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「今年の避暑は大人数だな…」
グレイが少し呆れたような表情で言った。
「グレイやロイがいつも呼ぶ友人達の他に俺が呼んだ者もいるからなあ」
グレイの向かいのソファで脚を組んだエドモンドが言う。
「エドモンドが呼んだのはイライザ嬢とジェフリー殿とジェフリー殿の婚約者のナタリア嬢ですよね?僕もいつもの友人ワイゼルだけでなくブリジットとマリアンヌを呼んでますし、兄上はミア嬢とアレックス殿とディアナ嬢。総勢十二名ですか。確かに大人数ですね」
ロイが指を折りながら人数を数えて言った。
「ロイの呼んだマリアンヌとは誰だ?ワイゼルの婚約者ではないんだろう?」
「ワイゼルもマリアンヌも園芸部員ですね。ブリジットはマリアンヌの友達なので。イライザ嬢も来ると言うから少し強引に呼びました」
苦笑いしながら言うロイ。
「ロイはこの機にブリジット嬢を口説くつもりなのか?」
エドモンドがニヤニヤしながら言うと、ロイはコホンと咳払いをする。
「まあ、そうです」
「頑張れよ。俺もイライザともっと親密になれるよう頑張るし」
そう言うエドモンドを、グレイがチラリと見た。
「大人数なせいで男性と女性で滞在が別邸になったのが残念だが、イライザとミア嬢は同じ屋敷で大丈夫なのか?」
グレイの視線を無視して言うエドモンド。
男性六名女性六名、それぞれ家から従者や侍女などを連れて来ているし、王宮から使用人も来ているため、かなりの大人数だ。保養地にある湖の近くには王家の保養所とされる建物が複数あり、昨年まではその中の一棟を使っていたが、今年は二棟を使用する事になったのだ。
「ミアはイライザとどんなに揉めても、イライザな対して恨みを持ったりはしないようなんだ。だからミアは大丈夫だ。イライザは…正直よくわからない」
「ふーん。じゃあ舞踏会で生徒たちの前で派手に叩かれたのも気にしていないのか」
「そうだな。むしろ避暑にイライザが来ると聞いて喜んでいた」
「喜んでいるんですか?」
グレイが言うと、ロイは首を傾げた。
「…変な女だな」
エドモンドはグレイやロイに聞こえないくらいの小さな声で呟いた。
-----
「何故ペアばかりの中に私たちがいるのか理解できない…」
保養所と名がついてはいるが、建物自体は所謂貴族屋敷の一室、イライザに割り当てられた部屋を訪れたブリジットはソファで頭を抱えながら言った。
「ワイゼル様はロイ殿下の園芸部友達なのよね?それでマリアンヌ様も園芸部だからロイ殿下に呼ばれて、マリアンヌ様の話し相手としてブリジットが呼ばれたって訳ね」
「そう。何でもここの湖畔に珍しい植物が多いから観察と採取するとかでマリアンヌも呼ばれたらしいわ。部活の一環だわね」
ロイ殿下が部活の一環としてマリアンヌを呼んだのは、ブリジットを呼ぶ口実よね。姉である私も来るからって言えるし。
ロイ殿下としてはブリジットとお近付きになりたいんだろうけど、むしろこの機会に赤い糸の繋がってるマリアンヌと接近するんじゃないかなあと思うんだけど。
「マリアンヌ様はロイ殿下やワイゼル様と仲が良いの?」
「そんなに仲が良い訳でもないと思うけど。私から見れば普通の部活仲間って感じだし」
「そうなんだ」
「でも、マリアンヌ、避暑に呼ばれたのすごく嬉しそうで、私にも『一緒に行こう』って熱心に言ってたから…もしかしたらロイ殿下かワイゼル様のどちらかを好きなのかも知れないわね」
ブリジットが少し考えながら言う。
ほう。と、なるとマリアンヌが好きなのはロイ殿下の可能性が高いわね。
「マリアンヌ様とそういう話はした事ないの?」
「んー、マリアンヌは公爵家の娘だから結婚は最終的には親が決めるし、そう言う話は不毛な感じで」
「ああ…そうね」
恋バナして盛り上がっても、結局、結婚するのは親が決めた相手だもんね。
「私も…言えないし」
ブリジットは少し頬を赤くして俯いた。
ブリジットが好きなのはお兄様だから…そうよね。血が繋がってないとは言え自分の兄を恋愛的に好きだって、友達には言えないかも。
お兄様もう二十歳だし、侯爵家の嫡男だからいつ婚約とか結婚とかの話が出て来てもおかしくなかったから、ブリジットも気が気じゃなかっただろうなぁ。
そう言う気持ちとかも誰にも言えなかっただろうし…
「お兄様と『約束』できて良かったわね。ブリジット」
イライザがそう言うと、ブリジットの頬がますます赤くなる。
あれから、兄アドルフとブリジットは「ブリジットが学園を卒業したら結婚しよう」と約束したのだ。
「今年の避暑は大人数だな…」
グレイが少し呆れたような表情で言った。
「グレイやロイがいつも呼ぶ友人達の他に俺が呼んだ者もいるからなあ」
グレイの向かいのソファで脚を組んだエドモンドが言う。
「エドモンドが呼んだのはイライザ嬢とジェフリー殿とジェフリー殿の婚約者のナタリア嬢ですよね?僕もいつもの友人ワイゼルだけでなくブリジットとマリアンヌを呼んでますし、兄上はミア嬢とアレックス殿とディアナ嬢。総勢十二名ですか。確かに大人数ですね」
ロイが指を折りながら人数を数えて言った。
「ロイの呼んだマリアンヌとは誰だ?ワイゼルの婚約者ではないんだろう?」
「ワイゼルもマリアンヌも園芸部員ですね。ブリジットはマリアンヌの友達なので。イライザ嬢も来ると言うから少し強引に呼びました」
苦笑いしながら言うロイ。
「ロイはこの機にブリジット嬢を口説くつもりなのか?」
エドモンドがニヤニヤしながら言うと、ロイはコホンと咳払いをする。
「まあ、そうです」
「頑張れよ。俺もイライザともっと親密になれるよう頑張るし」
そう言うエドモンドを、グレイがチラリと見た。
「大人数なせいで男性と女性で滞在が別邸になったのが残念だが、イライザとミア嬢は同じ屋敷で大丈夫なのか?」
グレイの視線を無視して言うエドモンド。
男性六名女性六名、それぞれ家から従者や侍女などを連れて来ているし、王宮から使用人も来ているため、かなりの大人数だ。保養地にある湖の近くには王家の保養所とされる建物が複数あり、昨年まではその中の一棟を使っていたが、今年は二棟を使用する事になったのだ。
「ミアはイライザとどんなに揉めても、イライザな対して恨みを持ったりはしないようなんだ。だからミアは大丈夫だ。イライザは…正直よくわからない」
「ふーん。じゃあ舞踏会で生徒たちの前で派手に叩かれたのも気にしていないのか」
「そうだな。むしろ避暑にイライザが来ると聞いて喜んでいた」
「喜んでいるんですか?」
グレイが言うと、ロイは首を傾げた。
「…変な女だな」
エドモンドはグレイやロイに聞こえないくらいの小さな声で呟いた。
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「何故ペアばかりの中に私たちがいるのか理解できない…」
保養所と名がついてはいるが、建物自体は所謂貴族屋敷の一室、イライザに割り当てられた部屋を訪れたブリジットはソファで頭を抱えながら言った。
「ワイゼル様はロイ殿下の園芸部友達なのよね?それでマリアンヌ様も園芸部だからロイ殿下に呼ばれて、マリアンヌ様の話し相手としてブリジットが呼ばれたって訳ね」
「そう。何でもここの湖畔に珍しい植物が多いから観察と採取するとかでマリアンヌも呼ばれたらしいわ。部活の一環だわね」
ロイ殿下が部活の一環としてマリアンヌを呼んだのは、ブリジットを呼ぶ口実よね。姉である私も来るからって言えるし。
ロイ殿下としてはブリジットとお近付きになりたいんだろうけど、むしろこの機会に赤い糸の繋がってるマリアンヌと接近するんじゃないかなあと思うんだけど。
「マリアンヌ様はロイ殿下やワイゼル様と仲が良いの?」
「そんなに仲が良い訳でもないと思うけど。私から見れば普通の部活仲間って感じだし」
「そうなんだ」
「でも、マリアンヌ、避暑に呼ばれたのすごく嬉しそうで、私にも『一緒に行こう』って熱心に言ってたから…もしかしたらロイ殿下かワイゼル様のどちらかを好きなのかも知れないわね」
ブリジットが少し考えながら言う。
ほう。と、なるとマリアンヌが好きなのはロイ殿下の可能性が高いわね。
「マリアンヌ様とそういう話はした事ないの?」
「んー、マリアンヌは公爵家の娘だから結婚は最終的には親が決めるし、そう言う話は不毛な感じで」
「ああ…そうね」
恋バナして盛り上がっても、結局、結婚するのは親が決めた相手だもんね。
「私も…言えないし」
ブリジットは少し頬を赤くして俯いた。
ブリジットが好きなのはお兄様だから…そうよね。血が繋がってないとは言え自分の兄を恋愛的に好きだって、友達には言えないかも。
お兄様もう二十歳だし、侯爵家の嫡男だからいつ婚約とか結婚とかの話が出て来てもおかしくなかったから、ブリジットも気が気じゃなかっただろうなぁ。
そう言う気持ちとかも誰にも言えなかっただろうし…
「お兄様と『約束』できて良かったわね。ブリジット」
イライザがそう言うと、ブリジットの頬がますます赤くなる。
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