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学園一年生編

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「……ル!ジル!!」

誰かが私の名前を呼んでいる。
私はゆっくりと重たい瞼を持ち上げた。

「ジル!……良かった……!」

薄っすらと目を開くと、目の前に涙ぐんだアルフレッド様のご尊顔があった。

「……わたし……?」

ぼんやりとしていた頭の中が次第にはっきりしてくると、先程の出来事が脳裏に蘇ってきた。
私、アルフレッド様に抱き締められた事が衝撃過ぎて、貧血を起こして倒れたんだ……。

「気分は、悪くない?……どこか痛いところは?」

アルフレッド様が心配そうに覗き込んでくる。

「も、申し訳……ございません……」
「誤って欲しいわけじゃないんだ。ただ、ジルに何かあったら私は……」

少し照れた様にアルフレッド様が笑う。
……その顔は反則だ。素敵過ぎて直視出来ない。

「どこか具合が悪いわけではないんだね?それならいいけど……明日からの学園生活が心配だな」
そう言われて私はどきりとした。アルフレッド様に私の心の内を言い当てられたと思ったからだ。

「ジルは大人しい性格だし、人と接するのが苦手だろう?それに、見るからに深窓の令嬢といった感じでか弱そうだし。いくら貴族子女が通う学園だと言っても、あまり素行の良くない輩は一定数いると聞いているからね。……それでね、ジル。これは提案だけど、学園に通う時は、特別な事情で来れない日以外は私に送迎させてくれないかい?朝、公爵家まで迎えに来て、夕方もこちらまで送ろう。それなら安心だろう?」

私は驚いて目を見開く。
いやいやいや。安心とかそういう問題じゃない。我がウィステリア王国の王太子殿下直々の送迎で通学っておかしいでしょ。
ゲーム内ではジュリエットから逃げ回っていた筈なのに、何で私に絡んでくるの?

「あぁ、父上にも、カラミンサ公爵家にも承諾は戴いているから、心配いらないよ。私達は婚約者同士だから、人目を気にしなくてもいいしね」

……既に外堀は埋められていた。寧ろこれは提案ではなく、命令では?私の意思確認は必要ありませんよね?

「今日はね、それを伝えに来たのだけれど……ジルの可愛らしい寝顔を思う存分眺めることができて、役得だったよ」
「え……あ、あの……」

私は、顔が熱くなるのを感じた。

「明日から、学園の制服を着たジルを迎えに来るのが楽しみだよ。今日はしっかりと栄養を取って、早めに休むんだよ?また倒れたりしたら大変だからね?」
「は、はい……」
「では、また明日の朝にね」
「……はい。よろしく、お願い致します……」

私が返事をすると、アルフレッド様は満足そうに笑った。その笑顔の眩しさに、私は胸の鼓動が速くなるのを感じた。
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