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2部3章
決着
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我が身に迫り来る針の生えた吊り天井。穏やかに笑うエルリックさん。
「こうなったら、もっと強い氷で対処を……!」
俺は何度も氷を厚く頑丈にして柱にしたが全て砕かれてしまう。リリックさんはというと考え込んだまま懐中時計を持っている。
「儂も遅延で五重時間障壁を張っておく。対処まで時間を稼いでくれ」
「分かりました!」
柱を何度作っても砕かれるだけ、しかも天井の落下が止まっている様子もない。俺は水筒に手を掛けた。新しい魔法ならもしかしたらと思ったからだ。だが、水筒が消えていた。
「お探しのものはこの水筒かな?」
エルリックさんの手には俺のコーヒーの入った水筒がある。
「エルリックさん、いつも手出ししないのに……!」
「君の魔法を見ていたら余りに万能過ぎると思ってね。悠大もそうだが」
「俺それがないと魔法使えないんですよ!?」
予備の水筒があることは黙っていよう。
「大丈夫、悠人くんだけは追い込む事にしたんだ」
「何で?」
「良い経験をして強くなってほしいから」
「悪い体験ですけどー! そんな横暴な!」
すると迫り来る吊り天井の速度が上がった。すでに俺の頭上まで来ている。慌てて手で支えた。早い速度は一端止まったが動きは止まらない。
「ぐぐっ……きつい」
リヴァイアサンの力なのか、腕力で結構止めることが出来ている。針は痛いが刺さってない。
「儂より長く止めとるんじゃけど……」
リリックさんも懐中時計を用い続けている。それでも落下は止まらない。俺は必死に力を込めた。
「止まれ……。止まれーー!」
すると、天井がみんなを守る丸い障壁と衝突し止まった。
「良かった、ちゃんと手加減して……」
「嘘じゃろ……。儂の百年……。少年、周りを見ろ」
俺は他の物に目を向けてみた。砕けた氷のかけらが浮いている?
「魔法の進化。ようこそ、最強の魔法使い! 君は時を止めたんだ」
俺は釣り天井から手を離したが、動かず止まっている。
「俺も、出来ちゃった……」
吊り天井が止まって安堵した俺の前に、一瞬で現れたエルリックさん、手にはあのシンプルな剣が。
「さあ、もっと追い詰めようか!」
振り下ろされた剣はなんの変化もなくただ武器を扱うのと変わらない。けど、空気を切る音すらしない。底知れない恐怖が沸いた、その瞬間だった。
ザシュッ!
剣の刺さる音がした。俺が見たのはエルリックさんの背後にリリックさんがいて、彼の短剣がエルリックさんを貫いていること。
「唯一の隙だった、封印!」
魔法陣や幾何学模様が現れたのを見たエルリックさんは初めて焦りの顔となる。
短剣から現れた模様が収束し、それに吸い込まれていくエルリックさん。体が縮む、縮小していく。
「勝った。この封印術は体に触れたら解除できん! 一時間くらい封印してから解除してやろ……!」
エルリックさんは手に持つ剣を用い、自らの体を切り抜いた。その部位は心臓だった。抜かれた心臓は封印術に吸い込まれ消えた。
彼の残った体は何事もなく立っている。心臓もなく。
「ここでバレてしまうとは、リリック流石だね。君に試練は必要ないだろう」
「エリックさん! 心臓が……」
「平気さ、僕は人間じゃないからね」
手を心臓のにかざしたエルリックさん、離したときにはそこは元通り。思い返した言葉がある。
(セレストはこの程度では死なないよ。僕の子供なんだから)
千年生きているからなのか、恐ろしいほどに強いエルリックさん。でも、彼が人間でないなら、セレストは……。
俺は彼女に目を向けた。そこには目を見開き、呆然と怯えた表情をしつつ。ライフルを構えてエルリックさんを狙っているセレストがいた。
彼女なら魔法を無効にできるから。解いて隙をうかがっていたのだ。でも、最悪のタイミングだった。
「こうなったら、もっと強い氷で対処を……!」
俺は何度も氷を厚く頑丈にして柱にしたが全て砕かれてしまう。リリックさんはというと考え込んだまま懐中時計を持っている。
「儂も遅延で五重時間障壁を張っておく。対処まで時間を稼いでくれ」
「分かりました!」
柱を何度作っても砕かれるだけ、しかも天井の落下が止まっている様子もない。俺は水筒に手を掛けた。新しい魔法ならもしかしたらと思ったからだ。だが、水筒が消えていた。
「お探しのものはこの水筒かな?」
エルリックさんの手には俺のコーヒーの入った水筒がある。
「エルリックさん、いつも手出ししないのに……!」
「君の魔法を見ていたら余りに万能過ぎると思ってね。悠大もそうだが」
「俺それがないと魔法使えないんですよ!?」
予備の水筒があることは黙っていよう。
「大丈夫、悠人くんだけは追い込む事にしたんだ」
「何で?」
「良い経験をして強くなってほしいから」
「悪い体験ですけどー! そんな横暴な!」
すると迫り来る吊り天井の速度が上がった。すでに俺の頭上まで来ている。慌てて手で支えた。早い速度は一端止まったが動きは止まらない。
「ぐぐっ……きつい」
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「儂より長く止めとるんじゃけど……」
リリックさんも懐中時計を用い続けている。それでも落下は止まらない。俺は必死に力を込めた。
「止まれ……。止まれーー!」
すると、天井がみんなを守る丸い障壁と衝突し止まった。
「良かった、ちゃんと手加減して……」
「嘘じゃろ……。儂の百年……。少年、周りを見ろ」
俺は他の物に目を向けてみた。砕けた氷のかけらが浮いている?
「魔法の進化。ようこそ、最強の魔法使い! 君は時を止めたんだ」
俺は釣り天井から手を離したが、動かず止まっている。
「俺も、出来ちゃった……」
吊り天井が止まって安堵した俺の前に、一瞬で現れたエルリックさん、手にはあのシンプルな剣が。
「さあ、もっと追い詰めようか!」
振り下ろされた剣はなんの変化もなくただ武器を扱うのと変わらない。けど、空気を切る音すらしない。底知れない恐怖が沸いた、その瞬間だった。
ザシュッ!
剣の刺さる音がした。俺が見たのはエルリックさんの背後にリリックさんがいて、彼の短剣がエルリックさんを貫いていること。
「唯一の隙だった、封印!」
魔法陣や幾何学模様が現れたのを見たエルリックさんは初めて焦りの顔となる。
短剣から現れた模様が収束し、それに吸い込まれていくエルリックさん。体が縮む、縮小していく。
「勝った。この封印術は体に触れたら解除できん! 一時間くらい封印してから解除してやろ……!」
エルリックさんは手に持つ剣を用い、自らの体を切り抜いた。その部位は心臓だった。抜かれた心臓は封印術に吸い込まれ消えた。
彼の残った体は何事もなく立っている。心臓もなく。
「ここでバレてしまうとは、リリック流石だね。君に試練は必要ないだろう」
「エリックさん! 心臓が……」
「平気さ、僕は人間じゃないからね」
手を心臓のにかざしたエルリックさん、離したときにはそこは元通り。思い返した言葉がある。
(セレストはこの程度では死なないよ。僕の子供なんだから)
千年生きているからなのか、恐ろしいほどに強いエルリックさん。でも、彼が人間でないなら、セレストは……。
俺は彼女に目を向けた。そこには目を見開き、呆然と怯えた表情をしつつ。ライフルを構えてエルリックさんを狙っているセレストがいた。
彼女なら魔法を無効にできるから。解いて隙をうかがっていたのだ。でも、最悪のタイミングだった。
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