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2部3章

自衛隊の実力

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 俺の目の前に立ったユウキさん。いつもの明るい表情が消えて、冷静にこちらを観察している。

「悠人君、種明かししとこっか」

「気配がなかった事ですか?」

「そうそう。一応フェアに。俺あんまり戦ってなかったし」

「でも、失中魔法って当たらなくするんですよね?」

「そ。もちろん、相手の意識も俺に向かなくなる。俺に意識が当たら無ければね!」

 ユウキさんはまた消えて、俺は背後から打撃を受けた。胴に痛みが有ったが、振り向いても相手の姿がない。

「どっちにしろズルい、じゃないですか!」

 俺は水を生成し壁を作った。側に居るセレストも内側に。これで侵入できない、入ろうとした瞬間に見えるからだ。

「それずっるいっす。大尉!」

 エリカ大尉は俺たちの方を指差した。

「却下」

 水の壁が消滅した。跡形もなく、破られたわけでもない。

「魔法の無効!」

「その通りです。これで条件は同じでしょう?」

「なら! ここにあらずの加護」

 側にいたセレストは、一瞬でエリカ大尉の目の前に行き拳を付き出した。

 それに対して、エリカ大尉は手で受け止めた。

「あり得ない。非力にあらずの加護で、遥かに強くなった私を……!」

「はい。ですので命令しました、空気よ壁となれと」

「めちゃくちゃね! それはあらずの加護!」

「却下! お互い様!」

 魔法の無効同士の衝突により二人は弾かれたが体制を立て直して向き直る。

 俺の方も見えないユウキさんから攻撃を受ける。

「接触できれば、捕まえられるのに!」

「狙った時点で俺には当たらないっす」

「なら、こうだ!」

 俺は大量に水を放出した。でも、量は抑えた。エルドラスの事がちらついたからだ。

「そんな量じゃ全体攻撃にならないっすよ?」

「そうですね! それが狙いならば!」

 俺は水を操作して、いくつもの竜の顔を作る。それをエリカ大尉へと放った。

「その手は効きません」

 エリカ大尉が指先を向けたときに、セレストはそれに合わせてエリカ大尉に指を向けた。

「却下!」
「それはあらずの加護!」

 エリカ大尉の魔法は打ち消され、俺の水の竜がエリカ大尉に噛みついた。もちろん手加減してある。ただ、捕まえられればいい。両手をふさぎ、体も固定した。

「ユウキ!」

「分かってるっす!」

 水を操っている俺の側にユウキさんが現れ攻撃を仕掛けてきた。俺は回避できない。回避する必要がなかったのだが。

 ユウキさんの腕をセレストが掴み、投げた。片手で難なく。

「ここにあらずの加護で転移したの。あなたが相手を認識してなければ失中魔法は発動しない」

「俺の弱点初めて知ったっす……」
 
 エリカ大尉を捕縛し、ユウキさんとセレストの一騎討ちに持ち込んだ。これからどうするか考えていた俺にエリカ大尉が声をかける。

「我々の敗けを認めよう。ありがとうございます。魔法についてもっと深く知ることができました」

 訓練は無事に終わった。俺たちは勝てたが、エリカ大尉たちが武器を使わなかったからなのかもしれない。
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