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61.スネーストルムの行方

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「村は……リーテの村は……?」

アルヴァが、縋るような表情で私達を見てきた。
あの村の、唯一の生き残り。
アルヴァは多分、村が迎えた結末を知っていて尋ねているのだろう。
でもそれが分かっていても、私には彼の問いかけに答える勇気はなかった。

「……リーテの村の中をくまなく探したが、生存者はお前一人だ。………お前の村を、守ってやれず………すまない」

誰もが口を噤む中、ただ一人、アデルバート様が苦しげな表情でそう告げた。

「………そう、ですか」

俯くアルヴァに、掛ける言葉が見つからない。
もしかしたらあのまま他の人達と共に逝かせてあげたほうが親切だったのではないかという、人を助ける聖女としてあるまじき考えすら浮かんでくるような、そんな痛ましい姿だった。

「・・・お前を見つけたのはシャトレーヌだが、その時お前は両足を氷塊で潰されていた。アルヴァ、お前を傷つけたのは、アイスブルーの瞳に白髪の、背の高い若い男ではなかったか?」

通常、公爵が直々に平民と、こんな風に言葉を交わすなんてあり得ない事だけれど、アデルバート様は気にする風もない。騎士にも平民出身者は多いようだし、この公爵領は、貴族と平民の距離が近いのかもしれない。
……そんな事を考えていると、アルヴァが俯いたまま、震える声でアデルバート様に答える。

「……はい、そのとおりです。俺はあの日、村の外に出掛けていて……戻ったのは今朝です。そうしたら村中が氷に覆われていて、慌てて生き残っている人を探そうとしたら、まだ村の中にスネーストルムの残党が残っていて……。俺を襲ったのがその白髪の男です。はっきりと、『スネーストルム』だと名乗っていました」

私は、何だか違和感を覚えた。
通常略奪をするために村を襲うのなら、目ぼしい物がないと分かった時点で去っていく。何日も同じ村の中に留まるなんて聞いたことがない。可能性とすると、何かを探していたか、もしくは別の目的があって村を襲ったか……。

「間違いなく、ラーシュの仕業だろう。彼奴等は、どこへ向かうとか、言っていなかったか」

まるで尋問のように、アデルバート様が、アルヴァを問い詰めた。

「……ええと……痛みで意識が薄れていたので定かではないですか、確かティストの町へ向かうと言っていたような……」
「ティストの町だと?」

それを聞いたアデルバート様が、ぴくりと眉を跳ね上げ、直ちに騎士たちに目配せした。
まさか、追いかけるおつもりかしら?
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