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2部3章

強大な力

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 俺たちに覆い被さった大きな影。ライズさんの身長はさらに大きくなっていく。畑に揺れる背の高い草が彼の膝丈ほどの高さになった。俺たちにとっては腰までの高さの草だ。

「降参しますか?」

「お堅そうな騎士だと思っていましたが、冗談がお上手で!」

 一本となったナイフでライズさんに切り掛かったセレスト。その一振りをライズさんは防いだ。それも指先で。

「上手い魔法の使い方ですね。魔法封じを纏うというものは」

「体に纏うのは見せてないはずですけど?」

「案外やってみたらできるものでして。こうしてみたり」

 ライズさんの指先から炎が放たれた。セレストはナイフで炎を切り伏せる。

「見ただけでできるのはおかしいからね!」

「こんな高度な魔法を扱えるあなたも、やはり最強なのでしょう?」

「……!」

 セレストは接近してナイフを振るう。さっきのような余裕な笑みがなく、引きつった緊張がセレストの顔に現れている。彼女はまだ、自分が最強だと思えないのだ。エルリックさんがいるから。

 ライズさんが剣でナイフを受け、振るうたびに炎で追撃をしていく。セレストはそれをナイフで対処する。度重なる打ち合いにより草原は焼け、炎が広がる。俺は水で消化しながら、二人を見守った。

 ふと疑問が湧いてきた俺。

「剣よく持てますね……」

 剣を指二つで挟んで持っているがもう剣より指の方が太い。

「ああ! 剣のサイズを変え忘れていました」

 剣が大きくなり、ライズさんの手に馴染んだ。

「楽しくてつい」

「セレストごめん。指摘しなければ良かった!」

 ライズさんが振り翳した巨大な剣がセレストに当たった。受けたナイフごと彼女を弾き飛ばしてしまう。畑の草が一直線の凹みとなり伸びていく。

「セレスト!」

「ご安心を。加減はしました」

「俺のせいで……!」

「きっと生きておられます。魔力が消えていませんので」

「良かった。でも、シンくんは……」

「その件ですが。取りやめします」

「えっ?」

「急に決めてしまったのもありますが。シンが行きたくないのなら、私も無理強いできません」

「いいんですか?」

「はい。お嬢さんの真摯な思いに私は負けたのです」

「良かった。無駄にならなくて」

 ライズさんは俺の方に歩いて寄ってくると跪き手を差し出した。

 俺は握手しようと手を伸ばした時、相手の手が消えた。それどころか先ほどまで威圧的に存在したライズさんそのものが目の前にも、視界のどこにもいなくなってしまった。
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