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2部3章

魔王の件

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光輝く宝石の小屋から出た俺たちは、辺りが一気に暗がりに戻ったことで視界が悪くなった。キャンプの灯りはあるのだが。

 宝石の小屋から出たことで寒さを感じた。ダンジョンに風はほとんどないが、流れ落ちる水が滝となり水飛沫と微風を吹かせている。

「ごめんな、アザレア。魔神の盾の事とか、アザレアを間違えて呼んでしまったこととか」

「構いません。良い出会いがありましたし」

「俺は魔王にならないけど、良いのか?」

「良いのです。使った時点で仮契約していますから、ほぼ魔王なので」

「罠だったか、でも仕方なかったしな……」

「悲観せずとも良いのです。善人も魔王になる資格がありますから」

「はい?」

「そちらの世界の政治家みたいなものですよ。資格があれば魔界を統治して貰えるだけなので。方針とかは魔王様が決めるのです」

「なんだ、そんな気軽なものなら……」

「なったらエルリックに狙われますがね」

「やっぱり辞退します!」

「悠人は、もう目をつけられているでしょう?」

「でも、セレスト。勇者たちは魔王を倒すんだろ?」

「お父さんは倒さなかった魔王もいるって言っていたよ。魔王次第で選んでいたのかもね」

「そうか良かった」

「良くはないぞ、悠人」

「リュセラ。でも、天理火を満足させるにはこうするしか」


「放っておけば僕がやったのだが。凛音もいたし、守るために」

「そうじゃん!」

 前からやってきたリュセラは杖をしまっていた。戦う気はないようだ。

「悠人、魔王になる事はな。勇者たちや他の候補者に狙われるって事だ。だから僕は止めたんだが……」

「そう言ってくれよ!」

「平気です、魔王様。私は呼べば現れます。こんな扱いやす……。優しい魔王様を失うわけには参りませんから!」

「利用しようとしてない?!」

「本契約すれば、裏切りませんよ?」

「それはそれで、なんかやだな……」

「では、魔界の方針だけお教えください」

「あー。取り敢えず人間と仲良くね」

「畏まりました。他生物から略奪しますね」

「やめて! 隣人に優しく、命を大事に!」

「むっ、上手い言い回しですね。変更はいつでも可能ですよ」

 アザレアは笑顔で消えた。

 予期せずして魔王になってしまった俺。天理火を満足させる事が出来たものの、状況悪化してない?
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