15 / 166
15.護衛騎士ドミニク
しおりを挟む
暫くして、エブリンが戻ってきた。
「既に公爵様からお話があったようで、これから護衛騎士の方が迎えに行く来てくださるそうですわ」
そう言えば、朝方にそんなような事をアデルバート様が仰っていたわね。
「私ももちろんご一緒しますから、万が一気分が悪くなったら仰って下さいね?」
「大丈夫よ。エブリンは心配性ね」
「お嬢様がいつもご無理をなさるからそうなったのです」
ふふっとエブリンが笑った時、扉がノックされた。
「どうぞ」
私が声をかけると、背の高い、赤毛を短く刈り込んだ青年が入ってきた。
「この度、黒焔公爵様より奥方様の護衛騎士を仰せつかりました、ドミニク・ベンジャミンと申します。よろしくお願い致します」
爽やかな雰囲気の、ドミニクと名乗った青年は、騎士の礼を取った。
「私は、シャトレーヌと申します。ドミニク、これから世話になりますがどうぞよろしくお願いしますね」
私は精一杯「奥様スマイル」を作ってドミニクに微笑んだ。
「はい!」
ドミニクは、元気いっぱいに答えてくれた。
「本日は、イースボル城のご案内をさせていただきます。城内は比較的安全ですが、それでも決して俺から離れないでください」
ドミニクの言葉に私は首を傾げた。
「それは、どういうことかしら?」
「黒焔公爵様から聞いていませんか?城の中にも、異民族の間者が入り込む事があるんです。警備はしっかりしているのですが、奴らもかなり魔法の腕を磨いてきていますからね」
王都では考えられないような話に、私は驚きを隠せない。
ここは安全な王都ではなく、常に侵略や襲撃に晒されている最前線ということを思い知らされる。
「あ、あの基本的に奥方様が部屋を出られる時は、俺か黒焔公爵様が付きますし、心配されなくても大丈夫ですよ!」
私の反応に、ドミニクが慌てて弁明する。
「もちろん、分かっているわ。ただ、やはり王都とは違う所に来たのだなって、実感していたの」
私がそう説明をすると、ドミニクは安堵した表情を浮かべた。……何だか、人懐こい大型犬みたいだわ。
「いざというときは、俺が命に代えても守りますから!!」
「……いざという時が来ないことを祈っているわね」
私は、苦笑しながらそう答えた。命に代えられたら困ってしまうのだけど。
「では、そろそろ参りましょうか」
ドミニクが、恭しくお辞儀をした。
そんなドミニクを、エブリンがうっとりとした目で見つめているのを横目で見ながら、私は淑女の礼で返した。
「既に公爵様からお話があったようで、これから護衛騎士の方が迎えに行く来てくださるそうですわ」
そう言えば、朝方にそんなような事をアデルバート様が仰っていたわね。
「私ももちろんご一緒しますから、万が一気分が悪くなったら仰って下さいね?」
「大丈夫よ。エブリンは心配性ね」
「お嬢様がいつもご無理をなさるからそうなったのです」
ふふっとエブリンが笑った時、扉がノックされた。
「どうぞ」
私が声をかけると、背の高い、赤毛を短く刈り込んだ青年が入ってきた。
「この度、黒焔公爵様より奥方様の護衛騎士を仰せつかりました、ドミニク・ベンジャミンと申します。よろしくお願い致します」
爽やかな雰囲気の、ドミニクと名乗った青年は、騎士の礼を取った。
「私は、シャトレーヌと申します。ドミニク、これから世話になりますがどうぞよろしくお願いしますね」
私は精一杯「奥様スマイル」を作ってドミニクに微笑んだ。
「はい!」
ドミニクは、元気いっぱいに答えてくれた。
「本日は、イースボル城のご案内をさせていただきます。城内は比較的安全ですが、それでも決して俺から離れないでください」
ドミニクの言葉に私は首を傾げた。
「それは、どういうことかしら?」
「黒焔公爵様から聞いていませんか?城の中にも、異民族の間者が入り込む事があるんです。警備はしっかりしているのですが、奴らもかなり魔法の腕を磨いてきていますからね」
王都では考えられないような話に、私は驚きを隠せない。
ここは安全な王都ではなく、常に侵略や襲撃に晒されている最前線ということを思い知らされる。
「あ、あの基本的に奥方様が部屋を出られる時は、俺か黒焔公爵様が付きますし、心配されなくても大丈夫ですよ!」
私の反応に、ドミニクが慌てて弁明する。
「もちろん、分かっているわ。ただ、やはり王都とは違う所に来たのだなって、実感していたの」
私がそう説明をすると、ドミニクは安堵した表情を浮かべた。……何だか、人懐こい大型犬みたいだわ。
「いざというときは、俺が命に代えても守りますから!!」
「……いざという時が来ないことを祈っているわね」
私は、苦笑しながらそう答えた。命に代えられたら困ってしまうのだけど。
「では、そろそろ参りましょうか」
ドミニクが、恭しくお辞儀をした。
そんなドミニクを、エブリンがうっとりとした目で見つめているのを横目で見ながら、私は淑女の礼で返した。
3
お気に入りに追加
1,224
あなたにおすすめの小説
小国の王太子。~優秀だが口煩いからと婚約破棄された超大国の大貴族チート令嬢を妻に迎え、彼女の力を借りて乱世での生存を目指します。
モモ
ファンタジー
小国リューベック王国の王太子アルベルトの元に口煩いからと婚約破棄された隣国にある大国ロアーヌ帝国のピルイン公令嬢アリシアとの縁談話が入る。拒めず、婚姻と言う事になったのであるが、会ってみると彼女はとても聡明であり、絶世の美女でもあった。アルベルトは彼女の力を借りつつ改革を行い、徐々にリューベックは力をつけていく。一方アリシアも女のくせにと言わず自分の提案を拒絶しないアルベルトに少しずつひかれていく。徐々にリューベック王国が力をつけていく中、後にフェリオル戦争と呼ばれる大戦が勃発し、リューベックもそれに巻き込まれていく事になる。リューベック王国は生き残る事が出来るであろうか
モブだった私、今日からヒロインです!
まぁ
恋愛
かもなく不可もない人生を歩んで二十八年。周りが次々と結婚していく中、彼氏いない歴が長い陽菜は焦って……はいなかった。
このまま人生静かに流れるならそれでもいいかな。
そう思っていた時、突然目の前に金髪碧眼のイケメン外国人アレンが…… アレンは陽菜を気に入り迫る。
だがイケメンなだけのアレンには金持ち、有名会社CEOなど、とんでもないセレブ様。まるで少女漫画のような付属品がいっぱいのアレン……
モブ人生街道まっしぐらな自分がどうして?
※モブ止まりの私がヒロインになる?の完全R指定付きの姉妹ものですが、単品で全然お召し上がりになれます。
※印はR部分になります。
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」
【R18】両想いでいつもいちゃいちゃしてる幼馴染の勇者と魔王が性魔法の自習をする話
みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。
「両想いでいつもいちゃいちゃしてる幼馴染の勇者と魔王が初めてのエッチをする話」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/575414884/episode/3378453
の続きです。
ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで
畑にスライムが湧くんだが、どうやら異世界とつながっているみたいです
tera
ファンタジー
■書籍化しました。10月刊行してます。
■それに伴いあらすじ差し替えです。
■全2巻発売中!
■完結積み作品ですか要望によってはこぼれ話をWEBにて更新します。
異世界×現代のんびり農業ファンタジー、開幕!!
会社を辞めて東京奥多摩へ帰ってきた俺、向ケ丘ユヅル。祖父母の残した家と畑を管理することになり、畑の様子を見に行くと……ちょ、スライムが湧いている!? それも、一匹や二匹ってレベルじゃねーぞ! なんとか駆逐したものの、来る日も来る日も畑に異世界からの魔物や女騎士が湧いてくるんだが――東京奥多摩の秘境を舞台に、異世界の同居人と現代人が繰り広げる、ドタバタ農業ファンタジーが今、始まる!
=====
※一話二千文字程度でゆるっと続けていきたいと思います。
※ぜひ感想などありましたらお願いします。
※2017.04.08 HOTランキング一位とれました!
※2017.04.09 ファンタジー小説ランキング一位です、ありがとうございます!
※そして月曜日から一日一更新になります。お読みいただいてありがとうございます!
【完結】男装の麗人が私の婚約者を欲しがっているご様子ですが…
紺
恋愛
伯爵令嬢のグラシャは同じ女学校のシルビアと婚約者で侯爵家のアシュレイが両想いであるという噂を耳にする。シルビアは彼の幼馴染、しかもその長身と整った顔立ちから『男装の麗人』として人気を集めている。
お互いが想い合っているなら潔く身を引こう、心に決めたグラシャはアシュレイを呼び出し別れを告げようとするが……
「俺が君を手放すと、そう思っているのか?」
勘違いした令嬢と不器用な婚約者がある噂をきっかけに急接近?!ざまぁ要素あり、基本溺愛系です。
※ノベルバでも投稿しております。
今さら、私に構わないでください
ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。
彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。
愛し合う二人の前では私は悪役。
幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。
しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……?
タイトル変更しました。
【R18】翡翠の鎖
環名
ファンタジー
ここは異階。六皇家の一角――翠一族、その本流であるウィリデコルヌ家のリーファは、【翠の疫病神】という異名を持つようになった。嫁した相手が不幸に見舞われ続け、ついには命を落としたからだ。だが、その葬儀の夜、喧嘩別れしたと思っていた翠一族当主・ヴェルドライトがリーファを迎えに来た。「貴女は【幸運の運び手】だよ」と言って――…。
※R18描写あり→*
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる