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2部3章

俺のやり方

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 デンジャラスモンキーの攻撃を水を操り防ぎながら、俺は周囲を見る。

 ダンジョンの壁から伸びた岩に広い窪みが幾つもあり、棚田のように広がっている。

 棚田の周りを囲う木々にデンジャラスモンキーがおり、彼らは全員で俺たちに石を投げ掛けている。

「俺、魔法意識して使うのほぼ初めてなんだけど。どうすれば?」

「今までどうやってたんだよ……。雷とか、火とか結構扱えてたろう」

「なんかノリで、威力だけ弱くしようとかしてたから」

「えー! 悠人の魔法強いのに、もったいない。私なら試し倒すのにー」

「相手が可哀想だし……。なるべく命の奪い合いはしたくない」

「甘い。世の中にはモンスターやエルリックのように危険な存在が一杯いる、手加減してたら命を落とすぞ?」

「そのくくりにエルリックさん入れるのか……」

「あの人は何でも試練与えてくるから、冒険者に恐れられてるの」

「ええ……。それは置いておくとして。結構キツイ」

 デンジャラスモンキーの攻撃はまだ続いている。俺は水を動かし石が当たらないようにするので手一杯。

「リヴァイアサンは水の温度も操れる! 絶対零度にして全て凍りつかせる事も出来る」

「それはダメだ、誰も傷付けたくない!」

「僕らが傷付くかもしれなくてもか?」

 意地悪に聞こえたが、リュセラの言うとおりこのままでは味方が傷付く。皆自分で何とか出来そうだけど。

「おお、それと。デンジャラスモンキーは魔法使ってくるぞ」

「無茶すぎ!」

 俺は見た。デンジャラスモンキーは呪文を唱え、手から火を出すのを。それも全員が俺たちに向けて火を放った。

 水が蒸発していく、追加で水を呼んでも消えてしまう。水の壁が無くなったら皆がに当たってしまう確率がなくもない気もするようで絶対に当たらないだろうけど。

 このままでは俺は弱いまま。仲間も藍華も守れないのは嫌だ。道具たちに頼ってたらダメだ。果てしない炎。複数の敵。熱された水、湯気。誰も傷付けない。

「お湯……。猿。そうか、これなら!」

 俺は水を倍増した。だが、デンジャラスモンキーの放った火は全体から来る。蒸発するほど熱くなるだろう。だから、水を増やしつつ温度を調整した。

「食らえ! これが俺の戦い方だ!」

 お湯となった水を全体に向けて放った。火を押し返し、猿たちを巻き込むと棚田に向けて流し込んだ。

「水がかかった位では奴らはびくともしないぞ?」

「そうだな、湯加減次第って所か」

「デンジャラスモンキーが動かなくなっただと?」

「ああ、温泉かー! 滝の側だから寒いし」

 デンジャラスモンキーたちの表情は柔らかくなる。棚田に貯まったお湯は丁度よい湯船となって肩まで浸かる者まで現れた。

「どうだ、全部捕まえたぞ。傷付けずに」

「悠大さんでもちゃんと攻撃したぞ、死なない範囲で」

「でも、食事以外の殺生をしなかった。悠大に似ているね」

「そうだな」

 珍しくリュセラはエルリックさんに反発しなかった。俺も父さんに似ていると言われて、ちょっと嬉しかった。

 同時にゲテモノでも気にせず食べている父さんを思い出した。俺には出来そうにないのでな。
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