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「ああ…それで、私がアリスに近付かないから、アリスの方からわざと苛められるために近寄って来てたのね」
納得したようにレイラが言う。
「何故わざわざ苛められないといけないんだ?」
ライアンが言うと、イアンが
「好感度を上げるためです。ヒロインが苛められてそれを攻略対象者が助けたり、慰めたりすると、ヒロインに対する親密度が上がります。更に攻略対象者が悪役令嬢を咎めたり喧嘩になったりすると悪役令嬢の好感度が下がり、相対的にヒロインの好感度が上がるんです」
そう答える。
カイルとサイラスは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
「その『悪役令嬢』と言う呼び方は余りにも…」
「レイラは悪役じゃない」
「カイル。嬉しいけど、ゲームの通りだと私は正に『悪役令嬢』なのよ」
「ゲームのレイラは何をするんだ?」
「教科書を破って、靴を隠して、嫌味を言って、水を掛けて、濡れ衣を着せて、階段から突き落とす。まだあったと思うけど…」
レイラは指を折りながら言う。
「ねえ、ちなみになんだけど、ライアンのルートだと、私は何をするの?」
キャロラインが言う。学園の生徒でもない自分がどうやってヒロインを苛めるのか興味があると言うのだ。
「キャロライン様が悪役令嬢の場合は、レベッカ様が史学研究会の後輩じゃないですか。そのレベッカ様や後輩を使ったり、キャロライン様自身が学園を訪れたりして他の悪役令嬢と同じような事は一通り」
「ああ、後輩を…」
史学研究会は学園の部活動で、文献や本などの寄贈や貸借りなどでOBが学園を訪れる機会の多い部活なのだ。
「後はヒロインの出自…庶民育ちな事、愛人の子である事などを記した怪文書をばら撒きます」
「なるほどそこでキャロラインらしさを発揮するのね」
キャロラインは納得して頷いた。
-----
「私が選べば、必ずその男性と結ばれるって!言ったのに!」
ライアンの手を振り払って言ったアリス。その眼に涙が浮かんでいた。
「アリス…?」
ライアンが心配そうにアリスの顔を覗き込む。
カイルもそうしたい衝動に駆られるが、拳を握って衝動をやり過ごした。
「ハミルトン先生、アリスを送ってあげてください」
わざと幼なじみではなく教師に対するように言う。
「分かりました」
ライアンも他の生徒に対するのと同じように返す。
「さあ、アリス。行きましょう」
涙を流すアリスは、今度は促されるまま歩き出した。
カイルは自分の横を通り過ぎようとするライアンに「今の言葉の意味を聞き出すよう」目配せをする。
ライアンは無言で頷いた。
「…うぅ…」
馬車の中で泣くアリスの背中を撫でるライアン。
「そういえば、レイラに聞きたい事があるって言ってましたよね?あれは何だったんです?」
「……」
「あの時のあの手紙には『強制力が働かない者が居る』と『自分の感情を疑え』って書いてあったんですよね。俺にはサッパリ意味が分からないんですが…」
わざと恍けて言う。
「…だっ…て、レイラ様、全然、言った通りに…しな、いから。だからカイル殿下、も…本当なら、もっと、私の事…」
「レイラが?誰の言った通りにしないんです?」
「サイラス殿下も、全然…私の事…だから、カイル殿下と絶対結ばれない、と…なのに…」
「サイラス殿下?」
「……」
アリスは無言になり、しゃくり上げながらハンカチを目に当てている。
暫くライアンもただ黙ってアリスの背中を摩る。
馬車がヴィーナス男爵家に近付くと、アリスが小さな声で言った。
「先生…私…帰りたくない…」
「…え?」
いやいやいや。いくら好きでもさすがに生徒に手は出さないよ。俺は。
それにこの言葉にそんな色っぽい意味はない、筈。
「家に帰るのが嫌なんですか?」
「……」
こくん。とアリスは頷く。
「もしかして、アリスに『必ずその男性と結ばれる』と言ったのは…家の人?」
こくん。ともう一度アリスは頷いた。
「ああ…それで、私がアリスに近付かないから、アリスの方からわざと苛められるために近寄って来てたのね」
納得したようにレイラが言う。
「何故わざわざ苛められないといけないんだ?」
ライアンが言うと、イアンが
「好感度を上げるためです。ヒロインが苛められてそれを攻略対象者が助けたり、慰めたりすると、ヒロインに対する親密度が上がります。更に攻略対象者が悪役令嬢を咎めたり喧嘩になったりすると悪役令嬢の好感度が下がり、相対的にヒロインの好感度が上がるんです」
そう答える。
カイルとサイラスは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
「その『悪役令嬢』と言う呼び方は余りにも…」
「レイラは悪役じゃない」
「カイル。嬉しいけど、ゲームの通りだと私は正に『悪役令嬢』なのよ」
「ゲームのレイラは何をするんだ?」
「教科書を破って、靴を隠して、嫌味を言って、水を掛けて、濡れ衣を着せて、階段から突き落とす。まだあったと思うけど…」
レイラは指を折りながら言う。
「ねえ、ちなみになんだけど、ライアンのルートだと、私は何をするの?」
キャロラインが言う。学園の生徒でもない自分がどうやってヒロインを苛めるのか興味があると言うのだ。
「キャロライン様が悪役令嬢の場合は、レベッカ様が史学研究会の後輩じゃないですか。そのレベッカ様や後輩を使ったり、キャロライン様自身が学園を訪れたりして他の悪役令嬢と同じような事は一通り」
「ああ、後輩を…」
史学研究会は学園の部活動で、文献や本などの寄贈や貸借りなどでOBが学園を訪れる機会の多い部活なのだ。
「後はヒロインの出自…庶民育ちな事、愛人の子である事などを記した怪文書をばら撒きます」
「なるほどそこでキャロラインらしさを発揮するのね」
キャロラインは納得して頷いた。
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「私が選べば、必ずその男性と結ばれるって!言ったのに!」
ライアンの手を振り払って言ったアリス。その眼に涙が浮かんでいた。
「アリス…?」
ライアンが心配そうにアリスの顔を覗き込む。
カイルもそうしたい衝動に駆られるが、拳を握って衝動をやり過ごした。
「ハミルトン先生、アリスを送ってあげてください」
わざと幼なじみではなく教師に対するように言う。
「分かりました」
ライアンも他の生徒に対するのと同じように返す。
「さあ、アリス。行きましょう」
涙を流すアリスは、今度は促されるまま歩き出した。
カイルは自分の横を通り過ぎようとするライアンに「今の言葉の意味を聞き出すよう」目配せをする。
ライアンは無言で頷いた。
「…うぅ…」
馬車の中で泣くアリスの背中を撫でるライアン。
「そういえば、レイラに聞きたい事があるって言ってましたよね?あれは何だったんです?」
「……」
「あの時のあの手紙には『強制力が働かない者が居る』と『自分の感情を疑え』って書いてあったんですよね。俺にはサッパリ意味が分からないんですが…」
わざと恍けて言う。
「…だっ…て、レイラ様、全然、言った通りに…しな、いから。だからカイル殿下、も…本当なら、もっと、私の事…」
「レイラが?誰の言った通りにしないんです?」
「サイラス殿下も、全然…私の事…だから、カイル殿下と絶対結ばれない、と…なのに…」
「サイラス殿下?」
「……」
アリスは無言になり、しゃくり上げながらハンカチを目に当てている。
暫くライアンもただ黙ってアリスの背中を摩る。
馬車がヴィーナス男爵家に近付くと、アリスが小さな声で言った。
「先生…私…帰りたくない…」
「…え?」
いやいやいや。いくら好きでもさすがに生徒に手は出さないよ。俺は。
それにこの言葉にそんな色っぽい意味はない、筈。
「家に帰るのが嫌なんですか?」
「……」
こくん。とアリスは頷く。
「もしかして、アリスに『必ずその男性と結ばれる』と言ったのは…家の人?」
こくん。ともう一度アリスは頷いた。
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