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2部、2章
セレストの父
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救護用のテントの中でセレストの父親、エルリックさんと初めて会った。彼は優しそうな若い青年に見える。
彼が父親なのは確かだから、ダンジョン内部で生活していたのだろう。ダンジョンは時間が流れてないから。
「どうぞ、座って」
「ありがとうございます」
自衛隊のパイプ椅子が対面で置いてある。セレストは目覚めないままだ。呼吸しているのは分かるから安心できる。
「僕は君を知っている。悠大の家にお邪魔した時にね。幼い君が立ち上がるのを大人三人で喜んだなあ」
俺の知らない間にエルリックさんに会っていた。父さんが母さんに引き合わせた事から、彼が父さんたちと仲がいいのが分かる。
「セレストはどんな容態ですか?」
「魔法を食らって睡眠状態が続いている。まだ、セレストも抵抗してるようだが」
「一体誰が、こんなことを!」
「えっ? 僕だよ」
「あんたかい! 実の娘だろ!」
「悠大と同じ反応。似てるなあ」
エルリックさんはニコニコしているが、セレストがこの人を恨むのも分かる。俺は悲劇教団の司教であることよりも、父親が娘に攻撃をしたことが許せない。
「虐待ではないですか?」
俺は体に電気が巡らせた。雷神は明日まで持つ。セレストを助けたい。勝てない相手だとしても。
「悠大から聞いたよ。平和な世界ではそんなことしないって。でも、これは試練なんだ」
「なぜ加減をしなかったんですか?!」
「セレストはこちらの世界ではもう成人している。加減して勝てる相手ではないよ」
「だからって!」
「五十万人。僕らの世界の一日の死者数だ。厳しい世界で生きている人々には力が必要だ」
「……」
セレストたちの世界はモンスターがいて、危険なダンジョンが幾つもある。さらに、こっちと同じで人同士の争いまである。俺たちの世界よりも危険な世界なのは納得していた。
「僕はセレストに生きていて欲しいから、強くなって貰わないと」
「ここまですること無いじゃないですか!」
魔法で眠ったセレストを見る。時折穏やかな表情から、苦悶に変わる。抵抗しているからだ。
「いやあ、それは無理だ。世界を滅ぼす魔法を使おうとしたから。止めるしかなかった」
「何やってるのセレスト!」
「セレストが強くなって嬉しいけど。そこまでしないと僕に勝てないのはダメだからね。例えこれでも。親だから」
エルリックさんは俺に首元を見せた。そこには数字の二。彼はコピーだった。カインの魔法の恐ろしさを理解した。
エルリックさんはやり過ぎだと思ったが。セレストもやり過ぎてた。
彼が父親なのは確かだから、ダンジョン内部で生活していたのだろう。ダンジョンは時間が流れてないから。
「どうぞ、座って」
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「僕は君を知っている。悠大の家にお邪魔した時にね。幼い君が立ち上がるのを大人三人で喜んだなあ」
俺の知らない間にエルリックさんに会っていた。父さんが母さんに引き合わせた事から、彼が父さんたちと仲がいいのが分かる。
「セレストはどんな容態ですか?」
「魔法を食らって睡眠状態が続いている。まだ、セレストも抵抗してるようだが」
「一体誰が、こんなことを!」
「えっ? 僕だよ」
「あんたかい! 実の娘だろ!」
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エルリックさんはニコニコしているが、セレストがこの人を恨むのも分かる。俺は悲劇教団の司教であることよりも、父親が娘に攻撃をしたことが許せない。
「虐待ではないですか?」
俺は体に電気が巡らせた。雷神は明日まで持つ。セレストを助けたい。勝てない相手だとしても。
「悠大から聞いたよ。平和な世界ではそんなことしないって。でも、これは試練なんだ」
「なぜ加減をしなかったんですか?!」
「セレストはこちらの世界ではもう成人している。加減して勝てる相手ではないよ」
「だからって!」
「五十万人。僕らの世界の一日の死者数だ。厳しい世界で生きている人々には力が必要だ」
「……」
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「僕はセレストに生きていて欲しいから、強くなって貰わないと」
「ここまですること無いじゃないですか!」
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「いやあ、それは無理だ。世界を滅ぼす魔法を使おうとしたから。止めるしかなかった」
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エルリックさんは俺に首元を見せた。そこには数字の二。彼はコピーだった。カインの魔法の恐ろしさを理解した。
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