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135.半獣化

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炎と、氷の魔力がぶつかり合う音、そして刃がぶつかり合う、硬質な音と、地吹雪の風の音がこだましあい、暗い空へと舞い上がる。

「くっ………流石に化け物は手応えが違うな………」
「そういうお前も、魔獣を取り込んだのだろう?………化け物と変わらないではないか」

ラーシュの息が、あがっているように見える。一方のアデルバート様は、いつの間にか頬に一筋の切り傷を負っていた。

「ふん。ならば、その魔獣の力………その身で味わってみるか?」
「………何だと?」

ラーシュの表情が、変わった。
危険を感じたのか、アデルバート様は瞬時にラーシュから飛び退き、距離をとる。
ラーシュは、持っていた剣を大地につき刺す。と同時に、ラーシュの体が、氷に覆われ始めた。

「あれは………半獣化………?」

アルヴァが呟いた言葉にはっとする。
半獣化。それは、禁忌の術だ。魔獣を闇魔法で体内に取込み、自身の生命力を糧として、肉体と魔力を劇的に強化するというもの。
そもそも、魔獣を体内に取り込む事自体が禁忌とされているけれど、それを行うには強い魔力と精神力が必要で、実質出来る者はいないと言われていたけれど、実際ラーシュはそれをやってのけたのだ。………アデルバート様を殺すために。
でも、アデルバート様も自身がそれをした訳ではないけれど、祖先であるアルノルト王子が炎の竜を取り込み、その魂を体内に封じ続けている。
………そう。二人は相反する力を持ちながら、最も親しい者同士なのだ。
ギシギシと骨が軋む音が、不気味に響く。
いつも冷静なアデルバート様も、その様子を呆然と見つめていた。
ラーシュの白髪は氷狼のたてがみのように逆立ち、体は元の倍近い大きさへと変貌した。
狼男が存在するならば、きっとこのような容姿なのだろうというようなラーシュの変わり様に、唖然とするしかない。

「これで俺は充分に力を発揮できる」

ラーシュは、嬉しそうに嗤った。

「………愚か者めが………」

アデルバート様が、苦々しい顔をしてそう呻くのが聞こえた。

「愚かなのはどちらなのか、すぐにわかるさ」

次の瞬間、アデルバート様の体が、一瞬にして吹き飛んだ。

「!」

ラーシュが、アデルバート様を殴り飛ばしたのだ。

「アデルバート様!!」

喉が壊れてしまいそうな程の声で、私は叫んだ。
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