転生令嬢と王子の恋人

ねーさん

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 ロイドとローズのダンスが二曲目に入ると、会場全体が騒ついた。
 「二曲踊るなんて…」
 リザはロイドとローズを見ながら呟いた。
 王子と踊りたい女生徒は多い。婚約者でもない限り二曲続けて踊るなんて通常はあり得ない。それに…
 ロイド殿下は二曲続けて踊るを知ってて、婚約者とは違う女生徒と…?
 それを、私がここで見ているのを知っていて?
「リザ…」
 ステラが心配そうにリザを見る。
「…私、帰るわ」
「リザ、私も一緒に…」
「大丈夫よ」
 何だか、私、滑稽で惨めだわ…
 リザは人混みを掻き分けて会場である講堂を出た。
 
「リザ様?どうされました?…顔色が悪いです」
 寮の部屋に戻ると、待っていたジューンにそう言われた。
「ちょっとね…ドレスを脱がせて。眠りたいの」
「わかりました」
 ドレスを脱いで化粧を落とし、心配するジューンに「大丈夫」と言い聞かせて帰らせてからベッドに潜り込む。
 特定の相手と二曲続けて踊るというのは、その二人が恋愛関係であると周りに知らしめる事だ。密かに持つその意味をロイドは知っていただろうか。
 ローズはかわいらしく笑っていたが、どこか勝ち誇ったような表情にも見えた。少なくともローズは意味を知っていた。
 私が、そう思って見たからそう見えたのかな?
 しばらくすると寮内が騒がしくなった。舞踏会が終わったのだろう。
 リザの部屋がノックされ「リザ」と呼ぶステラの声がしたが、リザは毛布を被り聞こえない振りをした。

-----

 そのまま学園は夏季休暇に突入する。
「ロイド殿下はあの後リザを探していたみたいよ。会場でキョロキョロしていたわ」
 クロフォード邸に遊びに来ているステラが言う。
「私を探していたとは限らないわ」
 リザは俯いて苦笑いをする。
 休みに入って一週間経つが、ロイドからは何の連絡もない。

 クロフォード家の執事が「お嬢様にお手紙です」とリザの部屋にやって来る。
 受け取って、差し出し人を見てリザは
「はあ?」
 と思わず声を出してしまった。
「どうしたの?リザ」
「ステラ、これ…」
 ステラへ差し出し人が見えるように封筒を差し出す。
「は?何でローズさんから手紙が?」
 封筒の裏にローズ・エンジェルと署名があった。
「さあ?」
 リザは「カミソリでも入ってるのか?」と警戒しながら封筒を開ける。
「これ、日本語で書いてある…」
「ニホンゴ?」
「前世で使ってた言葉と文字なの」
「と言う事は、ローズ様はやっぱりリザと同じ転生者なのね!」

 便箋を開くと、最初にこちらの言葉で

 リザ様へ
 きっとリザ様はこの文字を読めると思って書いています。もし読めないなら、変な手紙が来たと思って捨ててください。

 と、書いてあり、それ以降は日本語だ。

 私は前世では27歳まで生きました。彼氏いない歴27年の地味喪女でした。事故で亡くなる際に大好きだった乙女ゲームの世界に転生したいと願い、目が覚めるとその乙女ゲーム「恋する生徒会」のヒロインに生まれ変わっていました。

 前世の私のイチ推しはロイド殿下だったので、是非攻略したいと思い学園に入学したのですが、ロイド殿下の婚約者が、私のプレイしたゲームと違っていたのです。
 ゲームでのロイド殿下の婚約者は、アレクサンドラと言う侯爵家の令嬢で(姓は忘れてしまいました…)ロイド殿下のルートに入ると、ヒロインをいじめて卒業パーティーで婚約破棄を言い渡されて、国外追放となっていました。

 婚約者が違うという事は、もしかしてリザ様も転生者で、ロイド殿下が推しなのではないかと思い、この手紙を書いています。
 リザ様がどのような手を使って殿下の婚約者に納まったのかはわかりませんが、ヒロインは私です。どうか、ロイド殿下を譲ってください。

 くれぐれも、ヒロインは私なので。
 よろしくお願い致します。

          ローズ・エンジェル

「婚約者が違う?」
 リザは手紙を読み終えると呟いた。
「リザ?」
「待って。訳すわ」
 リザはローズの手紙を翻訳し、紙に書き写す。
 それを読んだステラは言った。
「アレクサンドラって令嬢、いるわよ」








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