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2部3章

助ける理由

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 ほら穴の中でカインと対峙したが、奴も同じ罠に掛かっていた。辺りは淀んだ空気で油分を含んだ臭いもする。

「カインって、もっと何でもそつなくこなす印象なんだけど?」

「仕方ないでしょう! 藍華さんの手前、怯えて慎重に動くのは何だか恥ずかしくて」

「カッコつけたんだな……」

「むっ! お互い様では? 冒険について詳しいからと前に出て、セレスト様にアピールしていたりとか……」

「そこまで考えていた、つもりでは……。無いと思う!」

「誤魔化しましたね!」

「今はそれどころでは無いよな!」

 カインは自分に纏わりついたスライムに触れた。

「情報魔法、カット」

 カインの周りにいたスライムの体がスパッと消えてしまった。だが、部分的なもの周りにも蠢く他のスライムたちがいる。俺に纏わりついたスライムも変わらずに存在している。

 カインはそのまま歩き出した。このままでは俺はヤバい。この際爆破してでも脱出しようかと考えたが、外には凛音たちもいる。もしかしたら藍華も居るかもしれない。

 どうしようかと悩んだ俺の前に立ったのはカインだ。彼は俺に手を伸ばす。負けを覚悟した俺は纏わりついたスライムが消えていることに気がついた。

「どうして助けた?」

「命は大事です。争奪戦の敵だとしても」

「ありがとう、カイン」

「それに、藍華さんのお兄さんなら、恩を売っておくのも有りかと……」

「許さんぞ!」

 俺が怒りを露にした時に目元に光が見えた。もしかしてこれって、雷?

 その瞬間に発火し火が走り、スライムに向かった。俺はカインを引き寄せてスライムに背を向ける。

 途端に起きた大爆発によってダンジョンは揺れた。俺はと言うものの、ほら穴から弾き出されて、岩の上を転がった。

 無傷な自分に安堵する。雷神って神様だもんな。カインも怪我はしていないようだ。

「どうして助けてくれたんですか?」

「俺のせいで怪我を負うのはフェアじゃない。だから助けた」

「ありがとうございます。多少のダメージなら回復出来ますがね」

「それはどうも。早く藍華のところに行ってやれ。一人でダンジョンに居るのは危険だからな」

 カインは何が起きたか分からない顔をしたが、直ぐに走って行ってしまった。

 それを見送る。だが、俺には疑問が出来た。藍華のことは俺のコピーの俺二号が見ていてくれるはずなのに、ここまで顔を会わせないものか?  
 敵対すると厄介な相手だから会いたくはないがな。
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