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番外編4
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3-上
「あら、イヴァン様?」
アメリアは客人を迎えるため入った応接室に意外な人物がいたので、挨拶もしない内に思わずその人を呼んでしまう。
「アメリア様お久しぶりです」
「ご挨拶もせずに申し訳ありません」
「いえ。こちらこそ突然訪ねて申し訳ありません」
互いに頭を下げ合う。
イヴァンがローゼに会いに来るサイオンに伴いブラウン家を訪れていたのはローゼが学園への入学準備で王都のヴィーナス家へ行くまでだったので、イヴァンは約五か月ぶりにブラウン家を訪れた事になる。
「学園は昨日から夏季休暇に入ったのでしたよね?ローゼからは二週間王都で過ごしてからこちらへ戻ると連絡もらいました。その時はサイオン殿下も共においでになるそうなので、イヴァン様もその時こちらに来られるのかと思っておりましたが…」
ローゼが戻って来るのも楽しみだが、密かにイヴァンが訪れるのを楽しみにしていたアメリアは、不自然にならないように気をつけながらイヴァンを窺うように言う。
「はい。二週間後にはまたお邪魔いたしますが…今日はどうしてもアメリア様にお会いしたくて」
「…私に?」
「不躾な事を申しますが…どうか笑わずに聞いてください」
「はい」
真剣な表情のイヴァンに、アメリアはこくんと息を飲んだ。
「アメリア様、私と、結婚していただけませんか?」
-----
「で、何て答えたの?」
アメリアの向かいのソファに座った女性がニヤニヤしながら言う。
「…私がぽかんとしている間に『二週間後に来た時に返事を聞かせてくれ』って言って帰っちゃったの」
「で、どうするの?」
「結婚とか…考えた事もなかったからどうしたら良いのか…しかもイヴァン様、サイオン殿下と同じ歳なのよ?」
「そうね」
「『そうね』じゃないわ。ステラ。サイオン殿下と同じ歳って事は、ローゼの…娘の旦那様になる人と、同じ歳って事なのよ?」
ステラと呼ばれた女性は、アメリアと同じ歳の幼なじみだ。
アメリアがローゼを忘れた事も、それを思い出していた事も、全てを知っている友人であり、ローゼとローゼリアの秘密ももちろん知っている。
「イヴァン様とサイオン殿下って、私たちより何歳下になるの?」
「八歳」
「あら、そんなもの?」
「そんなもの?かしら?」
「だって…貴族ならもっと歳の差のある夫婦だっているでしょ?」
「そりゃあ…でも母娘で旦那様が同じ歳っておかしいわ」
唇を尖らせるアメリア。
「でもアメリア、イヴァン様の事好きなんじゃないの?」
「え?」
瞠目するアメリア。ステラは首を傾げる。
「イヴァン様が来られるの、楽しみにしてるじゃない。いつも」
「それは、私が家族以外の人と話す機会がないから楽しみなだけで、好きとかじゃ…」
お兄様とローゼ、屋敷の者以外と話しをするのってステラとイヴァン様くらいだし…
「それに…」
「それに?」
「イヴァン様は…ローゼを好きだったのよ?」
「ローゼちゃんが好みなら、アメリアの事も好みでしょうね」
ステラはさらりと言う。
「…でも、似てるからって…」
ローゼがサイオン殿下と交際してるから、ローゼの代わりって事?だったら…嫌だわ。
「ところでイヴァン様ってどんな家の方なの?伯爵家の令嬢を娶れるような家?」
「令嬢って…私、結婚歴のある子持ち女よ?」
「まあでも令嬢には違いないわ」
「…侯爵家に縁があるお家らしいわ。お祖父さんが先々代の侯爵の弟さん…とか。土地の管理や不動産業などをされていて、お兄様が事業を引き継ぐんですって」
「ぶっちゃけ、お金持ちなのね?」
「ステラ…下世話よ」
「あら、大切な事よ。特にアメリア、貴女はお金で人生変わったんだから」
アメリアは親の借金のカタとしてローゼとクレイグの父と結婚したのだ。
「それはまあ…」
「それにアメリアだってまだ若いんだし、結婚する事、真剣に考えた方が良いわ」
「そうかしら?」
私が、結婚して、幸せに…なるの?
「アメリアの初恋はシドニー様よね?」
「あれは初恋って言うか、小さい子が『とうさまと結婚する』って言うのと同じよ…」
小さい頃お兄様が大好きだったな。そういえば。
だからこそ、お兄様を離婚に追い込んだ自分が許せなくて、それも心を病んだ一因になったのね。
「まあね。そのシドニー様は最近デレデレなんでしょう?」
「そうなの。もうリリー様と結婚するって決めてからは甘々デレデレよ」
苦笑いのアメリア。
「つまりね、公爵様からは勘当同然の娘とは言え、兄が公爵令嬢を娶り、義理の娘が王太子妃になろうとしてるアメリアだもの、ローゼちゃんとサイオン殿下の婚約が発表されると、きっと沢山の縁談が来るわよ」
「ええ!?」
驚くアメリアに、ステラは人差し指を立てて言った。
「ブラウン伯爵家は、今一番の注目株なの。中でもいずれは王妃の母となるアメリアは独身。アメリアを得て、中央への道にしたい貴族は沢山いるの。だからこそアメリアはそういう事に興味のない男性と、早く結婚した方が良いと思うわ」
「あら、イヴァン様?」
アメリアは客人を迎えるため入った応接室に意外な人物がいたので、挨拶もしない内に思わずその人を呼んでしまう。
「アメリア様お久しぶりです」
「ご挨拶もせずに申し訳ありません」
「いえ。こちらこそ突然訪ねて申し訳ありません」
互いに頭を下げ合う。
イヴァンがローゼに会いに来るサイオンに伴いブラウン家を訪れていたのはローゼが学園への入学準備で王都のヴィーナス家へ行くまでだったので、イヴァンは約五か月ぶりにブラウン家を訪れた事になる。
「学園は昨日から夏季休暇に入ったのでしたよね?ローゼからは二週間王都で過ごしてからこちらへ戻ると連絡もらいました。その時はサイオン殿下も共においでになるそうなので、イヴァン様もその時こちらに来られるのかと思っておりましたが…」
ローゼが戻って来るのも楽しみだが、密かにイヴァンが訪れるのを楽しみにしていたアメリアは、不自然にならないように気をつけながらイヴァンを窺うように言う。
「はい。二週間後にはまたお邪魔いたしますが…今日はどうしてもアメリア様にお会いしたくて」
「…私に?」
「不躾な事を申しますが…どうか笑わずに聞いてください」
「はい」
真剣な表情のイヴァンに、アメリアはこくんと息を飲んだ。
「アメリア様、私と、結婚していただけませんか?」
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「で、何て答えたの?」
アメリアの向かいのソファに座った女性がニヤニヤしながら言う。
「…私がぽかんとしている間に『二週間後に来た時に返事を聞かせてくれ』って言って帰っちゃったの」
「で、どうするの?」
「結婚とか…考えた事もなかったからどうしたら良いのか…しかもイヴァン様、サイオン殿下と同じ歳なのよ?」
「そうね」
「『そうね』じゃないわ。ステラ。サイオン殿下と同じ歳って事は、ローゼの…娘の旦那様になる人と、同じ歳って事なのよ?」
ステラと呼ばれた女性は、アメリアと同じ歳の幼なじみだ。
アメリアがローゼを忘れた事も、それを思い出していた事も、全てを知っている友人であり、ローゼとローゼリアの秘密ももちろん知っている。
「イヴァン様とサイオン殿下って、私たちより何歳下になるの?」
「八歳」
「あら、そんなもの?」
「そんなもの?かしら?」
「だって…貴族ならもっと歳の差のある夫婦だっているでしょ?」
「そりゃあ…でも母娘で旦那様が同じ歳っておかしいわ」
唇を尖らせるアメリア。
「でもアメリア、イヴァン様の事好きなんじゃないの?」
「え?」
瞠目するアメリア。ステラは首を傾げる。
「イヴァン様が来られるの、楽しみにしてるじゃない。いつも」
「それは、私が家族以外の人と話す機会がないから楽しみなだけで、好きとかじゃ…」
お兄様とローゼ、屋敷の者以外と話しをするのってステラとイヴァン様くらいだし…
「それに…」
「それに?」
「イヴァン様は…ローゼを好きだったのよ?」
「ローゼちゃんが好みなら、アメリアの事も好みでしょうね」
ステラはさらりと言う。
「…でも、似てるからって…」
ローゼがサイオン殿下と交際してるから、ローゼの代わりって事?だったら…嫌だわ。
「ところでイヴァン様ってどんな家の方なの?伯爵家の令嬢を娶れるような家?」
「令嬢って…私、結婚歴のある子持ち女よ?」
「まあでも令嬢には違いないわ」
「…侯爵家に縁があるお家らしいわ。お祖父さんが先々代の侯爵の弟さん…とか。土地の管理や不動産業などをされていて、お兄様が事業を引き継ぐんですって」
「ぶっちゃけ、お金持ちなのね?」
「ステラ…下世話よ」
「あら、大切な事よ。特にアメリア、貴女はお金で人生変わったんだから」
アメリアは親の借金のカタとしてローゼとクレイグの父と結婚したのだ。
「それはまあ…」
「それにアメリアだってまだ若いんだし、結婚する事、真剣に考えた方が良いわ」
「そうかしら?」
私が、結婚して、幸せに…なるの?
「アメリアの初恋はシドニー様よね?」
「あれは初恋って言うか、小さい子が『とうさまと結婚する』って言うのと同じよ…」
小さい頃お兄様が大好きだったな。そういえば。
だからこそ、お兄様を離婚に追い込んだ自分が許せなくて、それも心を病んだ一因になったのね。
「まあね。そのシドニー様は最近デレデレなんでしょう?」
「そうなの。もうリリー様と結婚するって決めてからは甘々デレデレよ」
苦笑いのアメリア。
「つまりね、公爵様からは勘当同然の娘とは言え、兄が公爵令嬢を娶り、義理の娘が王太子妃になろうとしてるアメリアだもの、ローゼちゃんとサイオン殿下の婚約が発表されると、きっと沢山の縁談が来るわよ」
「ええ!?」
驚くアメリアに、ステラは人差し指を立てて言った。
「ブラウン伯爵家は、今一番の注目株なの。中でもいずれは王妃の母となるアメリアは独身。アメリアを得て、中央への道にしたい貴族は沢山いるの。だからこそアメリアはそういう事に興味のない男性と、早く結婚した方が良いと思うわ」
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