4 / 61
学園一年生編
4
しおりを挟む
「……ル!ジル!!」
誰かが私の名前を呼んでいる。
私はゆっくりと重たい瞼を持ち上げた。
「ジル!……良かった……!」
薄っすらと目を開くと、目の前に涙ぐんだアルフレッド様のご尊顔があった。
「……わたし……?」
ぼんやりとしていた頭の中が次第にはっきりしてくると、先程の出来事が脳裏に蘇ってきた。
私、アルフレッド様に抱き締められた事が衝撃過ぎて、貧血を起こして倒れたんだ……。
「気分は、悪くない?……どこか痛いところは?」
アルフレッド様が心配そうに覗き込んでくる。
「も、申し訳……ございません……」
「誤って欲しいわけじゃないんだ。ただ、ジルに何かあったら私は……」
少し照れた様にアルフレッド様が笑う。
……その顔は反則だ。素敵過ぎて直視出来ない。
「どこか具合が悪いわけではないんだね?それならいいけど……明日からの学園生活が心配だな」
そう言われて私はどきりとした。アルフレッド様に私の心の内を言い当てられたと思ったからだ。
「ジルは大人しい性格だし、人と接するのが苦手だろう?それに、見るからに深窓の令嬢といった感じでか弱そうだし。いくら貴族子女が通う学園だと言っても、あまり素行の良くない輩は一定数いると聞いているからね。……それでね、ジル。これは提案だけど、学園に通う時は、特別な事情で来れない日以外は私に送迎させてくれないかい?朝、公爵家まで迎えに来て、夕方もこちらまで送ろう。それなら安心だろう?」
私は驚いて目を見開く。
いやいやいや。安心とかそういう問題じゃない。我がウィステリア王国の王太子殿下直々の送迎で通学っておかしいでしょ。
ゲーム内ではジュリエットから逃げ回っていた筈なのに、何で私に絡んでくるの?
「あぁ、父上にも、カラミンサ公爵家にも承諾は戴いているから、心配いらないよ。私達は婚約者同士だから、人目を気にしなくてもいいしね」
……既に外堀は埋められていた。寧ろこれは提案ではなく、命令では?私の意思確認は必要ありませんよね?
「今日はね、それを伝えに来たのだけれど……ジルの可愛らしい寝顔を思う存分眺めることができて、役得だったよ」
「え……あ、あの……」
私は、顔が熱くなるのを感じた。
「明日から、学園の制服を着たジルを迎えに来るのが楽しみだよ。今日はしっかりと栄養を取って、早めに休むんだよ?また倒れたりしたら大変だからね?」
「は、はい……」
「では、また明日の朝にね」
「……はい。よろしく、お願い致します……」
私が返事をすると、アルフレッド様は満足そうに笑った。その笑顔の眩しさに、私は胸の鼓動が速くなるのを感じた。
誰かが私の名前を呼んでいる。
私はゆっくりと重たい瞼を持ち上げた。
「ジル!……良かった……!」
薄っすらと目を開くと、目の前に涙ぐんだアルフレッド様のご尊顔があった。
「……わたし……?」
ぼんやりとしていた頭の中が次第にはっきりしてくると、先程の出来事が脳裏に蘇ってきた。
私、アルフレッド様に抱き締められた事が衝撃過ぎて、貧血を起こして倒れたんだ……。
「気分は、悪くない?……どこか痛いところは?」
アルフレッド様が心配そうに覗き込んでくる。
「も、申し訳……ございません……」
「誤って欲しいわけじゃないんだ。ただ、ジルに何かあったら私は……」
少し照れた様にアルフレッド様が笑う。
……その顔は反則だ。素敵過ぎて直視出来ない。
「どこか具合が悪いわけではないんだね?それならいいけど……明日からの学園生活が心配だな」
そう言われて私はどきりとした。アルフレッド様に私の心の内を言い当てられたと思ったからだ。
「ジルは大人しい性格だし、人と接するのが苦手だろう?それに、見るからに深窓の令嬢といった感じでか弱そうだし。いくら貴族子女が通う学園だと言っても、あまり素行の良くない輩は一定数いると聞いているからね。……それでね、ジル。これは提案だけど、学園に通う時は、特別な事情で来れない日以外は私に送迎させてくれないかい?朝、公爵家まで迎えに来て、夕方もこちらまで送ろう。それなら安心だろう?」
私は驚いて目を見開く。
いやいやいや。安心とかそういう問題じゃない。我がウィステリア王国の王太子殿下直々の送迎で通学っておかしいでしょ。
ゲーム内ではジュリエットから逃げ回っていた筈なのに、何で私に絡んでくるの?
「あぁ、父上にも、カラミンサ公爵家にも承諾は戴いているから、心配いらないよ。私達は婚約者同士だから、人目を気にしなくてもいいしね」
……既に外堀は埋められていた。寧ろこれは提案ではなく、命令では?私の意思確認は必要ありませんよね?
「今日はね、それを伝えに来たのだけれど……ジルの可愛らしい寝顔を思う存分眺めることができて、役得だったよ」
「え……あ、あの……」
私は、顔が熱くなるのを感じた。
「明日から、学園の制服を着たジルを迎えに来るのが楽しみだよ。今日はしっかりと栄養を取って、早めに休むんだよ?また倒れたりしたら大変だからね?」
「は、はい……」
「では、また明日の朝にね」
「……はい。よろしく、お願い致します……」
私が返事をすると、アルフレッド様は満足そうに笑った。その笑顔の眩しさに、私は胸の鼓動が速くなるのを感じた。
31
お気に入りに追加
541
あなたにおすすめの小説
悪役公爵令嬢のご事情
あいえい
恋愛
執事であるアヒムへの虐待を疑われ、平民出身の聖女ミアとヴォルフガング殿下、騎士のグレゴールに詰め寄られたヴァルトハウゼン公爵令嬢であるエレオノーラは、釈明の機会を得ようと、彼らを邸宅に呼び寄せる。そこで明された驚愕の事実に、令嬢の運命の歯車が回りだす。そして、明らかになる真実の愛とは。
他のサイトにも投稿しております。
名前の国籍が違う人物は、移民の家系だとお考え下さい。
本編4話+外伝数話の予定です。
転生先が羞恥心的な意味で地獄なんだけどっ!!
高福あさひ
恋愛
とある日、自分が乙女ゲームの世界に転生したことを知ってしまったユーフェミア。そこは前世でハマっていたとはいえ、実際に生きるのにはとんでもなく痛々しい設定がモリモリな世界で羞恥心的な意味で地獄だった!!そんな世界で羞恥心さえ我慢すればモブとして平穏無事に生活できると思っていたのだけれど…?※カクヨム様、ムーンライトノベルズ様でも公開しています。不定期更新です。タイトル回収はだいぶ後半になると思います。前半はただのシリアスです。
ヤンデレ王子とだけは結婚したくない
小倉みち
恋愛
公爵令嬢ハリエットは、5歳のある日、未来の婚約者だと紹介された少年を見てすべてを思い出し、気づいてしまった。
前世で好きだった乙女ゲームのキャラクター、しかも悪役令嬢ハリエットに転生してしまったことに。
そのゲームの隠し攻略対象である第一王子の婚約者として選ばれた彼女は、社交界の華と呼ばれる自分よりもぽっと出の庶民である主人公がちやほやされるのが気に食わず、徹底的に虐めるという凄まじい性格をした少女であるが。
彼女は、第一王子の歪んだ性格の形成者でもあった。
幼いころから高飛車で苛烈な性格だったハリエットは、大人しい少年であった第一王子に繰り返し虐めを行う。
そのせいで自分の殻に閉じこもってしまった彼は、自分を唯一愛してくれると信じてやまない主人公に対し、恐ろしいほどのヤンデレ属性を発揮する。
彼ルートに入れば、第一王子は自分を狂わせた女、悪役令嬢ハリエットを自らの手で始末するのだったが――。
それは嫌だ。
死にたくない。
ということで、ストーリーに反して彼に優しくし始めるハリエット。
王子とはうまいこと良い関係を結びつつ、将来のために結婚しない方向性で――。
そんなことを考えていた彼女は、第一王子のヤンデレ属性が自分の方を向き始めていることに、全く気づいていなかった。
【完結】転生したので悪役令嬢かと思ったらヒロインの妹でした
果実果音
恋愛
まあ、ラノベとかでよくある話、転生ですね。
そういう類のものは結構読んでたから嬉しいなーと思ったけど、
あれあれ??私ってもしかしても物語にあまり関係の無いというか、全くないモブでは??だって、一度もこんな子出てこなかったもの。
じゃあ、気楽にいきますか。
*『小説家になろう』様でも公開を始めましたが、修正してから公開しているため、こちらよりも遅いです。また、こちらでも、『小説家になろう』様の方で完結しましたら修正していこうと考えています。
ヒロインを虐めなくても死亡エンドしかない悪役令嬢に転生してしまった!
青星 みづ
恋愛
【第Ⅰ章完結】『イケメン達と乙女ゲームの様な甘くてせつない恋模様を描く。少しシリアスな悪役令嬢の物語』
なんで今、前世を思い出したかな?!ルクレツィアは顔を真っ青に染めた。目の前には前世の押しである超絶イケメンのクレイが憎悪の表情でこちらを睨んでいた。
それもそのはず、ルクレツィアは固い扇子を振りかざして目の前のクレイの頬を引っぱたこうとしていたのだから。でもそれはクレイの手によって阻まれていた。
そしてその瞬間に前世を思い出した。
この世界は前世で遊んでいた乙女ゲームの世界であり、自分が悪役令嬢だという事を。
や、やばい……。
何故なら既にゲームは開始されている。
そのゲームでは悪役令嬢である私はどのルートでも必ず死を迎えてしまう末路だった!
しかもそれはヒロインを虐めても虐めなくても全く関係ない死に方だし!
どうしよう、どうしよう……。
どうやったら生き延びる事ができる?!
何とか生き延びる為に頑張ります!
盲目のラスボス令嬢に転生しましたが幼馴染のヤンデレに溺愛されてるので幸せです
斎藤樹
恋愛
事故で盲目となってしまったローナだったが、その時の衝撃によって自分の前世を思い出した。
思い出してみてわかったのは、自分が転生してしまったここが乙女ゲームの世界だということ。
さらに転生した人物は、"ラスボス令嬢"と呼ばれた性悪な登場人物、ローナ・リーヴェ。
彼女に待ち受けるのは、嫉妬に狂った末に起こる"断罪劇"。
そんなの絶対に嫌!
というかそもそも私は、ローナが性悪になる原因の王太子との婚約破棄なんかどうだっていい!
私が好きなのは、幼馴染の彼なのだから。
ということで、どうやら既にローナの事を悪く思ってない幼馴染と甘酸っぱい青春を始めようと思ったのだけどーー
あ、あれ?なんでまだ王子様との婚約が破棄されてないの?
ゲームじゃ兄との関係って最悪じゃなかったっけ?
この年下男子が出てくるのだいぶ先じゃなかった?
なんかやけにこの人、私に構ってくるような……というか。
なんか……幼馴染、ヤンデる…………?
「カクヨム」様にて同名義で投稿しております。
婚約破棄したい悪役令嬢と呪われたヤンデレ王子
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「フレデリック殿下、私が十七歳になったときに殿下の運命の方が現れるので安心して下さい」と婚約者は嬉々として自分の婚約破棄を語る。
それを阻止すべくフレデリックは婚約者のレティシアに愛を囁き、退路を断っていく。
そしてレティシアが十七歳に、フレデリックは真実を語る。
※王子目線です。
※一途で健全?なヤンデレ
※ざまああり。
※なろう、カクヨムにも掲載
乙女ゲーのモブデブ令嬢に転生したので平和に過ごしたい
ゆの
恋愛
私は日比谷夏那、18歳。特に優れた所もなく平々凡々で、波風立てずに過ごしたかった私は、特に興味のない乙女ゲームを友人に強引に薦められるがままにプレイした。
だが、その乙女ゲームの各ルートをクリアした翌日に事故にあって亡くなってしまった。
気がつくと、乙女ゲームに1度だけ登場したモブデブ令嬢に転生していた!!特にゲームの影響がない人に転生したことに安堵した私は、ヒロインや攻略対象に関わらず平和に過ごしたいと思います。
だけど、肉やお菓子より断然大好きなフルーツばっかりを食べていたらいつの間にか痩せて、絶世の美女に…?!
平和に過ごしたい令嬢とそれを放って置かない攻略対象達の平和だったり平和じゃなかったりする日々が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる