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25.モーリス侯爵令嬢の来訪
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私が目覚めると、既にアデルバート様の姿は消えていた。
それでも、房事の為とはいえ、寝食を共にしていただけるだけでも十分だと思わなければ。関係の冷え切った夫婦は、屋敷で顔を合わせることすらしないと聞くもの。
私は溜息を付きながら寝台から降りようとして、へたり込んでしまった。
腰が、立たない。まさか、昨夜の行為で………?
何とか立ち上がろうとすると、足の間からアデルバート様の名残が溢れ出てきた。
「や………!」
想定外の事態に、私は羞恥で顔を赤く染めた。
こんなの、エブリンや他の人達に見られたら耐えられないわ。
私は不本意ながら汚したシーツは浄化魔法で痕跡を消す。
ついでに治癒魔法を自分にかけて、とりあえず立ち上がれるようにはなった。
大好きな菫色のワンピースに身を包むと、自分である程度の身支度を整えた。
「失礼致します。おじょ………奥様、起きてらっしゃいますか?」
「ええ。入ってちょうだい」
私が声をかけると、入室してきたのはエブリンだった。
「旦那様が、奥様は疲れているだろうからゆっくり休ませてやれと仰っていましたので、お支度のお手伝いをせず申し訳ございませんでした」
「………奥様?」
エブリンにそう呼ばれると凄く違和感があった。
「執事のオーキッドから、『お嬢様』はスピラエラ伯爵家での呼び方だと咎められまして………」
………まぁ確かにそのとおりよね。もう既に結婚してしまっているのだし、私は正式なグロリオサ公爵夫人。ここでは奥様と呼ばれるのが筋なのよね。
「呼ばれ慣れていないから、違和感があっただけよ。エブリンが叱られるのは嫌ですもの。お互いに早く慣れましょうね」
「はい、おじょ………奥様。………そうでした。お伝えしなければならないことがありまして………」
「伝えたいこと?」
「はい。実は、モーリス侯爵令嬢がお越しです」
モーリス侯爵令嬢、ですって?
それを聞いた途端に頭が痛くなった。
「アデルバート様は?」
「今朝方、城下町の方へ馬でお出かけになられました」
………ということは、お留守なのね。
はっきり言って、嫌な予感しかしないわ。でも、昨日の様子だと使用人達も困っている様子だったから、対応を任せる訳にはいかないわよね。
「分かったわ。どちらにいらっしゃるの?」
「ええと、確かサロンの方に」
「すぐに向かうわ」
「あ、おじ………奥様!少しお化粧を………」
「そうね。急いでお願い」
薄っすらと化粧を施してもらうと、顔色の悪さが少しは緩和されたように見えた。
私はエブリンを伴い、急いでサロンへと向かった。
「早くアデルバート様を呼んできなさいよ!この私が命令しているのよ?!」
扉の外からでも聞こえるような、女性の怒声が響く。
噂以上に、厄介そうだわ。私は、ため息をつくとドアをノックして入室する。
「………誰よ、あなた」
そこには、真っ赤なドレスを身に着けた、黒髪に青い目の美女が、仁王立ちしていた。
それでも、房事の為とはいえ、寝食を共にしていただけるだけでも十分だと思わなければ。関係の冷え切った夫婦は、屋敷で顔を合わせることすらしないと聞くもの。
私は溜息を付きながら寝台から降りようとして、へたり込んでしまった。
腰が、立たない。まさか、昨夜の行為で………?
何とか立ち上がろうとすると、足の間からアデルバート様の名残が溢れ出てきた。
「や………!」
想定外の事態に、私は羞恥で顔を赤く染めた。
こんなの、エブリンや他の人達に見られたら耐えられないわ。
私は不本意ながら汚したシーツは浄化魔法で痕跡を消す。
ついでに治癒魔法を自分にかけて、とりあえず立ち上がれるようにはなった。
大好きな菫色のワンピースに身を包むと、自分である程度の身支度を整えた。
「失礼致します。おじょ………奥様、起きてらっしゃいますか?」
「ええ。入ってちょうだい」
私が声をかけると、入室してきたのはエブリンだった。
「旦那様が、奥様は疲れているだろうからゆっくり休ませてやれと仰っていましたので、お支度のお手伝いをせず申し訳ございませんでした」
「………奥様?」
エブリンにそう呼ばれると凄く違和感があった。
「執事のオーキッドから、『お嬢様』はスピラエラ伯爵家での呼び方だと咎められまして………」
………まぁ確かにそのとおりよね。もう既に結婚してしまっているのだし、私は正式なグロリオサ公爵夫人。ここでは奥様と呼ばれるのが筋なのよね。
「呼ばれ慣れていないから、違和感があっただけよ。エブリンが叱られるのは嫌ですもの。お互いに早く慣れましょうね」
「はい、おじょ………奥様。………そうでした。お伝えしなければならないことがありまして………」
「伝えたいこと?」
「はい。実は、モーリス侯爵令嬢がお越しです」
モーリス侯爵令嬢、ですって?
それを聞いた途端に頭が痛くなった。
「アデルバート様は?」
「今朝方、城下町の方へ馬でお出かけになられました」
………ということは、お留守なのね。
はっきり言って、嫌な予感しかしないわ。でも、昨日の様子だと使用人達も困っている様子だったから、対応を任せる訳にはいかないわよね。
「分かったわ。どちらにいらっしゃるの?」
「ええと、確かサロンの方に」
「すぐに向かうわ」
「あ、おじ………奥様!少しお化粧を………」
「そうね。急いでお願い」
薄っすらと化粧を施してもらうと、顔色の悪さが少しは緩和されたように見えた。
私はエブリンを伴い、急いでサロンへと向かった。
「早くアデルバート様を呼んできなさいよ!この私が命令しているのよ?!」
扉の外からでも聞こえるような、女性の怒声が響く。
噂以上に、厄介そうだわ。私は、ため息をつくとドアをノックして入室する。
「………誰よ、あなた」
そこには、真っ赤なドレスを身に着けた、黒髪に青い目の美女が、仁王立ちしていた。
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