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46.同行許可

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アデルバート様は無言で眉間に皺を寄せている。
……物凄く機嫌が悪そうだ。
それでも私は怯まずに、畳み掛けるように言った。

「そもそも私が貴方の許に嫁ぐことになったのは、『聖女ならば妻を娶ってもいい』とアデルバート様自身が陛下に伝えたからです。アデルバート様が聖女を妻に望んだのは、こうした討伐の為ではないのですか?」

この極北の公爵領まで聖女が派遣されたことは、私が知る限りはなかった。
これほどに危険が多い場所なのに、聖女が派遣されないのは、王都から遠いこともあるけれど、おそらくは、何らかの理由があって、アデルバート様自身が依頼をしなかったからだと思う。
何故、依頼をしなかったのか、そして何故聖女を妻に望んだのかは分からない。
それでも私は役立たずとはいえ、国から認定された、れっきとした聖女だ。少なくとも怪我人を治療する事は出来る。
私は、私にできる範囲だけでも、助けになりたかった。

「しかしお前を危険な目に遭わせる訳にはいかぬ」

アデルバート様は、中々首を縦に振らなかった。
私は諦めずに食い下がった。

「……先程も申し上げましたが、私は聖女です。王都にいた頃も討伐に同行した事はありますし、守って貰う必要はありません。決して足手まといにはなりませんから、私をお連れください」

私がそう言うと、アデルバート様の眉間の皺が更に深くなった。
そもそもアデルバート様は、何故私を危険から遠ざけようとするのかしら。
陛下に、申し訳が立たないから?それとも、子を成す為に必要だから?
モヤモヤとした気持ちが、私の中で渦巻いていた。

「黒焔公爵様、奥方様は俺がきっちりとお守りしますから、同行させてもいいんじゃないですか?」

突然、私の後ろに控えていたドミニクが、そんな事を言い出した。

「……」

ドミニクの言葉にも、アデルバート様は僅かに眉を動かしただけで、厳しい表情は変わらない。

「奥方様が同行してくだされば、騎士だって安心して戦えるのは事実でしょう?それに、黒焔公爵様が留守の間に、別の異民族がイースボルを襲う可能性だって否定できないし、城にいたっていつ暗殺者が奥方様を狙うか分からない。それであれば、どこにいたって危険なのは変わらないと思いますけど」

……ドミニク、爽やかな顔で意外に怖いことを言うのね……。
でも、ドミニクは私の意を汲み取って援護してくれたのだ。
それを聞いたアデルバート様は目を閉じて、溜息をついた。

「……好きにしろ」

アデルバート様はそれだけ言うと、マントを翻してその場から立ち去っていったのだった。
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