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13.翌朝

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体が重くて、うまく動かせない。それに、節々が軋むように痛い。

「ん……」

うっすらと、瞼を開ける。誰かの、傷だらけの肌が視界を遮っていた。
ええと……。
ぼんやりとした頭が、霧が晴れていくように次第にはっきりとしていく。
私、昨日アデルバート様に……。

「目覚めたか」

間近で声がして、私の意識はクリアになった。
少し顔を上げると、どきりとするような妖艶な笑みを浮かべたアデルバート様が私を見つめている。
体が動かせないのは、アデルバート様が私を抱きしめているからだと、そこで初めて気がついた。
一糸まとわぬ姿のまま、男性に抱きしめられているという事実に、みるみる顔が熱くなる。

「お、お離しください……」
「何故だ?」

アデルバート様はそうするのがさも当然、といった風な態度。
………この方は本当に最恐と言われる黒焔公爵様なのかしら。そもそも、ずっと結婚を嫌がっていたのではなかったの?

「何故って、恥ずかしいですもの……」
「その恥じらう姿が初々しいな」

これではまるで甘々な新婚夫婦そのものではないの。
私は戸惑いを隠せなかった。

「……あの、アデルバート様は結婚を嫌がっていらっしゃったのでは?」

疑問が、つい口をついて出てしまいました。

「あぁ。妻を娶る気など、全く無かったが陛下が煩くてな。ならば聖女を寄越すのであれば娶ると条件を出した」

それは存じております。陛下からの勅使の方が仰ってましたからね。

「娶った以上は、責任を持つ。そういう事だ」

きっぱりと断言されて、私は閉口した。
アデルバート様だって好きで私を妻に迎えたのではないし、私だって好んでアデルバート様に嫁いだわけではない。ただ、王命だったから。それだけの理由なのは分かっている。
ただ分かっていても、はっきりと「仕方ないから妻に迎えた」と言われるのは想像以上に悲しかった。
もしかしたら、私の中でアデルバート様が自分に好意を持ってくれたのかもという淡い期待があったのかもしれない。
そう思うと、そんな期待を抱いていた自分自身が堪らなく惨めに思えた。

「……お離し、下さいませ」

心の内を知られたくなくて、私はアデルバート様から目を反らした。

「……そんなに嫌なら、仕方あるまい」

今度はあっさりと、アデルバート様は離してくださった。
私は肌が見えないように、ベッドに潜り込む。

「さて、私は仕事がある。お前はゆっくりしているといい。動けるようであれば、誰かに城の中を案内するように言っておこう」

アデルバート様はバスローブを羽織ると、寝台から降りられた。
そしてそのまま、振り返ることなく寝室を出ていってしまった。
私は、味わったことのないような虚しさを感じながら、微睡みに身を任せたのだった。
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