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3部、1章

飾り気のない剣の狙い

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 轟音と衝撃が水中を揺らした。俺は氷により盾を作ったが一瞬で粉砕され、ゴールドボーイが黄金の金貨の幕により緩和したがなお押され。スカーフによる囲いによりようやく止まった。

 衝撃が収まると、俺はスカーフたちを元に戻し光の方を見た。高い水温により痛みを感じる皮膚に火傷がないのは、リヴァイアサンの能力で水になっているおかげだ。

 かなり遠くに飛ばされているのに見える赤い光。光は衰えずに輝き続けている。火もないこの水中でどれほどの熱量を持っているのか。水温ですら限界温度なのに。

「無事かな二人とも」

「そんなこと言っている場合か?」

「スカーフ。俺は良いけどあんな攻撃では二人とも……」

「狙われているのは悠人だぞ?」

 急に水温が冷たくなった。前に光る爆発の光が縦に割れている。エルリックさんは生きている。安心したその時、微かな音と共に目の前に剣が飛んできた。リヴァイアサンの体なら大丈夫だと思えた、それがあの恐ろしい飾り気のない剣でなければ。

 ものすごい速度で飛んできて、目の前に来るまで見えなかった飾り気のない剣。回避は間に合わない。

 ザシュッ!

 投げられた剣は刺さった。でもそれは俺ではない。

「リヴァイアサン、なぜ?」

 水中を高速移動してきた彼女は俺の前に立ち、お腹に突き立てられた剣が深々と刺さっている。

「他者の子供であれ、子供が傷つくのを見たく……。ありませんから」

「今すぐヒールを!」

「優しいところが一番似てる……。もう息子にしたい」

「やめた方がいいよリヴァイアサン。彼女を怒らせない方がいいからね」

 俺の背後から声がした。振り返ろうとしたが、振り返ることができない。体が動かないからだ。俺は自分の胸元から突き出した剣を見た。

「なんだと……!」

「ふふっ。気づく前に刺しちゃった」

「なぜこんな事を……?」

「それはね、こうするためだよ」

 エルリックさんは俺に刺さった剣を振り下ろした体は引き裂かれる。

「ぐぁぁぁっ! あれ痛みがない?」

「よく体を見てごらん」

「怪我もない! 心臓貰うとか言ってましたよね?!」

「あれはリヴァイアサンを怒らせるための嘘だよ。半分はね」

「もしかして俺もう心臓ないんですか?」

「有るよ。試しに開いてみようか?」

「遠慮しときます!」

 確かに体に血が巡っているのがわかる。あの飾り気のない剣で切られたけど生きている。何も問題がないことが逆に怖いんだが!
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