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131.対峙

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「………アデルバート。その女を殺されたくなければ、かかってこいよ」

こちらを向いたラーシュの目は、血走って見えた。

「シャトレーヌには、指一本触れさせはしない」

私を抱き締めるアデルバート様の手に、力がこもった。

「アデルバート様………」

………このまま二人が剣を交えたら、おそらくはどちらかが命を落とすまで戦うことになるのだろう。………そんな予感がした。
私はありったけの魔力を込めて、加護魔法をアデルバート様に授ける。

「………私がお止めしても、無駄なのですよね?」

漆黒の鎧に、手を添えるとアデルバート様は困った顔をされた。

「………すまぬ、シャトレーヌ。今度こそ、私はラーシュと決着をつけなければならない。だが………私は奪うために戦うのではなく、守るために戦うのだ。………お前のことも、民ものことも、………公爵領のことも………私は必ずこの手で守って見せる。だから、お前が案ずることはない」

その言葉は、アデルバート様の強い決意のように、私には聞こえた。
………大丈夫。アデルバート様は、きっと無事に私の元へと帰ってらっしゃる。………不安な気持ちを落ち着かせるように、私は自分にそう、言い聞かせた。

「………ドミニク。今度こそしっかりとシャトレーヌを守れよ」
「はい。………命に替えても」

アデルバート様の腕が、私から離れていく。
それから、アデルバート様はラーシュに向かって言い放った。

「ラーシュ、アルヴァの身柄をこちらへ」
「………好きにしろ。お前と本気でぶつかり合うのに、は邪魔だしな」

意外にも、ラーシュは素直にアデルバート様の言葉に従った。
アデルバート様はアルヴァに近付き、傷の具合を確かめてから抱え上げ、私達の元へとアルヴァを連れてきた。

「………命に別状はなさそうだ。シャトレーヌ、治癒魔法で回復させてやれ」
「………はい」

私達の前にアルヴァを横たえると、アデルバート様はゆっくりと立ち上がり、ラーシュの元へと近付いていく。
一歩、また一歩と歩みを進めるアデルバート様から紅い光がじわりと滲み出ているように見えた。

空を、再び鼠色の雲が覆い始め、アデルバート様は立ち止まる。
二人が、真正面から向き合うと、場の空気が変わった。
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