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2部3章

草食

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 俺はリュセラとスマホの元に戻る。岩竜の少女を連れて。岩竜の少女は怯えからか俺の後ろに隠れているが、角があるので隠せてない。

「悠人、そいつは?」

「なんか、閉じ込められてるって言うから連れてきた」

「岩竜が、岩竜に閉じ込められている? それもそいつかなり強いぞ?」

「そうなのか?」

「ヒィィ! 世界を滅ぼせる程度です!」

「程度じゃないだろそれ……」

「敵意は無い、しかも魔法まで使えるのに魔力を使ってないから今は戦う気はないみたいだが」

「でもいつからここに?」

「十年ぐらい」

「それは辛いな。恐ろしいモンスターだな、こいつ」

「あっ。えっと、あんまりひどく言わないで下さい。お母さんなんです」

「より悪辣だ。見た感じお前は若い竜だ。十年も孤独を味わったなら、怒って良い」

 人間の少女にも見えるが角もある。

「えっ? 快適でしたよ。エサになる植物が一杯で……」

 岩竜の少女は俺を見てよだれを垂らした。彼女の目は俺の鞄に向けられている。

「待ってくれ。取った分は返すから」

「でも……。嗅いだことの無い香りで一杯ですね」

 ふらふらと近づいてきた岩竜の少女。俺は数多の調味料、スパイスコレクションが入った鞄を抱える。

 俺が静止しようと出したその手を捕まれた。彼女の背中の方から尻尾が延びてきて、鞄のチャックに触れる。

「止めてくれ。俺はこれがないと、不安になるんだ! ぐっ、力強い……」

「対価は宝石でどうです?」

「ちょっとだけ、ちょっとだけなら……。残してくれる?」

「大丈夫です。草原一つで満足しますから」

「そんなに持ってないんですけどー!」

 岩竜の少女は、俺のスパイスコレクションの半分を、調味料を半分使って食べた。粉にして乾燥させて有ったので食べすぎないと思った俺はバカだった。

「名前は?」

「私の名前はソフィーナ。ごちそう様でした。いろんな味で楽しかったです。」

「だろ! 美味しいものを集めたからな。今半減したが……」

「これ、お礼です」

 ソフィーナは腕の岩の鱗からキラキラ光る宝石を取った。一つや二つじゃない、何十粒もの輝きが、それも一センチくらいの大粒。

「なんか貰いすぎじゃないか? 俺はスーパーと専門店の品と異世界で買ったものを集めただけだそ?」

「金に困ってるなら貰っとけ。多分もう貰う必要がなくなる額だ」

「ありがとう!」

 俺は、恐る恐るソフィーナの手から宝石を受け取り空の調理用ケースに入れた。

「そう言えば、何で閉じ込められていたの?」

「熱線を吐く練習してたら、大陸を割っちゃって……」

「被害規模がでかすぎ!」

 俺たちは協力して母親岩竜から脱出する。リュセラも居るしなんとかなるだろう。大陸を割れる子の母親をどうにかできるとは思えないのだが。
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