12 / 30
11
しおりを挟む
11
「ふう…」
もうすぐ秋期が終わる頃、リネットの部屋を訪れていたリリアは俯いて大きくため息を吐いた。
「リリア?」
「ねぇリネット、今セルダ殿下とどんな感じ?どの位会ったりしてるの?手紙は?どのくらいの頻度?」
がばっと顔を上げて正面に座るリネットに真剣な眼差しで迫るリリア。リネットとリリアの間では、セルダの話題は何となく避ける雰囲気だったので、急にその名が出た事にリネットは驚いた。
「ど、どうしたの?」
リリアはリネットから目を逸らすとボソッと呟く。
「…私の婚約の話」
「え?お話進んでるの?どなたと?」
リリアの新たな婚約の話は兄からもセルダからも聞いていない。
「…マルセル国の第三王子のレイモンド殿下と…ハリジュ殿下。だけど、まだ進んでいるというか、私の意思を尊重してくださるらしくて。それで、ハリジュ殿下とはこの間のお休みに、ちょっとお会いして…」
リリアはソファに置いてあったクッションで顔を隠しながら言う。顔は隠していても耳が真っ赤だ。
「え?それってお見合い?ハリジュ殿下?王弟の?」
「おおお、お見合いとか!大袈裟なのじゃないのよ!」
リリアが顔を隠していたクッションをぼすんと膝の上に置く。やはり顔も真っ赤だった。
「王妃様から息子が迷惑かけたからってお茶会にご招待いだだいて、そこにハリジュ殿下が来られてちょっとお話しただけなの」
息子が迷惑をかけたと言っても、セルダとリリアの婚約が解消されてから4ヵ月以上経っている。それはそういう口実でのリリアとハリジュの顔合わせであろう。
リリアとハリジュ殿下って二十くらい歳が離れてないかしら?親子と言っても良いような…?
ハリジュは前王の側妃の子で、白紫の髪に薄紫の瞳、全体的に色素が薄く、眼鏡を掛けたスラリと背の高い男性だ。
リネットの父とリリアの父は同級生で現在46歳なので、ハリジュが父のように見える訳ではないのだが。
「ハリジュ殿下っておいくつだったかしら…?」
「35歳だとおっしゃられてたわ。薬学や栄養学の研究などをされてるんですって」
「35」
本当に二十歳差だったと思いながらリネットが呟くと、リリアは慌てたように言う。
「でもそうは見えなかったわよ!若々しいと言うか…所作もお綺麗だし、大人の余裕と言うか…その………」
急にリリアが黙ってしまったので、リネットはリリアの顔を覗き込む。
「リリア?」
「………格好良かった…」
リリアはまたもやクッションに顔を押し付けながら言った。
つまり、好みだったと言う事ね。
顔合わせをしてみて、リリアが難色を示すようならマルセル国の王子へ婚姻の話を持って行く手順だったのかしら。
「それでね!」
リリアが急に顔を上げる。
「お会いしてからもう一週間経つのに、お手紙もカードもないの。それで世間一般ではどうなのかと思って」
「なるほど…でもリリア、私とセルダ殿下は世間一般には当てはまらないと思うの」
「それもそうね…」
リネットとリリアは互いに遠くを見つめ、また目を合わせて互いに笑い合った。
-----
チャールズは王宮の食堂で、またもや黒いオーラを漂わせるセドリックを見つける。
「セドリック…今度は何だ?」
セドリックの向かいに座りながら問いかける。
「どうして『殿下』と言う奴は誰も彼も俺の敵になるんでしょうか」
パリヤは廃太子となってセルダとリリアの婚約解消のきっかけを作り、セルダはリリアと婚約解消し、ハリジュはリリアの新しい婚約者候補となっている。
「ハリジュ殿下も?まだリリアと婚約した訳じゃないだろう?」
チャールズが呆れたように言うと、セドリックは自分の拳を握りしめる。
「二十も歳が離れた年寄りにリリアを嫁がせるなんて…」
「おいおい殿下を年寄り呼ばわりするなよ。それにハリジュ殿下は見た目は二十代だろ」
「いくら見た目は二十代でも、リリアが学園を卒業する頃には四十近いじゃないですか。すぐにリリアが未亡人になったらどうするんです!?いくらリリアが殿下を慕ってても、あちらから断ってくれても良いのに」
「リリアはハリジュ殿下を慕ってるのか?」
セドリックは眉間に皺を寄せながら無言で頷く。
リリアは年上好きだったのか…ファザコン?とは違うのかな。しかしシスコンとファザコンの兄妹か。なかなか難儀だな…とチャールズは口には出さず考えた。
「でもセルダ殿下もまだ敵なのか?リリアと婚約解消してくれたからセドリックとしては良かったんじゃないか?」
チャールズが揶揄うように言うと、セドリックはますます眉間の皺を深くし、黒いオーラを濃くする。
「セルダ殿下は…リリアを泣かせたし…」
それに…とセドリックは続けたが、声が小さくてチャールズには聞こえなかった。
「ふう…」
もうすぐ秋期が終わる頃、リネットの部屋を訪れていたリリアは俯いて大きくため息を吐いた。
「リリア?」
「ねぇリネット、今セルダ殿下とどんな感じ?どの位会ったりしてるの?手紙は?どのくらいの頻度?」
がばっと顔を上げて正面に座るリネットに真剣な眼差しで迫るリリア。リネットとリリアの間では、セルダの話題は何となく避ける雰囲気だったので、急にその名が出た事にリネットは驚いた。
「ど、どうしたの?」
リリアはリネットから目を逸らすとボソッと呟く。
「…私の婚約の話」
「え?お話進んでるの?どなたと?」
リリアの新たな婚約の話は兄からもセルダからも聞いていない。
「…マルセル国の第三王子のレイモンド殿下と…ハリジュ殿下。だけど、まだ進んでいるというか、私の意思を尊重してくださるらしくて。それで、ハリジュ殿下とはこの間のお休みに、ちょっとお会いして…」
リリアはソファに置いてあったクッションで顔を隠しながら言う。顔は隠していても耳が真っ赤だ。
「え?それってお見合い?ハリジュ殿下?王弟の?」
「おおお、お見合いとか!大袈裟なのじゃないのよ!」
リリアが顔を隠していたクッションをぼすんと膝の上に置く。やはり顔も真っ赤だった。
「王妃様から息子が迷惑かけたからってお茶会にご招待いだだいて、そこにハリジュ殿下が来られてちょっとお話しただけなの」
息子が迷惑をかけたと言っても、セルダとリリアの婚約が解消されてから4ヵ月以上経っている。それはそういう口実でのリリアとハリジュの顔合わせであろう。
リリアとハリジュ殿下って二十くらい歳が離れてないかしら?親子と言っても良いような…?
ハリジュは前王の側妃の子で、白紫の髪に薄紫の瞳、全体的に色素が薄く、眼鏡を掛けたスラリと背の高い男性だ。
リネットの父とリリアの父は同級生で現在46歳なので、ハリジュが父のように見える訳ではないのだが。
「ハリジュ殿下っておいくつだったかしら…?」
「35歳だとおっしゃられてたわ。薬学や栄養学の研究などをされてるんですって」
「35」
本当に二十歳差だったと思いながらリネットが呟くと、リリアは慌てたように言う。
「でもそうは見えなかったわよ!若々しいと言うか…所作もお綺麗だし、大人の余裕と言うか…その………」
急にリリアが黙ってしまったので、リネットはリリアの顔を覗き込む。
「リリア?」
「………格好良かった…」
リリアはまたもやクッションに顔を押し付けながら言った。
つまり、好みだったと言う事ね。
顔合わせをしてみて、リリアが難色を示すようならマルセル国の王子へ婚姻の話を持って行く手順だったのかしら。
「それでね!」
リリアが急に顔を上げる。
「お会いしてからもう一週間経つのに、お手紙もカードもないの。それで世間一般ではどうなのかと思って」
「なるほど…でもリリア、私とセルダ殿下は世間一般には当てはまらないと思うの」
「それもそうね…」
リネットとリリアは互いに遠くを見つめ、また目を合わせて互いに笑い合った。
-----
チャールズは王宮の食堂で、またもや黒いオーラを漂わせるセドリックを見つける。
「セドリック…今度は何だ?」
セドリックの向かいに座りながら問いかける。
「どうして『殿下』と言う奴は誰も彼も俺の敵になるんでしょうか」
パリヤは廃太子となってセルダとリリアの婚約解消のきっかけを作り、セルダはリリアと婚約解消し、ハリジュはリリアの新しい婚約者候補となっている。
「ハリジュ殿下も?まだリリアと婚約した訳じゃないだろう?」
チャールズが呆れたように言うと、セドリックは自分の拳を握りしめる。
「二十も歳が離れた年寄りにリリアを嫁がせるなんて…」
「おいおい殿下を年寄り呼ばわりするなよ。それにハリジュ殿下は見た目は二十代だろ」
「いくら見た目は二十代でも、リリアが学園を卒業する頃には四十近いじゃないですか。すぐにリリアが未亡人になったらどうするんです!?いくらリリアが殿下を慕ってても、あちらから断ってくれても良いのに」
「リリアはハリジュ殿下を慕ってるのか?」
セドリックは眉間に皺を寄せながら無言で頷く。
リリアは年上好きだったのか…ファザコン?とは違うのかな。しかしシスコンとファザコンの兄妹か。なかなか難儀だな…とチャールズは口には出さず考えた。
「でもセルダ殿下もまだ敵なのか?リリアと婚約解消してくれたからセドリックとしては良かったんじゃないか?」
チャールズが揶揄うように言うと、セドリックはますます眉間の皺を深くし、黒いオーラを濃くする。
「セルダ殿下は…リリアを泣かせたし…」
それに…とセドリックは続けたが、声が小さくてチャールズには聞こえなかった。
0
お気に入りに追加
67
あなたにおすすめの小説
【完結】悪女のなみだ
じじ
恋愛
「カリーナがまたカレンを泣かせてる」
双子の姉妹にも関わらず、私はいつも嫌われる側だった。
カレン、私の妹。
私とよく似た顔立ちなのに、彼女の目尻は優しげに下がり、微笑み一つで天使のようだともてはやされ、涙をこぼせば聖女のようだ崇められた。
一方の私は、切れ長の目でどう見ても性格がきつく見える。にこやかに笑ったつもりでも悪巧みをしていると謗られ、泣くと男を篭絡するつもりか、と非難された。
「ふふ。姉様って本当にかわいそう。気が弱いくせに、顔のせいで悪者になるんだもの。」
私が言い返せないのを知って、馬鹿にしてくる妹をどうすれば良かったのか。
「お前みたいな女が姉だなんてカレンがかわいそうだ」
罵ってくる男達にどう言えば真実が伝わったのか。
本当の自分を誰かに知ってもらおうなんて望みを捨てて、日々淡々と過ごしていた私を救ってくれたのは、あなただった。
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
あいつに惚れるわけがない
茉莉 佳
恋愛
思い切って飛び込んだ新世界は、奇天烈なところだった。。。
文武両道で良家のお嬢様、おまけに超絶美少女のJK3島津凛子は、そんな自分が大っ嫌い。
『自分を変えたい』との想いで飛び込んだコスプレ会場で、彼女はひとりのカメラマンと出会う。
そいつはカメコ界では『神』とも称され、女性コスプレイヤーからは絶大な人気を誇り、男性カメコから妬み嫉みを向けられている、イケメンだった。
痛いコスプレイヤーたちを交えてのマウント(&男)の取り合いに、オレ様カメコと負けず嫌いお嬢の、赤裸々で壮絶な恋愛バトルがはじまる!
*この作品はフィクションであり、実在の人物・地名・企業、商品、団体等とは一切関係ありません。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。
ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。
即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。
そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。
国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。
⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎
※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!
貴方の子どもじゃありません
初瀬 叶
恋愛
あぁ……どうしてこんなことになってしまったんだろう。
私は眠っている男性を起こさない様に、そっと寝台を降りた。
私が着ていたお仕着せは、乱暴に脱がされたせいでボタンは千切れ、エプロンも破れていた。
私は仕方なくそのお仕着せに袖を通すと、止められなくなったシャツの前を握りしめる様にした。
そして、部屋の扉にそっと手を掛ける。
ドアノブは回る。いつの間にか
鍵は開いていたみたいだ。
私は最後に後ろを振り返った。そこには裸で眠っている男性の胸が上下している事が確認出来る。深い眠りについている様だ。
外はまだ夜中。月明かりだけが差し込むこの部屋は薄暗い。男性の顔ははっきりとは確認出来なかった。
※ 私の頭の中の異世界のお話です
※相変わらずのゆるゆるふわふわ設定です。ご了承下さい
※直接的な性描写等はありませんが、その行為を匂わせる言葉を使う場合があります。苦手な方はそっと閉じて下さると、自衛になるかと思います
※誤字脱字がちりばめられている可能性を否定出来ません。広い心で読んでいただけるとありがたいです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる