2 / 102
本編
第二話
しおりを挟む
「つまり、まだお話されていないのですね?」
「だから何だと言うんだ!」
全く、いちいち怒鳴らなくても聞こえていますわ。大きな口を開けて喋るので、唾は飛び散るし、本当に公爵令息なのかと疑いたくなるレベルですね。
「婚約は、家同士の契約ですわ。当人同士の意志など二の次ですの。心から愛し合った者同士が結ばれるなど、お話の中だけ。まさに夢物語なのです。おわかり?」
そう。小説に出てくるような恋愛結婚は、理想論。
現実に目を向ければ、貴族であれ、平民であれ、皆家同士の繋がりを重視した結婚が主流。
勿論婚約してからや、夫婦になってから恋愛感情が芽生える事もあると聞きますが、あくまできっかけは恋愛ではないということもご存知ないのかしら?
「あらぁ、エリーゼ様はアーロン様に愛されていなかったから、悔し紛れでそんな事おっしゃるのですねぇ~」
ボイーン………じゃなかった、ボニータ嬢が丸い顔に嫌らしい笑顔を浮かべて挑発してきた。
「当たり前だ。こんな女を愛せるわけがないだろう」
………その言葉、そっくり貴方にお返ししますわ。
うん、こう見てるとこのお二人は似た者同士、お似合いなのかもしれませんわね。
「私が申し上げたいのは、私達だけの判断では婚約破棄出来ないということです。婚約破棄していただけるのは私にとってもありがたい事ですけれど。とにかく、この場でどうこう話し合う事ではございませんわ」
面倒ですけど挑発には乗らず、あくまで冷静に二人を諭すことにしましょう。多分この二人は何を言っても聞かない人種ですからね。
「俺が婚約破棄と言ったらそれは決定事項だ!つべこべ言うな!」
駄目ですわ。話になりません。
「アーロン様。貴方ははジャーマンダー公爵家の嫡男。将来は公爵家を継がれるお方です。そのような横暴な態度をお取りになるのは、感心しませんわ。それではまるで幼い子供ではありませんか」
何だか癇癪を起こした幼子を相手にしているような気分になった私は、ついアーロン様を諌めてしまった。
すると、アーロン様は両手をきつく握りしめて、顔を真っ赤にしていらっしゃいます。あら、怒らせましたわね。
「貴様!俺を侮辱したな!」
淑女に向かって貴様って………。
最早教育を施し直したほうがよろしいんじゃないかしら?
そんなことを呑気に考えていると、アーロン様がまた喚き散らした。
「おい、誰か!この女を引っ捕らえろ!不敬罪だ!」
貴様呼ばわりのあとは、この女呼ばわりですの?つくづく品の無い方ですこと。
呆れ果てて、その場に突っ立っていた私は、アーロン様の命令で駆けつけた騎士に呆気なく捕縛されてしまった。
「だから何だと言うんだ!」
全く、いちいち怒鳴らなくても聞こえていますわ。大きな口を開けて喋るので、唾は飛び散るし、本当に公爵令息なのかと疑いたくなるレベルですね。
「婚約は、家同士の契約ですわ。当人同士の意志など二の次ですの。心から愛し合った者同士が結ばれるなど、お話の中だけ。まさに夢物語なのです。おわかり?」
そう。小説に出てくるような恋愛結婚は、理想論。
現実に目を向ければ、貴族であれ、平民であれ、皆家同士の繋がりを重視した結婚が主流。
勿論婚約してからや、夫婦になってから恋愛感情が芽生える事もあると聞きますが、あくまできっかけは恋愛ではないということもご存知ないのかしら?
「あらぁ、エリーゼ様はアーロン様に愛されていなかったから、悔し紛れでそんな事おっしゃるのですねぇ~」
ボイーン………じゃなかった、ボニータ嬢が丸い顔に嫌らしい笑顔を浮かべて挑発してきた。
「当たり前だ。こんな女を愛せるわけがないだろう」
………その言葉、そっくり貴方にお返ししますわ。
うん、こう見てるとこのお二人は似た者同士、お似合いなのかもしれませんわね。
「私が申し上げたいのは、私達だけの判断では婚約破棄出来ないということです。婚約破棄していただけるのは私にとってもありがたい事ですけれど。とにかく、この場でどうこう話し合う事ではございませんわ」
面倒ですけど挑発には乗らず、あくまで冷静に二人を諭すことにしましょう。多分この二人は何を言っても聞かない人種ですからね。
「俺が婚約破棄と言ったらそれは決定事項だ!つべこべ言うな!」
駄目ですわ。話になりません。
「アーロン様。貴方ははジャーマンダー公爵家の嫡男。将来は公爵家を継がれるお方です。そのような横暴な態度をお取りになるのは、感心しませんわ。それではまるで幼い子供ではありませんか」
何だか癇癪を起こした幼子を相手にしているような気分になった私は、ついアーロン様を諌めてしまった。
すると、アーロン様は両手をきつく握りしめて、顔を真っ赤にしていらっしゃいます。あら、怒らせましたわね。
「貴様!俺を侮辱したな!」
淑女に向かって貴様って………。
最早教育を施し直したほうがよろしいんじゃないかしら?
そんなことを呑気に考えていると、アーロン様がまた喚き散らした。
「おい、誰か!この女を引っ捕らえろ!不敬罪だ!」
貴様呼ばわりのあとは、この女呼ばわりですの?つくづく品の無い方ですこと。
呆れ果てて、その場に突っ立っていた私は、アーロン様の命令で駆けつけた騎士に呆気なく捕縛されてしまった。
6
お気に入りに追加
826
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
交換された花嫁
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉さんなんだから我慢なさい」
お姉さんなんだから…お姉さんなんだから…
我儘で自由奔放な妹の所為で昔からそればかり言われ続けてきた。ずっと我慢してきたが。公爵令嬢のヒロインは16歳になり婚約者が妹と共に出来きたが…まさかの展開が。
「お姉様の婚約者頂戴」
妹がヒロインの婚約者を寝取ってしまい、終いには頂戴と言う始末。両親に話すが…。
「お姉さんなのだから、交換して上げなさい」
流石に婚約者を交換するのは…不味いのでは…。
結局ヒロインは妹の要求通りに婚約者を交換した。
そしてヒロインは仕方無しに嫁いで行くが、夫である第2王子にはどうやら想い人がいるらしく…。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
真実の愛がどうなろうと関係ありません。
希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令息サディアスはメイドのリディと恋に落ちた。
婚約者であった伯爵令嬢フェルネは無残にも婚約を解消されてしまう。
「僕はリディと真実の愛を貫く。誰にも邪魔はさせない!」
サディアスの両親エヴァンズ伯爵夫妻は激怒し、息子を勘当、追放する。
それもそのはずで、フェルネは王家の血を引く名門貴族パートランド伯爵家の一人娘だった。
サディアスからの一方的な婚約解消は決して許されない裏切りだったのだ。
一ヶ月後、愛を信じないフェルネに新たな求婚者が現れる。
若きバラクロフ侯爵レジナルド。
「あら、あなたも真実の愛を実らせようって仰いますの?」
フェルネの曾祖母シャーリンとレジナルドの祖父アルフォンス卿には悲恋の歴史がある。
「子孫の我々が結婚しようと関係ない。聡明な妻が欲しいだけだ」
互いに塩対応だったはずが、気づくとクーデレ夫婦になっていたフェルネとレジナルド。
その頃、真実の愛を貫いたはずのサディアスは……
(予定より長くなってしまった為、完結に伴い短編→長編に変更しました)
王太子殿下から婚約破棄されたのは冷たい私のせいですか?
ねーさん
恋愛
公爵令嬢であるアリシアは王太子殿下と婚約してから十年、王太子妃教育に勤しんで来た。
なのに王太子殿下は男爵令嬢とイチャイチャ…諫めるアリシアを悪者扱い。「アリシア様は殿下に冷たい」なんて男爵令嬢に言われ、結果、婚約は破棄。
王太子妃になるため自由な時間もなく頑張って来たのに、私は駒じゃありません!
リアンの白い雪
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
その日の朝、リアンは婚約者のフィンリーと言い合いをした。
いつもの日常の、些細な出来事。
仲直りしていつもの二人に戻れるはずだった。
だがその後、二人の関係は一変してしまう。
辺境の地の砦に立ち魔物の棲む森を見張り、魔物から人を守る兵士リアン。
記憶を失くし一人でいたところをリアンに助けられたフィンリー。
二人の未来は?
※全15話
※本作は私の頭のストレッチ第二弾のため感想欄は開けておりません。
(全話投稿完了後、開ける予定です)
※1/29 完結しました。
感想欄を開けさせていただきます。
様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。
ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、
いただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。
申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。
もちろん、私は全て読ませていただきます。
※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。
【1/21取り下げ予定】悲しみは続いても、また明日会えるから
gacchi
恋愛
愛人が身ごもったからと伯爵家を追い出されたお母様と私マリエル。お母様が幼馴染の辺境伯と再婚することになり、同じ年の弟ギルバードができた。それなりに仲良く暮らしていたけれど、倒れたお母様のために薬草を取りに行き、魔狼に襲われて死んでしまった。目を開けたら、なぜか五歳の侯爵令嬢リディアーヌになっていた。あの時、ギルバードは無事だったのだろうか。心配しながら連絡することもできず、時は流れ十五歳になったリディアーヌは学園に入学することに。そこには変わってしまったギルバードがいた。電子書籍化のため1/21取り下げ予定です。
蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる