30 / 33
番外編3
しおりを挟む
モリーの野望
アリシアとジーンの結婚式は、王都のウィルフィス公爵領下にある教会で行われる。
「わあ、アリシア、すごく綺麗!」
控室にやって来たホリーが歓声を上げる。ホリーの妹であるモリーも一緒だ。
「アリシアお義姉さま、ものすごく綺麗です!」
12歳のモリーは、アリシアをうっとりと見つめる。
「ホリー、モリーもありがとう」
「アリシアの結婚式で親族席に座る事になるとは、思ってもみなかったわ」
「ホリーのお義兄さんだものね、ジーンは。それにホリーは私のお義姉さんになるんだし!」
ホリーと、アリシアの兄グレッグの結婚式は来年の春に決まった。あと約十カ月だ。
「ホリーも結婚式の準備でこれから忙しくなるわね」
「アリシアの準備見てたから大体の流れはわかったけど、自分たちがやるとなるとまた別物よね」
「そうね」
「それに、流石に公爵家の女主人になるには色々勉強しなくてはいけないのね…まあアリシアの王太子妃教育ほどじゃないから頑張るわ」
ホリーがため息混じりに言うと、アリシアはふふっと笑う。
「ホリーなら大丈夫よ。私も近くにいるんだし、一緒に頑張りましょうね!」
「そうね。アリシアよろしくね」
ホリーとアリシアが手を取り合っていると、モリーが「お姉さま方」と言う。
「モリー?」
「私にも家の取り仕切り方を教えてください」
「そうね、モリーも将来はお婿さんを迎えて伯爵家の女主人になるんだもの、一緒に勉強しましょう」
アリシアが言い、ホリーが頷く。
モリーは首を横に振った。
「女主人…ううん。じゃあジーンお義兄さまやグレッグお義兄さまに聞いた方が良いのかしら…?」
ぶつぶつと呟くモリーに、アリシアとホリーは首を傾げる。
「お姉さま、私、早く学園に入れる歳になりたいです!学園へ行ったら政治や経済、経営や運用の事を学んで、卒業したらロビンソン伯爵家を牛耳りたいのです!」
拳を握って力説するモリーをアリシアとホリーは呆然と眺める。
「ぎゅ…牛耳るの?」
「はい!」
アリシアが聞くと、モリーは勢い良く頷く。
「なので、伯爵位を継ぐお飾りの婿が必要なんです。放蕩者では困りますが自分が伯爵家を仕切りたい人でも困ります。上手く私に操られてくれる様な人が良いので、アリシアお義姉さまも良い人がいたら紹介してくださいね」
「はあ…」
「もう、モリー。結婚式前のアリシアに何頼んでるのよ」
ホリーが言うと、モリーはホリーの手を取る。
「ホリーお姉さま!お嫁に行く事にしてくれてありがとうございます。流石に私もお嫁に行った先の家を牛耳るのは難しいかと思っていたので、伯爵家を継ぐ役目を頂けて、本当に嬉しいです!」
「そ…そう。それは良かった…わ」
ホリーは自分が家を出る事で、妹へ家を継ぐという重圧を与えてしまったのではないかと気にしていたが、むしろ妹に喜ばれていると知って安堵した。
「あら、じゃあモリーちゃん、ウチの弟なんてどうかしら?」
控室に入って来たルナが言う。クララも一緒だ。
「ルナの弟さん?」
「アリシア、綺麗!かわいい!はあ~好き~」
ルナがうっとりと言う。
「ルナ様またダダ漏れてます。アリシア様おめでとうございます」
「ありがとう。ルナとクララは相変わらずね」
「弟さんは何歳ですか?」
うっとりしているルナへ、ずいっとモリーが迫る。
「こら、モリー」
ホリーが嗜めると、モリーは「だって~」と唇を尖らせる。
「ウチの弟、二人いるんだけど、下の弟が今15で今年学園に入学したの」
「三つ上か…悪くないわ」
モリーが頷く。
「この子がね、何と言うか…お父様似でね」
ルナが言い辛そうに言う。ルナの父と言えば、王宮の議会の議長だが、自分が娘に情報を漏洩している事に気付かないような人物だ。
「旦那様は残念な方です。そして、弟君は旦那様に似ています」
クララがキッパリと言い切った。
「…アリシア、すごく綺麗だ」
教会の扉の前で待っていたジーンは、やって来たアリシアの真っ白いドレス姿を見て、感嘆の声を上げる。
アリシアは美しいレースのロングドレーンが印象的なシンプルかつ、清楚なドレス姿だ。
「ジーンも、格好良い…」
ジーンはアリシアの髪の様なシルバーのテールコートを着ている。
「跡が残っちゃったな」
ジーンがアリシアの腕の傷跡を見て言う。レースで隠されているので、よく見ないと分からないが、湖に落ちた時の裂傷だ。
アリシアを落馬させて湖に落としたのは、王太子妃の座を狙うエバンス侯爵家が雇った輩だったと後に判明した。伯爵家の令嬢を誘拐した件から様々な罪が発覚し、エバンス侯爵家が取り潰されたのが春の頃の事だ。
「私は気にならないわ。ジーンは気にする?」
「全然」
二人は微笑み合って腕を組む。
そして、教会の扉が開いた。
アリシアとジーンの結婚式は、王都のウィルフィス公爵領下にある教会で行われる。
「わあ、アリシア、すごく綺麗!」
控室にやって来たホリーが歓声を上げる。ホリーの妹であるモリーも一緒だ。
「アリシアお義姉さま、ものすごく綺麗です!」
12歳のモリーは、アリシアをうっとりと見つめる。
「ホリー、モリーもありがとう」
「アリシアの結婚式で親族席に座る事になるとは、思ってもみなかったわ」
「ホリーのお義兄さんだものね、ジーンは。それにホリーは私のお義姉さんになるんだし!」
ホリーと、アリシアの兄グレッグの結婚式は来年の春に決まった。あと約十カ月だ。
「ホリーも結婚式の準備でこれから忙しくなるわね」
「アリシアの準備見てたから大体の流れはわかったけど、自分たちがやるとなるとまた別物よね」
「そうね」
「それに、流石に公爵家の女主人になるには色々勉強しなくてはいけないのね…まあアリシアの王太子妃教育ほどじゃないから頑張るわ」
ホリーがため息混じりに言うと、アリシアはふふっと笑う。
「ホリーなら大丈夫よ。私も近くにいるんだし、一緒に頑張りましょうね!」
「そうね。アリシアよろしくね」
ホリーとアリシアが手を取り合っていると、モリーが「お姉さま方」と言う。
「モリー?」
「私にも家の取り仕切り方を教えてください」
「そうね、モリーも将来はお婿さんを迎えて伯爵家の女主人になるんだもの、一緒に勉強しましょう」
アリシアが言い、ホリーが頷く。
モリーは首を横に振った。
「女主人…ううん。じゃあジーンお義兄さまやグレッグお義兄さまに聞いた方が良いのかしら…?」
ぶつぶつと呟くモリーに、アリシアとホリーは首を傾げる。
「お姉さま、私、早く学園に入れる歳になりたいです!学園へ行ったら政治や経済、経営や運用の事を学んで、卒業したらロビンソン伯爵家を牛耳りたいのです!」
拳を握って力説するモリーをアリシアとホリーは呆然と眺める。
「ぎゅ…牛耳るの?」
「はい!」
アリシアが聞くと、モリーは勢い良く頷く。
「なので、伯爵位を継ぐお飾りの婿が必要なんです。放蕩者では困りますが自分が伯爵家を仕切りたい人でも困ります。上手く私に操られてくれる様な人が良いので、アリシアお義姉さまも良い人がいたら紹介してくださいね」
「はあ…」
「もう、モリー。結婚式前のアリシアに何頼んでるのよ」
ホリーが言うと、モリーはホリーの手を取る。
「ホリーお姉さま!お嫁に行く事にしてくれてありがとうございます。流石に私もお嫁に行った先の家を牛耳るのは難しいかと思っていたので、伯爵家を継ぐ役目を頂けて、本当に嬉しいです!」
「そ…そう。それは良かった…わ」
ホリーは自分が家を出る事で、妹へ家を継ぐという重圧を与えてしまったのではないかと気にしていたが、むしろ妹に喜ばれていると知って安堵した。
「あら、じゃあモリーちゃん、ウチの弟なんてどうかしら?」
控室に入って来たルナが言う。クララも一緒だ。
「ルナの弟さん?」
「アリシア、綺麗!かわいい!はあ~好き~」
ルナがうっとりと言う。
「ルナ様またダダ漏れてます。アリシア様おめでとうございます」
「ありがとう。ルナとクララは相変わらずね」
「弟さんは何歳ですか?」
うっとりしているルナへ、ずいっとモリーが迫る。
「こら、モリー」
ホリーが嗜めると、モリーは「だって~」と唇を尖らせる。
「ウチの弟、二人いるんだけど、下の弟が今15で今年学園に入学したの」
「三つ上か…悪くないわ」
モリーが頷く。
「この子がね、何と言うか…お父様似でね」
ルナが言い辛そうに言う。ルナの父と言えば、王宮の議会の議長だが、自分が娘に情報を漏洩している事に気付かないような人物だ。
「旦那様は残念な方です。そして、弟君は旦那様に似ています」
クララがキッパリと言い切った。
「…アリシア、すごく綺麗だ」
教会の扉の前で待っていたジーンは、やって来たアリシアの真っ白いドレス姿を見て、感嘆の声を上げる。
アリシアは美しいレースのロングドレーンが印象的なシンプルかつ、清楚なドレス姿だ。
「ジーンも、格好良い…」
ジーンはアリシアの髪の様なシルバーのテールコートを着ている。
「跡が残っちゃったな」
ジーンがアリシアの腕の傷跡を見て言う。レースで隠されているので、よく見ないと分からないが、湖に落ちた時の裂傷だ。
アリシアを落馬させて湖に落としたのは、王太子妃の座を狙うエバンス侯爵家が雇った輩だったと後に判明した。伯爵家の令嬢を誘拐した件から様々な罪が発覚し、エバンス侯爵家が取り潰されたのが春の頃の事だ。
「私は気にならないわ。ジーンは気にする?」
「全然」
二人は微笑み合って腕を組む。
そして、教会の扉が開いた。
13
お気に入りに追加
193
あなたにおすすめの小説
踏み台令嬢はへこたれない
三屋城衣智子
恋愛
「婚約破棄してくれ!」
公爵令嬢のメルティアーラは婚約者からの何度目かの申し出を受けていたーー。
春、学院に入学しいつしかついたあだ名は踏み台令嬢。……幸せを運んでいますのに、その名付けはあんまりでは……。
そう思いつつも学院生活を満喫していたら、噂を聞きつけた第三王子がチラチラこっちを見ている。しかもうっかり婚約者になってしまったわ……?!?
これは無自覚に他人の踏み台になって引っ張り上げる主人公が、たまにしょげては踏ん張りながらやっぱり周りを幸せにしたりやっと自分も幸せになったりするかもしれない物語。
「わたくし、甘い砂を吐くのには慣れておりますの」
ーー踏み台令嬢は今日も誰かを幸せにする。
なろうでも投稿しています。
今更ですか?結構です。
みん
恋愛
完結後に、“置き場”に後日談を投稿しています。
エルダイン辺境伯の長女フェリシティは、自国であるコルネリア王国の第一王子メルヴィルの5人居る婚約者候補の1人である。その婚約者候補5人の中でも幼い頃から仲が良かった為、フェリシティが婚約者になると思われていたが──。
え?今更ですか?誰もがそれを望んでいるとは思わないで下さい──と、フェリシティはニッコリ微笑んだ。
相変わらずのゆるふわ設定なので、優しく見てもらえると助かります。
結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた
夏菜しの
恋愛
幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。
彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。
そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。
彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。
いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。
のらりくらりと躱すがもう限界。
いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。
彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。
これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?
エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。
【完結】愛してるなんて言うから
空原海
恋愛
「メアリー、俺はこの婚約を破棄したい」
婚約が決まって、三年が経とうかという頃に切り出された婚約破棄。
婚約の理由は、アラン様のお父様とわたしのお母様が、昔恋人同士だったから。
――なんだそれ。ふざけてんのか。
わたし達は婚約解消を前提とした婚約を、互いに了承し合った。
第1部が恋物語。
第2部は裏事情の暴露大会。親世代の愛憎確執バトル、スタートッ!
※ 一話のみ挿絵があります。サブタイトルに(※挿絵あり)と表記しております。
苦手な方、ごめんなさい。挿絵の箇所は、するーっと流してくださると幸いです。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
とある虐げられた侯爵令嬢の華麗なる後ろ楯~拾い人したら溺愛された件
紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
侯爵令嬢リリアーヌは、10歳で母が他界し、その後義母と義妹に虐げられ、
屋敷ではメイド仕事をして過ごす日々。
そんな中で、このままでは一生虐げられたままだと思い、一念発起。
母の遺言を受け、自分で自分を幸せにするために行動を起こすことに。
そんな中、偶然訳ありの男性を拾ってしまう。
しかし、その男性がリリアーヌの未来を作る救世主でーーーー。
メイド仕事の傍らで隠れて淑女教育を完璧に終了させ、語学、経営、経済を学び、
財産を築くために屋敷のメイド姿で見聞きした貴族社会のことを小説に書いて出版し、それが大ヒット御礼!
学んだことを生かし、商会を設立。
孤児院から人材を引き取り育成もスタート。
出版部門、観劇部門、版権部門、商品部門など次々と商いを展開。
そこに隣国の王子も参戦してきて?!
本作品は虐げられた環境の中でも懸命に前を向いて頑張る
とある侯爵令嬢が幸せを掴むまでの溺愛×サクセスストーリーです♡
*誤字脱字多数あるかと思います。
*初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ
*ゆるふわ設定です
【完結】婚約者を譲れと言うなら譲ります。私が欲しいのはアナタの婚約者なので。
海野凛久
恋愛
【書籍絶賛発売中】
クラリンス侯爵家の長女・マリーアンネは、幼いころから王太子の婚約者と定められ、育てられてきた。
しかしそんなある日、とあるパーティーで、妹から婚約者の地位を譲るように迫られる。
失意に打ちひしがれるかと思われたマリーアンネだったが――
これは、初恋を実らせようと奮闘する、とある令嬢の物語――。
※第14回恋愛小説大賞で特別賞頂きました!応援くださった皆様、ありがとうございました!
※主人公の名前を『マリ』から『マリーアンネ』へ変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる