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「パトリシアちゃん、俺、生徒会のサポートメンバーになったんだ」
 授業の合間の小休憩にロードはそうパトリシアに話しかけた。
「え?サポートメンバーって他の人じゃ…」
 生徒会には役員五名の他に各学年から男女一名づつ指名されたサポートメンバーがおり、舞踏会や卒業パーティーなどの大きな行事の前には手伝いをすることになっている。
 前学年の終わりに新一年生以外の次の年の生徒会役員とサポートメンバーを決めてあるので、編入生が編入した年のサポートメンバーになる事はない筈なのだ。
「何かね、生徒会の皆さんが『学園に馴染むために』って言ってサポートメンバー変わるように言ってくれたんだって」
 生徒会の皆さん…え?アランも?アレン殿下も?
「ああでも生徒会長だけは嫌そうな顔してたなぁ。何でかな?」
 首を傾げるロード。
「アレン殿下が…」
「生徒会長…アレン殿下とアラン殿下って本当そっくりだよね。髪型が同じなら俺見分けられないかも。パトリシアちゃんは見分けつくの?」
「え?はい」
 アレンとアランは本当に瓜二つで、小さい頃は入れ替わったりして遊んでいて、周りの大人は騙されたりしていたが、パトリシアが二人を見間違えた事は一度もなかった。
「さすが婚約者!どうやって見分けてるの?」
 興味津々と言う感じでロードが聞く。
「うーん、幼なじみなので、何となくわかるとしか…」
「そうなんだ。間違えた事はないの?」
「……」
 パトリシアは思い出している振りをしながらロードを観察する。
 お兄様が「双子の王子を完璧に見分けられると知れたらパットを何かに利用しようとする輩が現れるかも知れない」っていつか言ってたし…知られない方が良いのかも。
「…子供の頃、二人が入れ替わって遊んでいた時に間違えた事はありますよ。最近は入れ替わったりしてないからわかりませんけど」
「そうなんだ~」
 フェアリ様の様子を見る限り、何かを企んでいる感じではないけど…

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 新学期が始まってから約一か月が経った日の夜、寮のパトリシアの部屋へビビアンがやって来た。
「どうされたんですか?ビビアン様」
 テーブルに紅茶を置きながら言うと、ビビアンは泣きそうな顔でパトリシアを見上げた。
「パトリシア様…」
 ビビアン・ミルトンは、生徒会会計で二年生のライネル・コーンウェルの恋人で、一年生のサポートメンバーだ。
 ライネルの家は貿易商で、ビビアンの家は王都の商店街でカフェを営んでいる、二人は幼なじみの恋人同士なのだ。
「ライネルがおかしいんです」
「おかしい?」
「何だか…気になる人が居るみたいで…」
「え?」
 それは、もしかしてフェアリ様の事?
「その相手が…」
 ビビアンの向かいに座ったパトリシアをじっと見ながらビビアンが言いにくそうに言った。
「…アラン殿下みたいで」
「そう……え!?」
 え?フェアリ様じゃなくてアラン…え?アラン!?
「パトリシア様、最近アラン殿下とライネルが良く一緒に出掛けてるの、ご存知ないですか?」
「…そうなの?」
 そう言えば三年生になってからお休みの日にお茶とか誘われてないわ。元々幼なじみだしデートとかそう言うの改めてする事はなかったけど、一週置きくらいには会ってたのに。
「どこに行ってるのかはわからないんですけど…パトリシア様なら何かご存知かと…」
「残念だけどわからないわ。でもビビアンさんも、ただ二人で出掛けてるだけで怪しんでいるんじゃないんでしょう?」
「そうですね。男友達と遊びに行くような雰囲気なら気にならないんですけど…何だか私が連絡したり会いに行っても、以前と違って迷惑そうにするし…それに舞踏会の準備も始まったので、生徒会室に出入りする機会もあるんですけど、何故かライネルとアラン殿下がいつも生徒会室に居ないんです」

 学園では、春期の終わりには夏季休暇に入る前の舞踏会があり、冬期の終わりには卒業パーティーがあるので、貴族の令息令嬢は社交を学び、貴族でない者も貴族社会との繋がりを作ろうと励む場となるのだ。

「それは…確かに少し怪しいのかも知れないわね」
 パトリシアは口元に手を当てて考える。
「ですよね?」
「ねえビビアンさん、舞踏会の準備の時、生徒会室には役員とサポートメンバーは全員居るのが普通なの?」
「出入りはありますけど、まあ大体は」
「じゃあ、アランとライネルさんが居ない時、フェアリ様は生徒会室に居るのかしら?」
「フェアリ様?ああ、三年生へ編入してサポートメンバーになられた方ですね」
「ええ」
「その方が何かライネルたちに関係があるのですか?」
「ううん。ただ少し気になって」
 ビビアンは顎に指を当てて少し考えている。
「うーん、あまり気にして見た事がなかったので…次から気を付けて見てみます」
「私もアランにさりげなく聞いてみるわね」
 パトリシアも頷きながら言った。
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