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45.襲撃の知らせ

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それから一ヶ月程経ったある日の事。
北方の街からの早馬が城に駆け込んできた。

「氷河山脈を越えて、異民族が攻め込んで来ました!」

その言葉に、城内に緊張が走った。

「旗印は、スネーストルム!率いているのは恐らく、首領のラーシュと思われます!」
「……来たか」

アデルバート様が苦々しい顔をした。
スネーストルムは聞いたことがある。彼らは領土を持たないいわゆる流浪の民。雪や氷の魔法に長けた狩猟民族で、度々我が国に侵略を行ってくる部族の中で最も厄介な相手と言われていた。

「被害の状況は?」

アデルバート様は冷静に状況を分析しようとしている。

「村が二つ、襲われました。エダムの村は壊滅、民も皆殺し。今回はリーテの村より、救援要請です」

私は、ショックで言葉が出なかった。……これが、極北の地の現実……。

「最短で出立するとなると、明後日の早朝。各自、準備を進めよ」

氷狼の討伐が終わったと思ったら、今度はスネーストルムの侵略行為。
アデルバート様は、本当に気が休まる暇などないだろう。
いくら最恐将軍とは言え、アデルバート様だって生身の人間だ。
疲れが出れば、脆い部分だって出てしまう。
もし、アデルバート様の身に何かあったら……。私は言いしれない不安に、胸がいっぱいになった。
アミュレットや加護魔法は当然として……他に何か私でも力になれる事があれば……。

「スネーストルムは、強力な攻撃魔法を使う。治療薬を多めに用意しておけ」

偶然、アデルバート様がそう指示を出しているのが耳に入ってきた。
治療なら、私にも出来る。治癒魔法は最も得意とする魔法だ。
それに気がついた私は、慌ててアデルバート様に駆け寄った。

「アデルバート様、お願いがございます」
「お前が願い事をするなど珍しいな。一体、何だ」
「……私を、一緒にお連れください」

私はアデルバート様の深紅の双眸を、真っ直ぐに見据えた。

「駄目だ。危険すぎる」

アデルバート様は即座にそう言った。

「何故です?」
「我々は、戦いに行くのだ。女を伴ってなど、行けぬ」
「……アデルバート様。確かに私は女です。でも、男性に守ってもらうだけの存在ではありません。お忘れかもしれませんが私はアデルバート様の妻である前に、聖女です。共に戦う事が出来ます」

私は、堂々とそう宣言した。

「……しかし」
「聖女は、騎士と共に戦に出かけるのは日常茶飯事でしょう?私がアデルバート様の妻だからと、それを理由に出来るとは思えません」

そう言い放って、アデルバート様の出方を伺うのだった。
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