
言葉で勝てなければ暴力に訴えるとは、本当に下劣で野蛮ですこと。
「黙れ!」
「………何故です?言いがかりをつけてきたのはアーロン様ではありませんか」
「黙れ!黙れ!黙れ!!」
アーロン様は怒り狂う。
これしきの事で癇癪を起こすのは困ったものですわ。一体どうやって育てばこうなるのかしら?
アーロン様が再び手を振り上げた。私は、怯まずに静かに目を閉じて、襲ってくる痛みに耐える準備をする。
でも、いつになってもその手が振り下ろされる事はなかった。
ゆっくりと目を開くと、目の前にはアーロン様の腕を捻り上げた、背の高い男性の姿があった。
いや、普通に考えておかしいでしょう。
いくら公爵家嫡男とはいっても、私は侯爵家の出身で彼の正式な婚約者なのに不敬罪ですって?
王族相手ならまだ分かりますけれど、彼の先祖が王族だったのはもう何代も前の話ですもの。無理な理屈だわ。
ほら、私を捕らえている騎士さんたちが凄く申し訳無さそうな顔をしているじゃありませんか………。
「私がアーロン様への不敬罪に問われるのでしたら、アーロン様もボニータ嬢との姦通罪に問われるのでは?」
私は静かに、アーロン様達を見つめる。
「あたしはただアーロン様に従っただけよぉっ!それにまだ婚約できないから、一回しかヤッてないんだからっ」
………頭のネジも股も緩い女って、本当にいるものなのね。カマをかけたら見事に引っかかってきましたわ。
「ボニータ!ちゃんと節度を守っているんだな。かわいい奴め」
「アーロン様、好きぃっ♡」
周囲に広がる異様な空気をまるで感じない甘ーい雰囲気のお二人。イチャつくならイチャつくで結構ですが、どこか他所で、それも陸か海の孤島でお願いしたいですわね。
「私が告発せずとも、今の発言はこの場にいらっしゃる皆様方も聞いていらっしゃいますので、お忘れなきよう」
「ふんっ、俺は次期公爵だぞ!そんな脅しが効くと思っているとは愚かなことだなっ」
あらあら、愚かなのはどちらでしょう?
姦通罪は、この国では重罪なのをご存知ないのかしら?
まして、婚前交渉などもってのほかですのに………。
「それに嫌がらせをしたとの件は、ボニータ嬢の証言以外の証人はいらっしゃいますの?」
「そんなもの、必要なかろう!ボニータの証言が全てだ!」
「では嫌がらせとは、具体的にいつ、どこで、何を、どのようにされたのですか?私は毎日日記をつけておりますので、それと照らし合わせれば確認はできますわね?」
「そんなもの、いつでも偽造出来る!」
「少なくとも物的証拠のない、一方的な証言よりは遥かに信用されると思いますけど。何なら貴族院で審議にかけていただきましょうか?それならば公平な判断が下されますので、どちらの言い分が正しいのか………」
バシッ!
私がそこまで喋ると、大股で歩み寄ってきたアーロン様が、いきなり私の頬を平手打ちした。
周囲のギャラリーから小さな悲鳴があがるのが聞こえる。
突然の衝撃と、頬に走った熱さはじんじんと痛みを伴ってくる。
同時に口の中に鉄の匂いと血の味が広がってきた。
言葉で勝てなければ暴力に訴えるとは、本当に下劣で野蛮ですこと。
「黙れ!」
「………何故です?言いがかりをつけてきたのはアーロン様ではありませんか」
「黙れ!黙れ!黙れ!!」
アーロン様は怒り狂う。
これしきの事で癇癪を起こすのは困ったものですわ。一体どうやって育てばこうなるのかしら?
アーロン様が再び手を振り上げた。私は、怯まずに静かに目を閉じて、襲ってくる痛みに耐える準備をする。
でも、いつになってもその手が振り下ろされる事はなかった。
ゆっくりと目を開くと、目の前にはアーロン様の腕を捻り上げた、背の高い男性の姿があった。
10
お気に入りに追加
827
あなたにおすすめの小説
【完結】選ばないでください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
豪華で綺麗な人達の中に紛れ込んで、
偽物の私が、何食わぬ顔で座っている。
私が、この場所にいるべきでない事は、私が一番知っている。
私に資格がない事は、私が一番知っている。
なのに、誰よりも高貴な貴方は私だけを見つめてきて、
あの時のように微笑みかけてくる。
その微笑みに見とれながら、
私はこの場所から逃げたくて仕方がない。
貴方には私より、もっとふさわしい人がいる。
本当はこの場所に来れるはずがない私だけど、
貴方に出会う事ができた。
貴方の笑顔を目に焼き付けて、
私は、何事もなくここから解放される時を待つ。
だから、、、
お願い、、、
私の事は、、、、
選ばないでください。
8月26日~続編追加します。不定期更新。完結→連載へ設定変更となります。ご了承ください。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
変態婚約者を無事妹に奪わせて婚約破棄されたので気ままな城下町ライフを送っていたらなぜだか王太子に溺愛されることになってしまいました?!
utsugi
恋愛
私、こんなにも婚約者として貴方に尽くしてまいりましたのにひどすぎますわ!(笑)
妹に婚約者を奪われ婚約破棄された令嬢マリアベルは悲しみのあまり(?)生家を抜け出し城下町で庶民として気ままな生活を送ることになった。身分を隠して自由に生きようと思っていたのにひょんなことから光魔法の能力が開花し半強制的に魔法学校に入学させられることに。そのうちなぜか王太子から溺愛されるようになったけれど王太子にはなにやら秘密がありそうで……?!
※適宜内容を修正する場合があります
果たされなかった約束
家紋武範
恋愛
子爵家の次男と伯爵の妾の娘の恋。貴族の血筋と言えども不遇な二人は将来を誓い合う。
しかし、ヒロインの妹は伯爵の正妻の子であり、伯爵のご令嗣さま。その妹は優しき主人公に密かに心奪われており、結婚したいと思っていた。
このままでは結婚させられてしまうと主人公はヒロインに他領に逃げようと言うのだが、ヒロインは妹を裏切れないから妹と結婚して欲しいと身を引く。
怒った主人公は、この姉妹に復讐を誓うのであった。
※サディスティックな内容が含まれます。苦手なかたはご注意ください。
森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。
玖保ひかる
恋愛
[完結]
北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。
ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。
アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。
森に捨てられてしまったのだ。
南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。
苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。
※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。
※完結しました。
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので
モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。
貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。
──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。
……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!?
公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。
(『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる