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2部3章

更なる試練

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 リリックさんは懐中時計を用い、何度も黒い炎の槍を突き刺し攻撃した。エルリックさんはその間も、笑顔でこちらに歩いてくる。いくつもの黒い炎の槍が突き刺さっているのに。

「素晴らしい! 時を止めるなんて並みの魔法使いでは出来ない。僕でも二時間はかかった」

「数百年の研鑽なんじゃけどー!」

 そして、俺たちの前に立ったエルリックさん。

「あり得ん。今度は急所も狙ったのに」

「約束は?!」

「すまない。儂も命が惜しい。だが、ここまでしても死なんとは……」

「大丈夫。死んでいたとも。臓器の時を止めてヒールしてから時を動かした。君のと同じにね。ドライでいい時止めの使い方だ」

「一瞬! 儂の五十年無敗の戦法が一瞬で対処に応用されたんじゃけどー!」

 リリックさんの嘆きは放置し、エルリックさんは周りを見てから俺に目を向ける。

「みんなも寝ているし、今のうちに悠人くんには更に上の試練を与えようか」

「味方ですよね?!」

「うーん。でも、このままじゃみんな潰れちゃうかもよ?」

 エルリックさん天井を指差した、そもそもここは縦穴で天井など無い。だが、知らぬまに現れた天井が壁に擦りなから落ちてくる。針つきで。

「時を止めて、魔法で吊り天井作っちゃった!」

「儂より高度!!」

「罠ってさ。頑張れば、ギリギリ生き残れそうな感じがいいよね」

「「死ぬわ!!」」

 俺は水を氷の柱に変質させて吊り天井を止めようとした。重さに耐えきれずに氷の柱はどんどん砕けてしまう。床一面に作ったのに。

 だが、氷の柱を作っている途中に味方の側の氷だけ丸く削れているのを見た。

「魔法で守ってくれているのか。なら乗ってやる」

 これからリュセラたちと共に旅をするには、強い必要がある。どんな時でも味方を守れるように。主にエルリックさんからかもだが。

 すると懐中時計を開いたリリックさんが叫んだ。

「五重時間障壁!」

 呪文のあと何かが起きたようには見えなかったが、吊り天井が停止している。

「天井の時間を五重の魔法で止めた」

「すごい、これなら……!」

 直ぐに吊り天井は落下し始めた。

「なぜじゃ!」

「ああ、時間を動かす魔法を使ったんだ。時間停止を鍛えようか、リック?」

「その呼び方は! 魔法帝国の特別クラスの時の!」

「そうだよ。たしかその時代はこんな顔だったかなあ?」

 エルリックさんは自分の顔を撫で下ろした。するとリリックさんは驚きの表情となる。顔が変身し老けた男性になったからだ。

「特別クラスの意地悪で試練大好きな邪悪な先生!」

「今と変わらないんかい!」

 恐るべきエルリックさんの魔法。リリックさんが時間を止めたのにそれをものともしない。というかこのハイレベルな魔法合戦。俺、役立たずでは?
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