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2部3章

敵の罠

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 無事に生還した俺たちは、罠の大きな穴を見下ろした。大穴に入る時に見たダンジョンの大穴と同じ、底の見えない穴だ。

「恐ろしい穴だったな」

「今一番怖いのは凛音ちゃんな気がする……」

「大丈夫だよー。学んだから。ここでは」

「毎回掛かるのは勘弁だがな……」

「だが、少し手の込んだ罠だったな」

「恐らくだが、カインの罠だな。やつの魔法なら可能だろう」

 確かに先に入った彼なら、仕掛けることは可能だ。けど、こんな危険な罠をかけるだろうか。お手柔らかにとも言っていたし、藍華だってここまでしないだろう。

「とにかく警戒して進みましょう。我々は内側を捜索したいと思います。悠人君たちはどうします?」

「俺たちは壁の方に歩きます。こうした地形では、端の方にほら穴があるかもしれませんので。安全圏が見つかったら教えますね」

「それはありがたい。我々も発見したら、カズヒロ曹長から連絡しましょう」

「では俺たちはリュセラに連絡を任せましょう」

「なら、僕たちコピーはエリカ大尉の方に付いていく。ダンジョンで魔法使い無しは危険だからな。一時的だが」

「では行きましょう」

 エリカ大尉とコピーたちを見送ってから、俺たちはダンジョンの大穴の壁へと歩いた。

「急に来る滝に気を付けよう。浮遊した岩は少なくなるけど、壁沿いには直接流れてくる場所があるはずだ」

「それってあんな風に?」

 凛音が空を指差した。そこには今流れ落ちてくる水が。

「召喚魔法、デカイ頑丈な葉っぱ」

 リュセラの魔法と共に現れたのは、大きな葉っぱだ。俺たちを覆って水を受け流してくれた。エルリックさん以外はだが。

「水よけの加護」

 焦ること無く魔法を唱えたエルリックさんは水が直撃したのに立っている。

「「チッ!」」

「まだまだだね」

「仲間だから、やり過ぎないようにな……」

 俺たちは歩き、壁にたどり着いた。洞窟になっている穴が幾つかある。

「俺が先に入る」

「ゴットミノタウロスじゃなくなったのに?」

「今の俺には雷神のそこそこ頑丈な体と、影に入る魔法があるから。困ったら助けに来てくれ」

「良いわよ。崩れたくらいなら私の弾丸は貫通できるし」

「それ俺に当たりそうなんだけど!」

「大丈夫よ。私が見たところ雷神って、まあまあ頑丈そうな体だし。雷神を撃ったこと無いけどね」

「不安にさせないでくれ……」

 俺はみんなの元から離れ、ほら穴へと入った。

 ほら穴の中は暗く、足元は泥だろうか。足が埋まる為に歩きにくい。そこそこ進んだところで、膝まで埋ってしまう。だが引き換えそうと向きを変えた俺が見たのは。大きな目玉だった。

 それは足元のベタベタと繋がっていて、粘性が高く体は黒い。闇に紛れるためだ。そうして獲物をとる生物。狡猾で劣悪、何より油臭い。

 俺は雷神の力で雷を使おうとした、その時声が聞こえた。

「フフフッ。やめた方がいいですよ。コイツは特別なスライムで、可燃性があります。しかも奥まったここでは。爆発のダメージは大きいでしょう」

「カイン! お前が犯人か……」

 俺は声の聞こえた方向に目を向けた。そこにはカインがスライムに半分埋った状態となっている

「お前も掛かっているんかい!」

 ピンチとなった俺たち。藍華が罠に掛からなくて良かった。姿が見えないのは不安なのだが。
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