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2部3章

欲しいもの

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輝く狐、天理火。その輝きは彼らが乗っている宝石の手の上で眩いほどに満ちている。ここは暗がりのダンジョン なのだが、俺はもう明かりに慣れてきた。


「よかった。申し訳ない……」

「無事だ。盾の中ほどまでこいつの足が沈んで来ているが」

「ヤバすぎる!」

「なに、再生できるからな!」

「じゃあ粉砕スル」
 
 二人の天理火は片足で盾を叩いた、一瞬で粉々に。

「魔神の盾ー!」

「平気です魔王さま。魔神さまの力を信じましょう。あそこまで壊されたの初めてですが……」

「不安になるようなこと言わないでくれ!」

 宝石の手から歩いて降りてきた天理火は俺の方を見た。尻尾を立て、尻尾の先端から炎が溢れ出た。

「まずい!」

 俺は急いでアザレアの前に立った。炎は俺めがけて放たれて俺が炎の熱に身構えた瞬間に目の前に落下し収束した。焚き火のように。

「そこなドラゴン。ワレは悠人と話をする。囲いを作れるか?」

「あ、はい」

 ソフィーナは俺の周りに宝石の小屋を作り上げた。空気の抜ける小窓もつけて。


 天理火は小屋の中に入ってきて、俺たちの前に座った。焚き火を挟んで対面するが先ほどの高熱は感じない。

 俺は一先ず、セレストとアザレアの前に居る。攻撃されるかもしれないと思ったから。

「なにか、ご用でしょうか?」

 神さま相手なので、俺は腰が引けてしまった。

「……ヤロウ!」

「ひっー!」
 
「褒美をヤロウ!」

「褒美ですか? ありがたいです。でも、何か対価とか……」

「無いぞ。ワレを信仰してくれれば。信仰が途切れたら祟るが」


「それって呪いと同じでは!?」

「冗談はよそうか。ここまでのアソビでワレは満足した。対価無しでなにか物を与えてやる」

「本当ですか! じゃあ、最新のフードプロセッサーとか」

「家電屋に頼め」

「では、カメラの手入れセットとか……」

「それは安いのを自分でカエ」

「スマホは! スマホに何かないの!」

 話を聞いていたのか、俺のスマホが話しかけてきた。でも、スマホに何を買えば喜ぶか思い浮かばないが。

「スマホは、給料入ったら……。何か欲しい?」

「私になにか必要な物……。ケースもあるし、心配症な悠人が奮発したガラスフィルムも。スマホクリーナーは?」

「有るぞ。百均製使い捨てスマホクリーナーが!」

「何もないじゃない!」

「コンッ!」

 天理火が咳払いをしたので二人して黙る。でも、欲しいものが尽きたのはスマホだけではない。俺も何が欲しいか考えてなかった。奇跡の破片で叶える願いも特に無かったし。
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