上 下
136 / 242
2部3章

備え

しおりを挟む
 カインを直ぐに追いかける事が決まった俺たちは全員、救護テントで治療を受けた。俺はゴッドミノタウロスなので特に怪我しなかったけど。

「凛音の致命傷は大丈夫だったのか?」

「うん! ミホさんがポーションで治したよー」

「リュセラの方はどうだ?」

「僕は怪我はないが、魔力を回復するためにマナポーションを頂いた」

「セレストは?」

「あいつとの戦いなんて日常だから、怪我なんてしない!」

「お、おう。なら良かった」

「はいはい。みんな、治療が終わったら準備しようか」

 エルリックさんが救護テントに入って来てそう言うと、セレストは露骨に嫌そうな顔をする。

「あなたに仕切れるんですかー? 悲劇教団も制御出来てないのにー」

「「そうだそうだ! お前のせいで僕は年中狙われてんだぞ!」」

「でもリュセラ、二人いるから分散出来るよね?」

「「ありがとうカイン!」」

「そうかい。じゃあカインに隊長たちを二倍にして貰おうか?」

「「やめろ!」」

「それは良いとして、仕切る役を大尉に任された。異世界組では僕が最年長だし、麗音とも友達だ。利益があるうちはね」

「お父さんと友達なの?! 友達は悠大さんだけって言ってたけど?」

「ひどいなあ。まだ、試練の事を根に持ってるだろうな。麗音は口うるさいし」

「分かるー!」

「凛音ちゃん、こんな奴と分かりあっても得はないわ。せいぜい試練与えられてめんどいだけよ!」

「試練! 心踊るひびきだね!」

「セレスト。凛音には逆効果だ……。父さんとも定期的に会っているから、俺は一先ず任せてみようと思う」

「悠人まで!」

「困ったら全員で倒そう」

「「「OK、それがいい!」」」

 悲劇教団の司教である彼を倒せばあらゆる騒ぎを納めることができるはずだ。実際に倒せるかどうかは分からない。父さんや麗音さんと同じレベルならかなり強いから。

「ひどいなあ。でも、話は進んだね。荷物を用意しようか」

「今回の大穴のダンジョンは水気が強そうですね。荷物の防水や滑り止め、降りる際の器具を用意しないと」

「うん。さすが悠大のお子さんだ。突っ込むばかりのセレストや、臆病に荷物を重くするリュセラとは違うなー」

「「なんだとー!!」」

「落ち着け。リュセラ、防水の魔法とか可能か?」

「出来る。荷物と衣服を見せてみろ」

 リュセラが杖を振り、俺の鞄と服に光が入った。

「体に魔力の膜を作った。濡れる心配はない」

「セレスト、空を飛べるよな?」

「うん。重力は有らずの加護でね」

「じゃあ落下の危険があったら助けてくれ」

「いいよ。あいつ以外なら。どうせあいつも出来るけど……」

 俺の様子を見ていたエルリックさん。笑顔だった。

「懐かしいな。悠大も冒険ではとても便りになった。ちなみにその荷物は?」

「調味料と百均の道具です」

「そうか、そうか……」

 エルリックさんはやや困っている。一応今から荷物を足しますから、勘弁してください。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~

やみのよからす
ファンタジー
 病院で病死したはずの月島玲子二十五歳大学研究職。目を覚ますと、そこに広がるは広大な森林原野、後ろに控えるは赤いドラゴン(ニヤニヤ)、そんな自分は十歳の体に(材料が足りませんでした?!)。  時は、自分が死んでからなんと三千万年。舞台は太陽系から離れて二百二十五光年の一惑星。新しく作られた超科学なミラクルボディーに生前の記憶を再生され、地球で言うところの中世後半くらいの王国で生きていくことになりました。  べつに、言ってはいけないこと、やってはいけないことは決まっていません。ドラゴンからは、好きに生きて良いよとお墨付き。実現するのは、はたは理想の社会かデストピアか?。  月島玲子、自重はしません!。…とは思いつつ、小市民な私では、そんな世界でも暮らしていく内に周囲にいろいろ絆されていくわけで。スーパー玲子の明日はどっちだ? カクヨムにて一週間ほど先行投稿しています。 書き溜めは100話越えてます…

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

異世界でも男装標準装備~性別迷子とか普通だけど~

結城 朱煉
ファンタジー
日常から男装している木原祐樹(25歳)は 気が付くと真っ白い空間にいた 自称神という男性によると 部下によるミスが原因だった 元の世界に戻れないので 異世界に行って生きる事を決めました! 異世界に行って、自由気ままに、生きていきます ~☆~☆~☆~☆~☆ 誤字脱字など、気を付けていますが、ありましたら教えて頂けると助かります! また、感想を頂けると大喜びします 気が向いたら書き込んでやって下さい ~☆~☆~☆~☆~☆ カクヨム・小説家になろうでも公開しています もしもシリーズ作りました<異世界でも男装標準装備~もしもシリーズ~> もし、よろしければ読んであげて下さい

悪役令嬢の騎士

コムラサキ
ファンタジー
帝都の貧しい家庭に育った少年は、ある日を境に前世の記憶を取り戻す。 異世界に転生したが、戦争に巻き込まれて悲惨な最期を迎えてしまうようだ。 少年は前世の知識と、あたえられた特殊能力を使って生き延びようとする。 そのためには、まず〈悪役令嬢〉を救う必要がある。 少年は彼女の騎士になるため、この世界で生きていくことを決意する。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~

トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。 旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。 この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。 こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

処理中です...