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111.氷狼討伐(アデルバート視点)

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シャトレーヌをドミニクに預けると、私は魔法騎士達を連れて、シャトレーヌの指し示した場所へと向かう。
ああ見えて、ドミニクは腕が立ち、誠実な男だ。私が最も信頼している騎士の一人だろう。あの者なら、シャトレーヌを必ず守ってくれると、シャトレーヌ専用の護衛騎士を命じた。
その期待通り、ドミニクはシャトレーヌの護衛という役目をしっかり果たしてくれた。
お陰でシャトレーヌが怪我を負ったのは、マリアンヌの一件のみで済んでいる。

少し進んだところに、大きな氷狼が一頭、こちらに向かい唸り声をあげていた。
まるで、予め私達がこちらに来るのがわかっていたかのように。
だが、そんなはずはない。
氷狼は確かに他の魔獣よりも知能は高く、魔法にも敏感に反応するが、待ち伏せができるほどでは無い。

火炎陣プラーミア・コマンダ!」

私は氷狼に向かって、魔法を詠唱する。

「グガァッ!」

氷狼がくり出した氷魔法と私の魔法がぶつかりあい、爆発が起こる。
木々が揺れ、枝に積もった雪が落ちてくる。
その振動で、森の中に隠れていた氷狼が数頭出てきた。
どの氷狼もかなり大型だ。雄の成獣の群れだろうか。
いつもの討伐のように、村を守りながらではないため、すぐに倒せるだろうが、魔力は消耗するな………。
魔法騎士達は優秀だが、彼らの魔力は無限ではない。
勿論私とて魔力は無限ではないが、炎の竜の力があるため、一日中全力で魔力を使っても底をつかない程度は保持している。
私は、ある程度氷狼が弱るよう、大規模な火炎魔法を何度か繰り出す。

「追い込んで、火炎魔法を纏わせた剣で急所をつけ!」

私は炎を操りながら、騎士たちに指示を出す。
火力と温度を調整しないと、森の木々が燃えてしまう。
引火しないギリギリの温度で、氷狼の硬い体毛を焼き溶かしていくと、そこをすかさず騎士達が切り込んでいく。
だが、やはりこの氷狼の群れは不可解な事が多い。
はっきり言って、手応えがなさすぎるのだ。
これほどまでに大きな氷狼ならば、力も魔力もこんなものではないはずだ。
………何かが、おかしい………。
あの時に感じた違和感は、やはり気の所為ではなかったのだ。
言いしれない胸騒ぎを感じ、私は上級火炎魔法を繰り出す。

業火オゥゴン

血よりも紅い、地獄の業火は火球となり、氷狼達を一気に飲み込んだ。
大きな爆発が再び起こり、辺りは雪煙と水蒸気で白く覆われたのだった。
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