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第1章 念願の国外追放
疑惑
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弾丸の如くぶっ飛んで来たから僕も椅子ごと後ろにぶっ飛びかけたんだけど、その前にオーナーの腕が僕をがっちり抱き止めてくれたから第3王子ごと床に突っ込む惨事は免れた。
キキィ、ってブレーキ音が聞こえそうな程の勢いで急停止した王子が手をワキワキさせて僕を見てきて正直めちゃくちゃ怖いんですけど!!
「小さい子!抱かせてください!!」
「リンク、言い方」
兄王子が嗜めるけど手のワキワキが止まらない。怖すぎる!!
「オ、オーナー……」
この方は一体何なんでしょう……?
ススス……っとオーナーの背中に隠れながらちらりと覗く。
いやでも、ある意味推しに悶えてる僕と似通ったものを感じるな。
僕だったら推しに出会ったら手わきわきさせて胸に飛び込んで何だったら雄っぱい揉みますけど。
……同士、か……?
ふむ、と顎に手をやって考え込んでたら
「んあぁぁぁぁ!!小さい子が可愛いぃぃぃぃ!!天使!こっちにおいで!!お兄さんが抱いてあげるから!」
「だから言い方ぁ!!」
僕の目の前で兄弟漫才みたいなのが始まってしまった。
兄王子が懐から出した扇でスパーン!!って音がする程の突っ込みを入れてる。
うん……ちょっと対象が僕なのが怖いけど友達になれそうなテンションなのは好感度高いな。
っていうか小説の王子、こんなんじゃなかった気がするんだけど。もっと儚げな雰囲気でこう……未亡人感みたいなのを醸し出してたような?
ススス……と寄ってきたマリオットも引いてるのかと思って、でもオーナーの背中は僕のもんだ!って言おうとそっちを見たんだけど思いの外真剣な瞳と目が合った。マリオットはオーナーの背中に半分隠れながら小声で耳打ちしてくる。
「気を付けろ。王城には鑑定の魔導具がある」
鑑定の魔導具。
相手の体力、魔力、スキル、状態、得意属性、あらゆる物を鑑定してしまう魔導具だ。
そうだ、確かティール達が光魔法に目覚めた時もこの鑑定の魔導具で光の勇者だって結果が出たから認められたんだった。
って事は暫定魔王の僕が触ったら『魔王(予定)』とか出ちゃう可能性があるって事?
いやそもそも人間の僕が触って魔王、って結果になるかな?
「隙あり!!」
「ほわぁぁぁぁーーー!?」
オーナーの目が僕達の方に向けられた途端、また弾丸みたいに飛んできた王子にぎゅうぅぅぅ……っと抱き締められてしまった。
王子!力強いですね!そして流石王族!何か良い匂いする!
「んんんん!!!小さい子!!可愛い!!!」
「あの、僕一応18ですけど……」
むしろ冬生まれだからもうすぐ19になるんですけど。
でも確かに栄養が足りなかったらしい僕の身長はそこまで高くない。そして栄養が回るようになって性徴期は来たけど成長期は来ないようで全然背が伸びない。
だけど良いんだ!この身長だとオーナーが軽々抱き上げてくれるから!オーナーくらい大きくなりたいけど、そしたら抱き上げてもらえなくなるかも知れないもんね。
「その辺で離してやれ。ウルは抑制剤がまだうまく効かないからSubドロップを起こしやすいんだ」
頬と頬をくっつけて、すべすべ!なんてスリスリしてくる王子から引き離そうとするオーナーの手を逃れた王子が僕の顔を覗き込んでくる。
にこにこと人が良さそうなその顔は嫌な感じもないし、ティールと恋仲になるんだから王子もSubだよね?Sub同士はくっついてても気持ち悪くならない筈だしオーナーもそれは知ってると思うんだけど……でもオーナーの目がちょっと怖いから王子の腕から逃れようともぞもぞ動いてみるんだけどびくともしない。
え、力強すぎない……?もしかして僕の力が弱いだけ?
「小さい子、最近Subドロップ起こしたの?」
「え、えっと4日前?くらいに……」
「そっか~。大変だったね。その前は?」
その前は……初めて『コマンド』を使われた日だ。
思い出すと勝手に体が震え出して頭がガンガンと痛み出す。
でもその僕の腕をとって王子から引き剥がしたオーナーが腕の中に抱え込んでくれたから、ぎゅっと目を閉じてあの日の光景を脳裏から振り払った。
逞しい大胸筋に頭をこすりつけて雄っぱいを堪能してたら王子の、ふむ、って何か考えるような声が聞こえてちらりと振り返る。
何かこの人怖い……。笑顔の裏に何かありそう感が満載だ。小説の未亡人感はどこ行っちゃったんだ?
「あの時感じた魔力……」
「ウルはあの日酷いSubドロップを起こしたんだ。あの日の事は触れないで欲しいんだが?」
「……そう。でも王家としては疑惑をそのままにしておくわけにいかないんだよね」
ドキドキと心臓が煩い。
疑惑って何だろう。
あの日の記憶は怖かった、オーナーが来てくれて安心した、その後のあれこれしか残ってない。
あれこれは思い出すと頬が熱くなるから頭から締め出しておいて……。
「あの日の魔力が魔王かと思ったんだけど……」
ビクッと体が動かなかったのはオーナーの腕ががっちりと僕の体を抱えてくれてたから。そうじゃなかったら思いっきり、あのギョロ目の雛達くらいびくん、ってなってたかも知れない。
僕、あの日魔力出してたの……?
確かに一瞬だけ記憶が途切れた瞬間があるけど、直後にオーナーが来てくれたし魔法を使ってはいないと思う。
「王城騎士団が出てきたのはその為か?」
オーナーが考え込む王子じゃなくて兄王子に向けて訊いた。
「……兄上からあの日王城の測定器とリンクが感知した魔力の持ち主が現場に現れたらそれが魔王だろう、と言われていた」
「でも魔物増殖の現場にあの日の魔力保持者は来なかったし、あの日以来それらしき魔力も感じないから私は気の所為だって言ったんだけど」
魔王復活説を信じてる王太子は聞く耳を持たなくて、その保持者を連れて来いって騒いでるらしい。
しかもその魔王疑惑の魔力保持者は僕だって確信してるみたいで王族2人の目は僕の方を向いてる。
今魔王じゃない、って言っても信じてくれなさそうな顔だ。
「もしも僕が魔王だったらどうなるんですか……?」
オーナーの服をぎゅっと握る。
国王と王太子は魔王を先に倒しとけ派みたいだから訊かなくてもわかってるんだけど。
「……君の命を奪う事になるね」
「僕が魔王じゃなかったら?」
「魔王じゃなかったら、その魔力は国全体の為の結界に使って欲しいって言われると思う」
この国の王都は魔力で結界が張ってある。その結界の魔力を補充してるのは魔塔の魔導師達だ。
魔塔の魔導師だけだったら国全体に広げられる程の魔力はないから王都だけしか守れないけど、王子が感じた魔力の持ち主なら国全体を守る結界が張れるだけの魔力量だった、って。
そりゃ魔王ですもん。最期には倒されるとは言え、たった1人で戦えるだけの力はあるでしょう!なんて胸を張って言える状況じゃない。
だって王子が言ってるのは――
「そんなの生け贄じゃないか!」
代わりにマリオットが叫んでくれた。
前に授業で習った事がある。
パルヴァン王国の王城地下には魔方陣があって、遥か昔魔力量の多い聖女が生涯暮らした場所なんだって。
暮らした、って言ってるけど実際は眠らされてゆっくりゆっくり老いながら魔力を結界に吸収され続けただけらしいけど。
それを数世代繰り返す内歴代聖女達みたいな魔力量の持ち主が生まれなくなった事、当時の国王が人道に反するとその風習を取り止めた事で国全体を守る結界はなくなった。
代わりに高い城壁を築いて騎士団を鍛えて結界に頼らない生活が出来るようにしたんだとか。
子供の頃から地下のジメジメした寒い部屋に押し込められて、実家から逃げてもまた地下に押し込められるの?
そんなの絶対嫌だ。推しの側にいる為に頑張ったのに、また1人ぼっちになるなんて絶対嫌。
「……生け贄だよねぇ。私もそれには反対なんだけど……兄上を納得させる為にも一回王城に来て欲しいんだ」
またびくりと体が跳ねそうになる。
だって王城に行ったら。
鑑定をされたら。
勝手に体が震え出して止まらなくなる。
「安心してくれ。何も取って食おうってわけじゃないから」
兄王子も安心させるように言ってくれるけど残念ながら安心要素1つもないんだよ。
「何だったらエオローも一緒に連れて行こう」
僕がオーナーにくっついて離れないからか兄王子が言って、僕はオーナーを見上げた。
オーナーは怒った顔で王族2人を睨んでたけど最終的には従うしかない事は僕もわかってるんだ。だって相手は王族だもん。僕達平民は逆立ちしたって逆らえないじゃん。
マリオットは貴族籍のままだけどここではお客さん扱いだし、もちろん子爵家が他国の王家に逆らうなんて出来るわけがない。
唯一対抗出来そうな人と言えば――
「はいちょっと待ったー。勝手におじさんの可愛い甥っ子を連れていかないように」
「おじさん!」
伯父さんだったおじさんだけだ。
キキィ、ってブレーキ音が聞こえそうな程の勢いで急停止した王子が手をワキワキさせて僕を見てきて正直めちゃくちゃ怖いんですけど!!
「小さい子!抱かせてください!!」
「リンク、言い方」
兄王子が嗜めるけど手のワキワキが止まらない。怖すぎる!!
「オ、オーナー……」
この方は一体何なんでしょう……?
ススス……っとオーナーの背中に隠れながらちらりと覗く。
いやでも、ある意味推しに悶えてる僕と似通ったものを感じるな。
僕だったら推しに出会ったら手わきわきさせて胸に飛び込んで何だったら雄っぱい揉みますけど。
……同士、か……?
ふむ、と顎に手をやって考え込んでたら
「んあぁぁぁぁ!!小さい子が可愛いぃぃぃぃ!!天使!こっちにおいで!!お兄さんが抱いてあげるから!」
「だから言い方ぁ!!」
僕の目の前で兄弟漫才みたいなのが始まってしまった。
兄王子が懐から出した扇でスパーン!!って音がする程の突っ込みを入れてる。
うん……ちょっと対象が僕なのが怖いけど友達になれそうなテンションなのは好感度高いな。
っていうか小説の王子、こんなんじゃなかった気がするんだけど。もっと儚げな雰囲気でこう……未亡人感みたいなのを醸し出してたような?
ススス……と寄ってきたマリオットも引いてるのかと思って、でもオーナーの背中は僕のもんだ!って言おうとそっちを見たんだけど思いの外真剣な瞳と目が合った。マリオットはオーナーの背中に半分隠れながら小声で耳打ちしてくる。
「気を付けろ。王城には鑑定の魔導具がある」
鑑定の魔導具。
相手の体力、魔力、スキル、状態、得意属性、あらゆる物を鑑定してしまう魔導具だ。
そうだ、確かティール達が光魔法に目覚めた時もこの鑑定の魔導具で光の勇者だって結果が出たから認められたんだった。
って事は暫定魔王の僕が触ったら『魔王(予定)』とか出ちゃう可能性があるって事?
いやそもそも人間の僕が触って魔王、って結果になるかな?
「隙あり!!」
「ほわぁぁぁぁーーー!?」
オーナーの目が僕達の方に向けられた途端、また弾丸みたいに飛んできた王子にぎゅうぅぅぅ……っと抱き締められてしまった。
王子!力強いですね!そして流石王族!何か良い匂いする!
「んんんん!!!小さい子!!可愛い!!!」
「あの、僕一応18ですけど……」
むしろ冬生まれだからもうすぐ19になるんですけど。
でも確かに栄養が足りなかったらしい僕の身長はそこまで高くない。そして栄養が回るようになって性徴期は来たけど成長期は来ないようで全然背が伸びない。
だけど良いんだ!この身長だとオーナーが軽々抱き上げてくれるから!オーナーくらい大きくなりたいけど、そしたら抱き上げてもらえなくなるかも知れないもんね。
「その辺で離してやれ。ウルは抑制剤がまだうまく効かないからSubドロップを起こしやすいんだ」
頬と頬をくっつけて、すべすべ!なんてスリスリしてくる王子から引き離そうとするオーナーの手を逃れた王子が僕の顔を覗き込んでくる。
にこにこと人が良さそうなその顔は嫌な感じもないし、ティールと恋仲になるんだから王子もSubだよね?Sub同士はくっついてても気持ち悪くならない筈だしオーナーもそれは知ってると思うんだけど……でもオーナーの目がちょっと怖いから王子の腕から逃れようともぞもぞ動いてみるんだけどびくともしない。
え、力強すぎない……?もしかして僕の力が弱いだけ?
「小さい子、最近Subドロップ起こしたの?」
「え、えっと4日前?くらいに……」
「そっか~。大変だったね。その前は?」
その前は……初めて『コマンド』を使われた日だ。
思い出すと勝手に体が震え出して頭がガンガンと痛み出す。
でもその僕の腕をとって王子から引き剥がしたオーナーが腕の中に抱え込んでくれたから、ぎゅっと目を閉じてあの日の光景を脳裏から振り払った。
逞しい大胸筋に頭をこすりつけて雄っぱいを堪能してたら王子の、ふむ、って何か考えるような声が聞こえてちらりと振り返る。
何かこの人怖い……。笑顔の裏に何かありそう感が満載だ。小説の未亡人感はどこ行っちゃったんだ?
「あの時感じた魔力……」
「ウルはあの日酷いSubドロップを起こしたんだ。あの日の事は触れないで欲しいんだが?」
「……そう。でも王家としては疑惑をそのままにしておくわけにいかないんだよね」
ドキドキと心臓が煩い。
疑惑って何だろう。
あの日の記憶は怖かった、オーナーが来てくれて安心した、その後のあれこれしか残ってない。
あれこれは思い出すと頬が熱くなるから頭から締め出しておいて……。
「あの日の魔力が魔王かと思ったんだけど……」
ビクッと体が動かなかったのはオーナーの腕ががっちりと僕の体を抱えてくれてたから。そうじゃなかったら思いっきり、あのギョロ目の雛達くらいびくん、ってなってたかも知れない。
僕、あの日魔力出してたの……?
確かに一瞬だけ記憶が途切れた瞬間があるけど、直後にオーナーが来てくれたし魔法を使ってはいないと思う。
「王城騎士団が出てきたのはその為か?」
オーナーが考え込む王子じゃなくて兄王子に向けて訊いた。
「……兄上からあの日王城の測定器とリンクが感知した魔力の持ち主が現場に現れたらそれが魔王だろう、と言われていた」
「でも魔物増殖の現場にあの日の魔力保持者は来なかったし、あの日以来それらしき魔力も感じないから私は気の所為だって言ったんだけど」
魔王復活説を信じてる王太子は聞く耳を持たなくて、その保持者を連れて来いって騒いでるらしい。
しかもその魔王疑惑の魔力保持者は僕だって確信してるみたいで王族2人の目は僕の方を向いてる。
今魔王じゃない、って言っても信じてくれなさそうな顔だ。
「もしも僕が魔王だったらどうなるんですか……?」
オーナーの服をぎゅっと握る。
国王と王太子は魔王を先に倒しとけ派みたいだから訊かなくてもわかってるんだけど。
「……君の命を奪う事になるね」
「僕が魔王じゃなかったら?」
「魔王じゃなかったら、その魔力は国全体の為の結界に使って欲しいって言われると思う」
この国の王都は魔力で結界が張ってある。その結界の魔力を補充してるのは魔塔の魔導師達だ。
魔塔の魔導師だけだったら国全体に広げられる程の魔力はないから王都だけしか守れないけど、王子が感じた魔力の持ち主なら国全体を守る結界が張れるだけの魔力量だった、って。
そりゃ魔王ですもん。最期には倒されるとは言え、たった1人で戦えるだけの力はあるでしょう!なんて胸を張って言える状況じゃない。
だって王子が言ってるのは――
「そんなの生け贄じゃないか!」
代わりにマリオットが叫んでくれた。
前に授業で習った事がある。
パルヴァン王国の王城地下には魔方陣があって、遥か昔魔力量の多い聖女が生涯暮らした場所なんだって。
暮らした、って言ってるけど実際は眠らされてゆっくりゆっくり老いながら魔力を結界に吸収され続けただけらしいけど。
それを数世代繰り返す内歴代聖女達みたいな魔力量の持ち主が生まれなくなった事、当時の国王が人道に反するとその風習を取り止めた事で国全体を守る結界はなくなった。
代わりに高い城壁を築いて騎士団を鍛えて結界に頼らない生活が出来るようにしたんだとか。
子供の頃から地下のジメジメした寒い部屋に押し込められて、実家から逃げてもまた地下に押し込められるの?
そんなの絶対嫌だ。推しの側にいる為に頑張ったのに、また1人ぼっちになるなんて絶対嫌。
「……生け贄だよねぇ。私もそれには反対なんだけど……兄上を納得させる為にも一回王城に来て欲しいんだ」
またびくりと体が跳ねそうになる。
だって王城に行ったら。
鑑定をされたら。
勝手に体が震え出して止まらなくなる。
「安心してくれ。何も取って食おうってわけじゃないから」
兄王子も安心させるように言ってくれるけど残念ながら安心要素1つもないんだよ。
「何だったらエオローも一緒に連れて行こう」
僕がオーナーにくっついて離れないからか兄王子が言って、僕はオーナーを見上げた。
オーナーは怒った顔で王族2人を睨んでたけど最終的には従うしかない事は僕もわかってるんだ。だって相手は王族だもん。僕達平民は逆立ちしたって逆らえないじゃん。
マリオットは貴族籍のままだけどここではお客さん扱いだし、もちろん子爵家が他国の王家に逆らうなんて出来るわけがない。
唯一対抗出来そうな人と言えば――
「はいちょっと待ったー。勝手におじさんの可愛い甥っ子を連れていかないように」
「おじさん!」
伯父さんだったおじさんだけだ。
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