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2部3章

釣竿との協力

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 川辺で釣糸を垂らす八人。それぞれの隣にはバケツ。夜の山林は少し寒いが、俺以外の皆は白熱している。

 釣り勝負が決まったと同時にエルリックさんが言った言葉が、状況を悪化させたのだ。

 奇跡の破片争奪戦。なんでも願いが叶う奇跡の破片の大結晶を奪い合う戦いが始まってしまった。それはそれとして釣り勝負とやっているが、俺には特に得がない。

「悠人、なんでも願いが叶うのに。乗り気でない?」

「なんか漠然としちゃってな。それに、俺の願いは叶えたばかりだし」

 俺は藍華の方を見た。彼女は楽しげに竿を持ち釣りをして居る。

 穏やかで当たり前の遊びを、藍華が出来るようになっただけで満足してしまった。今彼女が持ち上げているのが凶悪な牙を持つ肉食魚でなければ安心なのだがな……。

「ふうん。確かに前のダンジョンで望みが叶ったもんね」

「そうだな。取り敢えず借りていた治療費を返せれば良いから。大願とか無いな」

「じゃあさ、私と協力しない?」

「良いけど。悪用しない?」

「私はエルリックに勝てればそれで良いから。修行のために使う」

「ならいいか。よろしく」

「あと竿、大丈夫?」

 俺が竿を見ると。竿の真ん中が折れていた。

「やられたか! 百均製だから脆いんだ」

「替えはある?」

「ああ、予備を常に持っている」

「用意が良いのか、不安症なだけなのか」

 すると折れた釣竿の上辺りが起き上がってきた。

「悠人。俺はまだやれる!」

「でも、折れたら無理だ」

「初めてなんだ使われるの」

「そうだっけ……?」

「鞄の奥で、前回ダンジョンに入った時もずっと。俺のこと忘れてないよな?」

「覚えてなかった……」

「でも、これ以上は使えない。家に帰ったら修理するから」

「アーツにしてくれ! 気合いで直す!」

「その手があったか!」

 俺はリュセラに貰ったカードを取り出して釣竿をアーツに登録した。すると釣竿が輝き折れた部分が直った。

 アーツにすることで道具を強化したり機能拡張できる。

「やるぞ、悠人!」

「ああ! 忘れててごめん。でも……」

「「これからいっぱい釣りをするぞ!!」」

 俺が竿を握り川に入れて数秒、即座にかかった魚を引き上げると、再度折れた。

「釣竿!」

「まだだ! 俺はアーツになった、悠人と共に何度でも立ち上がって見せる!」

「行くぞ釣竿! 折れても何度でも直してこの勝負。勝つんだ!」

 罰ゲームを回避するために!

 何度も大物がかかり折れながら釣りをした。その様子を見たセレストは……。

「アーツで竿を頑丈にすれば良くない?」

「「そっかー……」」
 
 俺と竿は、静かに釣竿を強化をして釣りに戻った。しかし、まあまあ釣ったので、リュセラに並んだ。釣竿が上手く魚を寄せてくれているのだ。まだ、量で藍華に勝てないけど。
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