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王宮の庭にある東屋に用意されたお茶の席に着いて、シャーロットはユリウスを待っている。
座っていても足元まで隠れるドレスに、ショールを肩から掛けて、背筋を伸ばし、時折りテーブルの上に置いた紙袋に触れる。紙袋にはユリウスに渡す栞が入っているのだ。
そこへ侍女がやって来て
「ユリウス殿下は少し遅れられるそうです」
と告げる。
「はい」
シャーロットが頷くと、侍女は礼をして退がり、暫くするとトレイに紅茶のポットとティーカップを乗せてまたやって来た。
「殿下がお見えになるまで、苺のフレーバーティをお楽しみくださいませ」
紅茶をカップに注ぐとシャーロットの前に置く。
「ありがとう」
シャーロットはにっこりと侍女に笑い掛けた。
侍女が退がり、シャーロットは一人で紅茶を飲む。
暫くすると、異変が現れた。
ぶるぶると震え出し、自分で自分を抱く様に二の腕を押さえると、息を乱し、テーブルに倒れ込んだ。
「シャーロット様!どうされました!?」
控えていた騎士が駆け寄ると、シャーロットは震える手で騎士の腕を掴む。
「騎士様…」
シャーロットの頬は紅潮し、少し開いた唇からは荒い吐息が漏れ、潤んだ瞳で騎士を見上げる。
それはまるで欲情しているかの様で…
「騎士様…苦しい…」
しなだれかかるシャーロット。
騎士は口角を上げると
「お苦しいのですね。すぐに助けて差し上げます」
と言うと、シャーロットを抱き上げ…
…ようとした。
シャーロットを抱き上げるため、膝の下へ手を入れようとした騎士の視界で何かがキラリと光る。
「?」
騎士が視線を上げると、目前に剣先が見えた。
「!?」
更に視線を上げると、静かに怒りのオーラを発しながら目の前に騎士に向かって真っ直ぐに剣を突き付けるユリウスが立っている。
「ひぃっ!」
騎士はシャーロットを突き飛ばすようにして身体を離すと、尻餅をついて後ずさった。
「お前…」
そう呟いてゆらりと立ち上がったのはシャーロットだ。
「私のかわいい妹に何してくれようとしてるんだ!」
裾の長いドレスを捲り上げて、筋肉のついたふくらはぎを振り上げると、騎士の頸部を横から蹴り飛ばした。
ザザザッ。
と騎士が横っ飛びに倒れると、ユリウスは満足気に頷いて腰の鞘に剣を収める。
シャーロットは倒れた騎士に駆け寄ると、ローヒールの靴でその頭を踏み付けた。
「意外と別嬪だなあ」
と呑気に言いながら木の陰からグリフが出てきて、頭を踏みつけられた騎士の手首を身体の後ろで手早く縛る。
「だよな」
ユリウスも頷く。
「私も我ながらそう思う」
ドレスの裾を戻し、パタパタと手で叩きながら、ルーカスも頷いた。
-----
「ルーカス殿、スカート捲って帰ってくるんですもん。色々と台無しでしたよ」
ドレスをたくし上げて膝まで出しながらユリウスの部屋に入って来たルーカスを思い出し、メレディスが言う。
「歩きにくい」
ソファの後ろにメレディスと並んで立つルーカスは、今はもういつもの侍従の服装だ。
「それはそうでしょうけど…それにしても遠目には女性らしく見えましたけど、近くで見るとやっぱり肩とか腕とか…逞しかったですね…」
げんなりした表情で言うメレディスを「当たり前だろ」という表情のルーカスが横目で見た。
「あの紅茶に仕込まれていたのは…所謂『媚薬』だったんですか?」
ソファに座るシャーロットが少し言いにくそうにルーカスへ言うと、シャーロットの隣に座ったマリアが心配そうにルーカスを見上げた。
「ああ」
無表情で頷くルーカス。
「飲んで…大丈夫なんですか?」
マリアが上目遣いにルーカスを見る。
「飲んだ振りだから大丈夫だ」
ルーカスはほんの少し口角を上げてマリアに言った。
「声は?侍女や騎士に話してる声は女性のものでしたよ?」
メレディスが聞くと、
「声色だ。女性と子供と年寄りの声は、短い単語くらいなら出せる」
そうルーカスは言う。
「…そのスキルは必要ですか?」
訝し気にルーカスを見るメレディス。
「あって損はないぞ」
部屋の扉が開いて、ユリウスとグリフが入って来る。
シャーロットとマリアは立ち上がって礼を取った。
グリフはルーカスとメレディスの隣に並んで立つ。
「やはり、侍女はトレイシー・セルザム公爵令嬢が雇った者だった」
シャーロットの向かいに座って、ユリウスは言った。
王宮の庭にある東屋に用意されたお茶の席に着いて、シャーロットはユリウスを待っている。
座っていても足元まで隠れるドレスに、ショールを肩から掛けて、背筋を伸ばし、時折りテーブルの上に置いた紙袋に触れる。紙袋にはユリウスに渡す栞が入っているのだ。
そこへ侍女がやって来て
「ユリウス殿下は少し遅れられるそうです」
と告げる。
「はい」
シャーロットが頷くと、侍女は礼をして退がり、暫くするとトレイに紅茶のポットとティーカップを乗せてまたやって来た。
「殿下がお見えになるまで、苺のフレーバーティをお楽しみくださいませ」
紅茶をカップに注ぐとシャーロットの前に置く。
「ありがとう」
シャーロットはにっこりと侍女に笑い掛けた。
侍女が退がり、シャーロットは一人で紅茶を飲む。
暫くすると、異変が現れた。
ぶるぶると震え出し、自分で自分を抱く様に二の腕を押さえると、息を乱し、テーブルに倒れ込んだ。
「シャーロット様!どうされました!?」
控えていた騎士が駆け寄ると、シャーロットは震える手で騎士の腕を掴む。
「騎士様…」
シャーロットの頬は紅潮し、少し開いた唇からは荒い吐息が漏れ、潤んだ瞳で騎士を見上げる。
それはまるで欲情しているかの様で…
「騎士様…苦しい…」
しなだれかかるシャーロット。
騎士は口角を上げると
「お苦しいのですね。すぐに助けて差し上げます」
と言うと、シャーロットを抱き上げ…
…ようとした。
シャーロットを抱き上げるため、膝の下へ手を入れようとした騎士の視界で何かがキラリと光る。
「?」
騎士が視線を上げると、目前に剣先が見えた。
「!?」
更に視線を上げると、静かに怒りのオーラを発しながら目の前に騎士に向かって真っ直ぐに剣を突き付けるユリウスが立っている。
「ひぃっ!」
騎士はシャーロットを突き飛ばすようにして身体を離すと、尻餅をついて後ずさった。
「お前…」
そう呟いてゆらりと立ち上がったのはシャーロットだ。
「私のかわいい妹に何してくれようとしてるんだ!」
裾の長いドレスを捲り上げて、筋肉のついたふくらはぎを振り上げると、騎士の頸部を横から蹴り飛ばした。
ザザザッ。
と騎士が横っ飛びに倒れると、ユリウスは満足気に頷いて腰の鞘に剣を収める。
シャーロットは倒れた騎士に駆け寄ると、ローヒールの靴でその頭を踏み付けた。
「意外と別嬪だなあ」
と呑気に言いながら木の陰からグリフが出てきて、頭を踏みつけられた騎士の手首を身体の後ろで手早く縛る。
「だよな」
ユリウスも頷く。
「私も我ながらそう思う」
ドレスの裾を戻し、パタパタと手で叩きながら、ルーカスも頷いた。
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「ルーカス殿、スカート捲って帰ってくるんですもん。色々と台無しでしたよ」
ドレスをたくし上げて膝まで出しながらユリウスの部屋に入って来たルーカスを思い出し、メレディスが言う。
「歩きにくい」
ソファの後ろにメレディスと並んで立つルーカスは、今はもういつもの侍従の服装だ。
「それはそうでしょうけど…それにしても遠目には女性らしく見えましたけど、近くで見るとやっぱり肩とか腕とか…逞しかったですね…」
げんなりした表情で言うメレディスを「当たり前だろ」という表情のルーカスが横目で見た。
「あの紅茶に仕込まれていたのは…所謂『媚薬』だったんですか?」
ソファに座るシャーロットが少し言いにくそうにルーカスへ言うと、シャーロットの隣に座ったマリアが心配そうにルーカスを見上げた。
「ああ」
無表情で頷くルーカス。
「飲んで…大丈夫なんですか?」
マリアが上目遣いにルーカスを見る。
「飲んだ振りだから大丈夫だ」
ルーカスはほんの少し口角を上げてマリアに言った。
「声は?侍女や騎士に話してる声は女性のものでしたよ?」
メレディスが聞くと、
「声色だ。女性と子供と年寄りの声は、短い単語くらいなら出せる」
そうルーカスは言う。
「…そのスキルは必要ですか?」
訝し気にルーカスを見るメレディス。
「あって損はないぞ」
部屋の扉が開いて、ユリウスとグリフが入って来る。
シャーロットとマリアは立ち上がって礼を取った。
グリフはルーカスとメレディスの隣に並んで立つ。
「やはり、侍女はトレイシー・セルザム公爵令嬢が雇った者だった」
シャーロットの向かいに座って、ユリウスは言った。
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