136 / 166
135.半獣化
しおりを挟む
炎と、氷の魔力がぶつかり合う音、そして刃がぶつかり合う、硬質な音と、地吹雪の風の音がこだましあい、暗い空へと舞い上がる。
「くっ………流石に化け物は手応えが違うな………」
「そういうお前も、魔獣を取り込んだのだろう?………化け物と変わらないではないか」
ラーシュの息が、あがっているように見える。一方のアデルバート様は、いつの間にか頬に一筋の切り傷を負っていた。
「ふん。ならば、その魔獣の力………その身で味わってみるか?」
「………何だと?」
ラーシュの表情が、変わった。
危険を感じたのか、アデルバート様は瞬時にラーシュから飛び退き、距離をとる。
ラーシュは、持っていた剣を大地につき刺す。と同時に、ラーシュの体が、氷に覆われ始めた。
「あれは………半獣化………?」
アルヴァが呟いた言葉にはっとする。
半獣化。それは、禁忌の術だ。魔獣を闇魔法で体内に取込み、自身の生命力を糧として、肉体と魔力を劇的に強化するというもの。
そもそも、魔獣を体内に取り込む事自体が禁忌とされているけれど、それを行うには強い魔力と精神力が必要で、実質出来る者はいないと言われていたけれど、実際ラーシュはそれをやってのけたのだ。………アデルバート様を殺すために。
でも、アデルバート様も自身がそれをした訳ではないけれど、祖先であるアルノルト王子が炎の竜を取り込み、その魂を体内に封じ続けている。
………そう。二人は相反する力を持ちながら、最も親しい者同士なのだ。
ギシギシと骨が軋む音が、不気味に響く。
いつも冷静なアデルバート様も、その様子を呆然と見つめていた。
ラーシュの白髪は氷狼のたてがみのように逆立ち、体は元の倍近い大きさへと変貌した。
狼男が存在するならば、きっとこのような容姿なのだろうというようなラーシュの変わり様に、唖然とするしかない。
「これで俺は充分に力を発揮できる」
ラーシュは、嬉しそうに嗤った。
「………愚か者めが………」
アデルバート様が、苦々しい顔をしてそう呻くのが聞こえた。
「愚かなのはどちらなのか、すぐにわかるさ」
次の瞬間、アデルバート様の体が、一瞬にして吹き飛んだ。
「!」
ラーシュが、アデルバート様を殴り飛ばしたのだ。
「アデルバート様!!」
喉が壊れてしまいそうな程の声で、私は叫んだ。
「くっ………流石に化け物は手応えが違うな………」
「そういうお前も、魔獣を取り込んだのだろう?………化け物と変わらないではないか」
ラーシュの息が、あがっているように見える。一方のアデルバート様は、いつの間にか頬に一筋の切り傷を負っていた。
「ふん。ならば、その魔獣の力………その身で味わってみるか?」
「………何だと?」
ラーシュの表情が、変わった。
危険を感じたのか、アデルバート様は瞬時にラーシュから飛び退き、距離をとる。
ラーシュは、持っていた剣を大地につき刺す。と同時に、ラーシュの体が、氷に覆われ始めた。
「あれは………半獣化………?」
アルヴァが呟いた言葉にはっとする。
半獣化。それは、禁忌の術だ。魔獣を闇魔法で体内に取込み、自身の生命力を糧として、肉体と魔力を劇的に強化するというもの。
そもそも、魔獣を体内に取り込む事自体が禁忌とされているけれど、それを行うには強い魔力と精神力が必要で、実質出来る者はいないと言われていたけれど、実際ラーシュはそれをやってのけたのだ。………アデルバート様を殺すために。
でも、アデルバート様も自身がそれをした訳ではないけれど、祖先であるアルノルト王子が炎の竜を取り込み、その魂を体内に封じ続けている。
………そう。二人は相反する力を持ちながら、最も親しい者同士なのだ。
ギシギシと骨が軋む音が、不気味に響く。
いつも冷静なアデルバート様も、その様子を呆然と見つめていた。
ラーシュの白髪は氷狼のたてがみのように逆立ち、体は元の倍近い大きさへと変貌した。
狼男が存在するならば、きっとこのような容姿なのだろうというようなラーシュの変わり様に、唖然とするしかない。
「これで俺は充分に力を発揮できる」
ラーシュは、嬉しそうに嗤った。
「………愚か者めが………」
アデルバート様が、苦々しい顔をしてそう呻くのが聞こえた。
「愚かなのはどちらなのか、すぐにわかるさ」
次の瞬間、アデルバート様の体が、一瞬にして吹き飛んだ。
「!」
ラーシュが、アデルバート様を殴り飛ばしたのだ。
「アデルバート様!!」
喉が壊れてしまいそうな程の声で、私は叫んだ。
1
お気に入りに追加
1,230
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました
扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!?
*こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。
――
ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。
そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。
その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。
結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。
が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。
彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。
しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。
どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。
そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。
――もしかして、これは嫌がらせ?
メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。
「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」
どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……?
*WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。
【R18】出来損ないの魔女なので殿下の溺愛はお断りしたいのですが!? 気づいたら女子力高めな俺様王子の寵姫の座に収まっていました
深石千尋
恋愛
バーベナはエアネルス王国の三大公爵グロー家の娘にもかかわらず、生まれながらに魔女としての資質が低く、家族や使用人たちから『出来損ない』と呼ばれ虐げられる毎日を送っていた。
そんな中成人を迎えたある日、王族に匹敵するほどの魔力が覚醒してしまう。
今さらみんなから認められたいと思わないバーベナは、自由な外国暮らしを夢見て能力を隠すことを決意する。
ところが、ひょんなことから立太子を間近に控えたディアルムド王子にその力がバレて――
「手短に言いましょう。俺の妃になってください」
なんと求婚される事態に発展!! 断っても断ってもディアルムドのアタックは止まらない。
おまけに偉そうな王子様の、なぜか女子力高めなアプローチにバーベナのドキドキも止まらない!?
やむにやまれぬ事情から条件つきで求婚を受け入れるバーベナだが、結婚は形だけにとどまらず――!?
ただの契約妃のつもりでいた、自分に自信のないチートな女の子 × ハナから別れるつもりなんてない、女子力高めな俺様王子
────────────────────
○Rシーンには※マークあり
○他サイトでも公開中
────────────────────
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
本日をもって、魔術師団長の射精係を退職するになりました。ここでの経験や学んだことを大切にしながら、今後も頑張っていきたいと考えております。
シェルビビ
恋愛
膨大な魔力の引き換えに、自慰をしてはいけない制約がある宮廷魔術師。他人の手で射精をして貰わないといけないが、彼らの精液を受け入れられる人間は限られていた。
平民であるユニスは、偶然の出来事で射精師として才能が目覚めてしまう。ある日、襲われそうになった同僚を助けるために、制限魔法を解除して右手を酷使した結果、気絶してしまい前世を思い出してしまう。ユニスが触れた性器は、尋常じゃない快楽とおびただしい量の射精をする事が出来る。
前世の記憶を思い出した事で、冷静さを取り戻し、射精させる事が出来なくなった。徐々に射精に対する情熱を失っていくユニス。
突然仕事を辞める事を責める魔術師団長のイースは、普通の恋愛をしたいと話すユニスを説得するために行動をする。
「ユニス、本気で射精師辞めるのか? 心の髄まで射精が好きだっただろう。俺を射精させるまで辞めさせない」
射精させる情熱を思い出し愛を知った時、ユニスが選ぶ運命は――。
慰み者の姫は新皇帝に溺愛される
苺野 あん
恋愛
小国の王女フォセットは、貢物として帝国の皇帝に差し出された。
皇帝は齢六十の老人で、十八歳になったばかりのフォセットは慰み者として弄ばれるはずだった。
ところが呼ばれた寝室にいたのは若き新皇帝で、フォセットは花嫁として迎えられることになる。
早速、二人の初夜が始まった。
国王陛下は悪役令嬢の子宮で溺れる
一ノ瀬 彩音
恋愛
「俺様」なイケメン国王陛下。彼は自分の婚約者である悪役令嬢・エリザベッタを愛していた。
そんな時、謎の男から『エリザベッタを妊娠させる薬』を受け取る。
それを使って彼女を孕ませる事に成功したのだが──まさかの展開!?
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる