上 下
121 / 166

121.騒ぎ

しおりを挟む
「………何かあったようですね。少し、様子を見てまいります。くれぐれも、動かないでくださいね」

アルヴァが私にそう告げると、椅子から立ち上がり、外へと出ていった。
………何かしら。
私は、壁に取り付けられた小さな窓から外の様子を伺おうとするけれど、窓枠に雪が降り積もっていて視界が遮られてしまい、よく見えない。
その上、その窓には何かの魔法がかけられていて、手で触れると強い力で跳ね返される。

「………そうよね。私は今捕虜ですものね」

アルヴァと話をしていてすっかり忘れてしまっていたけれど、ここは私を閉じ込めておくために用意された場所なのだから、当然私の力ではここから出られないようにされているのだと、今になって初めて思い知った。
仕方なく、扉の近くで耳を澄ましながら外の様子を伺っていると、突然、扉が開いた。

「きゃあっ!」
「驚かせてすみません、私です」

顔を出したのは、アルヴァだった。………当然といえば当然なのだけれど、心の中ではもしかしたらアデルバート様が………と期待していたのか、思いの外落胆の気持ちが強かった。

「………行きたくないとは思いますが、ラーシュが貴女を、連れてこいと………」
「!」

私は途端に身が強張るのを感じた。
あの男は、また私を襲おうとするのだろうか。
正直行きたくない。………でも、捕虜である私に、選択権などないだろう。

「………大丈夫です。今度は屋外ですから、先程のような目に遭う心配はありませんよ」

私の不安そうな様子を見せていたのを汲み取ってか、付け加えたようにそう言ってきた。

「………どういうこと?」

私は眉を顰めた。
すると、アルヴァは困ったように目を泳がせると、静かに告げた。

「………実はたった今、黒焔公爵が乗り込んできたのです」
「………何ですって?!アデルバート様が?!」

私は驚きのあまりアルヴァに掴みかかってしまう。

「貴女の護衛だった………ドミニク、でしたっけ?彼も同行しています」

………ドミニクまで?でも、なぜ私の居場所が分かったのかしら。
私は不思議に思いながらも、ゆっくりとアルヴァについてラーシュの元へと向かうことに決めたのだった。

「………わかったわ。案内してちょうだい」

私はまっすぐにアルヴァを見つめると、そう宣言したのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小国の王太子。~優秀だが口煩いからと婚約破棄された超大国の大貴族チート令嬢を妻に迎え、彼女の力を借りて乱世での生存を目指します。

モモ
ファンタジー
小国リューベック王国の王太子アルベルトの元に口煩いからと婚約破棄された隣国にある大国ロアーヌ帝国のピルイン公令嬢アリシアとの縁談話が入る。拒めず、婚姻と言う事になったのであるが、会ってみると彼女はとても聡明であり、絶世の美女でもあった。アルベルトは彼女の力を借りつつ改革を行い、徐々にリューベックは力をつけていく。一方アリシアも女のくせにと言わず自分の提案を拒絶しないアルベルトに少しずつひかれていく。徐々にリューベック王国が力をつけていく中、後にフェリオル戦争と呼ばれる大戦が勃発し、リューベックもそれに巻き込まれていく事になる。リューベック王国は生き残る事が出来るであろうか

モブだった私、今日からヒロインです!

まぁ
恋愛
かもなく不可もない人生を歩んで二十八年。周りが次々と結婚していく中、彼氏いない歴が長い陽菜は焦って……はいなかった。 このまま人生静かに流れるならそれでもいいかな。 そう思っていた時、突然目の前に金髪碧眼のイケメン外国人アレンが…… アレンは陽菜を気に入り迫る。 だがイケメンなだけのアレンには金持ち、有名会社CEOなど、とんでもないセレブ様。まるで少女漫画のような付属品がいっぱいのアレン…… モブ人生街道まっしぐらな自分がどうして? ※モブ止まりの私がヒロインになる?の完全R指定付きの姉妹ものですが、単品で全然お召し上がりになれます。 ※印はR部分になります。

拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな
恋愛
 子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。 公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。  クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。  クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。 「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」 「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」 「ファンティーヌが」 「ファンティーヌが」  だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。 「私のことはお気になさらず」

【R18】両想いでいつもいちゃいちゃしてる幼馴染の勇者と魔王が性魔法の自習をする話

みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。 「両想いでいつもいちゃいちゃしてる幼馴染の勇者と魔王が初めてのエッチをする話」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/575414884/episode/3378453 の続きです。 ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで

畑にスライムが湧くんだが、どうやら異世界とつながっているみたいです

tera
ファンタジー
■書籍化しました。10月刊行してます。 ■それに伴いあらすじ差し替えです。 ■全2巻発売中! ■完結積み作品ですか要望によってはこぼれ話をWEBにて更新します。 異世界×現代のんびり農業ファンタジー、開幕!! 会社を辞めて東京奥多摩へ帰ってきた俺、向ケ丘ユヅル。祖父母の残した家と畑を管理することになり、畑の様子を見に行くと……ちょ、スライムが湧いている!? それも、一匹や二匹ってレベルじゃねーぞ! なんとか駆逐したものの、来る日も来る日も畑に異世界からの魔物や女騎士が湧いてくるんだが――東京奥多摩の秘境を舞台に、異世界の同居人と現代人が繰り広げる、ドタバタ農業ファンタジーが今、始まる! ===== ※一話二千文字程度でゆるっと続けていきたいと思います。 ※ぜひ感想などありましたらお願いします。 ※2017.04.08 HOTランキング一位とれました! ※2017.04.09 ファンタジー小説ランキング一位です、ありがとうございます! ※そして月曜日から一日一更新になります。お読みいただいてありがとうございます!

【完結】男装の麗人が私の婚約者を欲しがっているご様子ですが…

恋愛
伯爵令嬢のグラシャは同じ女学校のシルビアと婚約者で侯爵家のアシュレイが両想いであるという噂を耳にする。シルビアは彼の幼馴染、しかもその長身と整った顔立ちから『男装の麗人』として人気を集めている。 お互いが想い合っているなら潔く身を引こう、心に決めたグラシャはアシュレイを呼び出し別れを告げようとするが…… 「俺が君を手放すと、そう思っているのか?」 勘違いした令嬢と不器用な婚約者がある噂をきっかけに急接近?!ざまぁ要素あり、基本溺愛系です。 ※ノベルバでも投稿しております。

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

【R18】翡翠の鎖

環名
ファンタジー
ここは異階。六皇家の一角――翠一族、その本流であるウィリデコルヌ家のリーファは、【翠の疫病神】という異名を持つようになった。嫁した相手が不幸に見舞われ続け、ついには命を落としたからだ。だが、その葬儀の夜、喧嘩別れしたと思っていた翠一族当主・ヴェルドライトがリーファを迎えに来た。「貴女は【幸運の運び手】だよ」と言って――…。 ※R18描写あり→*

処理中です...