晴れの日は嫌い。

うさぎのカメラ

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曇りの日の日常勉強。1

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 後夜祭をサボってしまった杉原先輩と私は堂々と正門から下校なんて出来ませんでした。
 後ろめたいと言ったのは私なのですが。
 業務員用の出入り口から人目を忍んで学校から下校することにしました。
 夜になり辺りはすっかり暗くなっていました。
 私は自宅に遅くなると一本電話で連絡を入れました。 
 家政夫長はとても心配していてくれたらしく『今どちらのお出でですか?』と聞くので『後夜祭が長引いてしまい、こんなに遅くなってしまいました』と結局嘘をついてしまいました。
 ですがそう口にしたら、安心してくれました。
 更に、杉原先輩が電話を替わってくれて『自分が責任を持って自宅まで送りますので、安心してください』と付け足してくれたので、私も随分と夜道を安心して歩くことが出来そうな気持ちになりました。
 杉原先輩は学校のある日の早朝は必ず私の自宅まで迎えに来て、下校も送ってくれると言ってくれました。 
「先輩は何故そこまで私に気遣ってくれるんですか?」
 疑問に思ったので私は聞いてみたら、杉原先輩は『綺麗』な笑顔で、 
「そりゃ好きだからだよ。それ以外何かあるの?」
(……あまり『好き』と言わないでください!!
 嬉しいです。
 嬉しいのですが、毎回毎回言われていたら何故か聞いているこちらの心臓のが早く鳴り出して、ショック死してしまいそうで困るんです……。 
「叶は本当に、後夜祭の映画が見たかったわけ?」 
「……?そうですね、映画はたまにDVDを家で観るくらいなので、大きなスクリーンで映画が見たいです」 
 私は素直に答えたのに先輩は、 
「とか言ってるけど、自宅にそういう設備くらいあるんじゃないの?お屋敷だし」 
 『スクリーンとかありそう』と笑ってますが、そんなものがあるわけがありません。
 私は真面目に答えました。 
「いえ、私の家は豪邸のような『綺麗』な家ではないんです。元々祖母の持ち家で、どちらかというと『古い洋館』みたいな家でしょうか?」
 私がそう説明すると、先輩に間が出来てしまいました。 
「……そうなんだ?金持ちってみんなそんなもんだと思ってた」 
 先輩は笑っています。 
 何か私は変なことを言ったのでしょうか? 
「じゃあさ、明後日は一緒に映画でも観に行く?」 
「えっ?!連れていってくださるのでしたら、是非行きたいです!!連れて行ってください!!」 
 先輩のそのお誘いが嬉しくて、私は即答していました。
 純粋に映画を観に行けるのも嬉しいですが、杉原先輩と出掛けられるのも嬉しかったんです。
 先輩は浮かれている私にビシッと付け加えました。
「そう。なら明後日は、叶は俺とデートだからね?」 
 『遊びにいくわけだけど、ただの遊びじゃないよ。勘違いしないでね?』と、付け足されました。 
「デート……ですか?」 
「でも、あくまで一般庶民のデートだからね!!」
「はいっ!!」
 私は勢いに負けて返事をしました。
 しかし次の瞬間、私はとんでもないことに気付きました。
 私は友達と出掛けた経験がないので、どんな服を着ていけば良いのか分からなかったんです。
 杉原先輩と映画に行くことに楽しみでしたが、私はデートの前に友達と出かけた経験もないので、本当に困っていました。 
(よく考えてみたら、私はフォーマルと制服と部屋着とパジャマくらいしか持っていないです)
 それに相談出来る相手もいなくて、結局杉原先輩に頼ってしまうわけなんです。 
「あの、先輩。そのデートについて教えていただきたいことがあるんですけど……」
 私が先輩を見上げながらそう言うと、
 「うん、いいよ。じゃあ明日の朝は少し早めに叶ん家の前に迎えに行くから」
 と、優しい返事を返してくれました。


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