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114.紅い光(アデルバート視点)
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少しずつ、吹雪が収まってくる。
やはり、あの雪はラーシュの力だったか………。
「黒焔公爵様………差し出がましいようですが、ドミニクを責めないでやってください。奥方様は、ドミニクや我々を庇おうとして………」
私が押し黙っているのはドミニクに対する怒りのためだと判断したらしい騎士が、恐る恐る私に話しかけてきた。
そうか………騎士達を庇おうとしたのか。実にシャトレーヌらしいが、無鉄砲というか、後先考えないのも本当にに困ったものだ………。
そんな事を今更考えても仕方がない。
「それに、奥方様を守れなかったのは私達も同じことです。ドミニクを責めないでやってください」
「分かっている」
「申し訳ありません」
騎士たちは心底済まなそうに項垂れた。
違う。私がしなければいけないのは、騎士達の謝罪を受けることではなく、一刻も早くシャトレーヌを救い出すことだ。
だが、どうすればラーシュを見つけられるのだろう。
ただ闇雲に探せばいいわけではないし、かと言って心当たりがあるわけでもない。
「どうすれば………シャトレーヌを見つけられる………?」
私は拳を握りしめた、その時だった。
パシン、と私の胸の辺りで小さな火花が弾けた。
「………何だ?」
その火花は私の前でくるくると回ると、少しずつ大きな光となり、まるで火炎魔法を纏うように紅くなっていく。
「黒焔公爵様、それは………火炎魔法ですか?」
ドミニクが、不思議そうに尋ねてきた。
「いや、これは私の魔法ではない」
紅い光の玉は、くるりと回り、ふわふわと漂っていく。
そして、強い光を帯びたかと思うと、そこから何かを指し示すかのように、一直線に光を放った。
「これは………?」
一体、何なのだろう。
私は不思議に思い、その光に触れる。
すると、光はすうっと私の体内へと吸い込まれていった。
「炎の竜………?」
私が呟くと、ざわりと炎の竜が動いた。
そして、私の胸から、一直線の紅い光が伸びていく。
「まさか、シャトレーヌの居場所を教えてくれているのか?」
私の問いかけに答えるように、再び炎の竜が、ざわめく。
その感覚に、私は半信半疑のまま顔を上げた。
「シャトレーヌを、探しに行ってくる」
「………お供させてください」
ドミニクが、腹を括った表情でそう告げてきたのを見て、私は静かに頷いたのだった。
やはり、あの雪はラーシュの力だったか………。
「黒焔公爵様………差し出がましいようですが、ドミニクを責めないでやってください。奥方様は、ドミニクや我々を庇おうとして………」
私が押し黙っているのはドミニクに対する怒りのためだと判断したらしい騎士が、恐る恐る私に話しかけてきた。
そうか………騎士達を庇おうとしたのか。実にシャトレーヌらしいが、無鉄砲というか、後先考えないのも本当にに困ったものだ………。
そんな事を今更考えても仕方がない。
「それに、奥方様を守れなかったのは私達も同じことです。ドミニクを責めないでやってください」
「分かっている」
「申し訳ありません」
騎士たちは心底済まなそうに項垂れた。
違う。私がしなければいけないのは、騎士達の謝罪を受けることではなく、一刻も早くシャトレーヌを救い出すことだ。
だが、どうすればラーシュを見つけられるのだろう。
ただ闇雲に探せばいいわけではないし、かと言って心当たりがあるわけでもない。
「どうすれば………シャトレーヌを見つけられる………?」
私は拳を握りしめた、その時だった。
パシン、と私の胸の辺りで小さな火花が弾けた。
「………何だ?」
その火花は私の前でくるくると回ると、少しずつ大きな光となり、まるで火炎魔法を纏うように紅くなっていく。
「黒焔公爵様、それは………火炎魔法ですか?」
ドミニクが、不思議そうに尋ねてきた。
「いや、これは私の魔法ではない」
紅い光の玉は、くるりと回り、ふわふわと漂っていく。
そして、強い光を帯びたかと思うと、そこから何かを指し示すかのように、一直線に光を放った。
「これは………?」
一体、何なのだろう。
私は不思議に思い、その光に触れる。
すると、光はすうっと私の体内へと吸い込まれていった。
「炎の竜………?」
私が呟くと、ざわりと炎の竜が動いた。
そして、私の胸から、一直線の紅い光が伸びていく。
「まさか、シャトレーヌの居場所を教えてくれているのか?」
私の問いかけに答えるように、再び炎の竜が、ざわめく。
その感覚に、私は半信半疑のまま顔を上げた。
「シャトレーヌを、探しに行ってくる」
「………お供させてください」
ドミニクが、腹を括った表情でそう告げてきたのを見て、私は静かに頷いたのだった。
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