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2部3章

強者

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 岩竜さんと俺は、エルリックさんの魔法により拘束された。電気の鎖により俺の体は削られていく。岩竜さんは特に拘束されても暴れているからまだ大丈夫だ。

「エルリックさん! 本当に岩竜さんの夫を倒したんですか!?」

「だとしたらどうする?」

 俺は水に命じた、極低温の氷のつぶてとなってエルリックを撃てと。数多の氷のつぶてがエルリックさんを襲う。
 
 降り注ぐ氷により辺りの熱気は消え失せて、冷気に満ちた空気の中、氷の砕ける音がする。エルリックさんの前には光の壁が二重になっている。一つの壁にヒビが入っていても攻撃は届かない。

「素晴らしい! 今、成長したんだ。君にはこのやり方が合っているみたいだね」

「人でなし! 俺は絶対に幸せを踏みにじることを許さない!」

「そのものが誰かの幸せを奪っていても?」

「……!」

「モンスターは人とは違う、考え方も力も。誰かに危害を加える者だっている。彼の場合は特になにもしてないけどね」

 エルリックさんは雷の鞭を解いた、次の瞬間には俺の目の前まで来て蹴りを入れた。

 吹っ飛ばされた俺は見た、岩竜さんの作り出した巨大な宝石を。それはエルリックさんに衝突した後に砕けて粉々になる。綺麗な宝石の中央に無傷で立っているエルリックさん。

「弱者の意見は誰も聞かないよ」

「なら俺は、ここで強くなる!」

 俺はエルリックさんに指先を向けて、雷神の力を貯めていく、周囲に雷が集まり、それを収束する。槍のように。壁だけでも壊せればいい。雷神の力が消えていくのを感じた。

「食らえ!」

 放たれた雷は周囲を巻き込み激しい音と地面を破壊しながら進み光の壁へと衝突する。

 一つ目の壁が砕け、消えた時に、俺は水を放った。全力でさっきよりも強く、細く、大量に。そして二つ目の光の壁は砕け。エルリックさんの腹部には多量の出血。

「エルリックさん!」

 戦いが止まった。俺は急いでエルリックさんに駆け寄った。

「とても強くなりましたね。悠大も安心できそうです……」

「ごめんなさい。俺……。凛音、ヒールを」

 上を見た俺の手をエルリックさんが掴んだ。

「もういいんだ。治したから」

「えっ?」

 すっと立ち上がったエルリックさんは岩竜さんの方を見た。

「夫さんは生きている」

「なぜ、夫は私の前に来てくれないの?」

「浮気したらしい」

 岩竜さんは目を伏せた。

「またか……。知ってたけど。百年に一度気持ちが冷めるとか言ってたし」

「えっ? でも、本気で戦ってませんでした?」

「言ったでしょう? 同格と遊ぶって」

「俺が止めた意味とは……」

 誰も死ななくて良かった。俺はめちゃくちゃ死にかけたけどな。
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