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学園二年生編

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長期休暇が終わり、今日は二年生の始業式。
長期休暇と言っても、三週間程の休みだから、春休みみたいなものだ。だからどうしても、出来る事は限られて来てしまう。

殆どの生徒は、地方の領地に出掛けたり、旅行に行ったりしたみたいだけれど、引き籠もり体質の私は、殆ど屋敷に閉じこもっていた。何度かアルフレッド様が訪ねてきたり、王宮に呼ばれて行ったりしたけれど、普段の休みとあまり変わりのない過ごし方だった。

「やあ、ジュリア。また一段と美貌に磨きがかかったようだね」

一年生の時と同じように、アルフレッド様と共に登校し、席に着くとさっそくオルティアが話しかけてきてくれた。

「御機嫌よう、オルティア」

私は微笑みを浮かべて挨拶した。
………何だかオルティア、また体付きが逞しくなったような………。

「オルティア、君………二の腕が、太くなった?」

どうやらアルフレッド様も同じことを考えていたらしい。ということは、気のせいじゃないよね?

「ああ、休みを有効活用しようと思ってね。ちょっと隣国に武者修行に行ってきたんだ」

む………武者修行………?
気にはなるけれど、知らないほうがいいような気がして私はそっとしておいた。

「学年末にジュリアが体調を崩したって聞いて、ずっと心配していたんだけれど、お見舞いにも行かずにすまなかったね。本当は行きたかったんだけれど、やっぱり公爵家を訪問するのは敷居が高くてね」

はは、と照れくさそうにオルティアが笑った。

「へぇ、オーリーにもそんなシャイな一面があったんだ?」
「ネイサンみたいなガサツな人間とは一緒にしないでもらいたいな」

からかうネイサンを、オルティアは余裕であしらう。相変わらずいいコンビだ。
性格は違うけれど、何というか、波長が一緒なんだと思う。
私はほっこりとした気持ちになった。

「ジルのお見舞いは私がすべて行っていたから、君は気にしなくていいよ」

やんわりと、アルフレッド様がオルティアと私の間に割って入る。

「友達なのですから、気にするのは当たり前ですよ」

オルティアも負けてはいない。
そもそも彼は、気が強い。だから、アルフレッド様の少しばかりの脅しには屈しないようだ。

「………友達、ね………」

アルフレッド様の唇が、釣りが上がった。
はぁ………また、争いが始まるのだろうかと思うと、せっかくの気分か沈んでいくのを感じた。
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