134 / 233
2部、2章
セレストの父
しおりを挟む
救護用のテントの中でセレストの父親、エルリックさんと初めて会った。彼は優しそうな若い青年に見える。
彼が父親なのは確かだから、ダンジョン内部で生活していたのだろう。ダンジョンは時間が流れてないから。
「どうぞ、座って」
「ありがとうございます」
自衛隊のパイプ椅子が対面で置いてある。セレストは目覚めないままだ。呼吸しているのは分かるから安心できる。
「僕は君を知っている。悠大の家にお邪魔した時にね。幼い君が立ち上がるのを大人三人で喜んだなあ」
俺の知らない間にエルリックさんに会っていた。父さんが母さんに引き合わせた事から、彼が父さんたちと仲がいいのが分かる。
「セレストはどんな容態ですか?」
「魔法を食らって睡眠状態が続いている。まだ、セレストも抵抗してるようだが」
「一体誰が、こんなことを!」
「えっ? 僕だよ」
「あんたかい! 実の娘だろ!」
「悠大と同じ反応。似てるなあ」
エルリックさんはニコニコしているが、セレストがこの人を恨むのも分かる。俺は悲劇教団の司教であることよりも、父親が娘に攻撃をしたことが許せない。
「虐待ではないですか?」
俺は体に電気が巡らせた。雷神は明日まで持つ。セレストを助けたい。勝てない相手だとしても。
「悠大から聞いたよ。平和な世界ではそんなことしないって。でも、これは試練なんだ」
「なぜ加減をしなかったんですか?!」
「セレストはこちらの世界ではもう成人している。加減して勝てる相手ではないよ」
「だからって!」
「五十万人。僕らの世界の一日の死者数だ。厳しい世界で生きている人々には力が必要だ」
「……」
セレストたちの世界はモンスターがいて、危険なダンジョンが幾つもある。さらに、こっちと同じで人同士の争いまである。俺たちの世界よりも危険な世界なのは納得していた。
「僕はセレストに生きていて欲しいから、強くなって貰わないと」
「ここまですること無いじゃないですか!」
魔法で眠ったセレストを見る。時折穏やかな表情から、苦悶に変わる。抵抗しているからだ。
「いやあ、それは無理だ。世界を滅ぼす魔法を使おうとしたから。止めるしかなかった」
「何やってるのセレスト!」
「セレストが強くなって嬉しいけど。そこまでしないと僕に勝てないのはダメだからね。例えこれでも。親だから」
エルリックさんは俺に首元を見せた。そこには数字の二。彼はコピーだった。カインの魔法の恐ろしさを理解した。
エルリックさんはやり過ぎだと思ったが。セレストもやり過ぎてた。
彼が父親なのは確かだから、ダンジョン内部で生活していたのだろう。ダンジョンは時間が流れてないから。
「どうぞ、座って」
「ありがとうございます」
自衛隊のパイプ椅子が対面で置いてある。セレストは目覚めないままだ。呼吸しているのは分かるから安心できる。
「僕は君を知っている。悠大の家にお邪魔した時にね。幼い君が立ち上がるのを大人三人で喜んだなあ」
俺の知らない間にエルリックさんに会っていた。父さんが母さんに引き合わせた事から、彼が父さんたちと仲がいいのが分かる。
「セレストはどんな容態ですか?」
「魔法を食らって睡眠状態が続いている。まだ、セレストも抵抗してるようだが」
「一体誰が、こんなことを!」
「えっ? 僕だよ」
「あんたかい! 実の娘だろ!」
「悠大と同じ反応。似てるなあ」
エルリックさんはニコニコしているが、セレストがこの人を恨むのも分かる。俺は悲劇教団の司教であることよりも、父親が娘に攻撃をしたことが許せない。
「虐待ではないですか?」
俺は体に電気が巡らせた。雷神は明日まで持つ。セレストを助けたい。勝てない相手だとしても。
「悠大から聞いたよ。平和な世界ではそんなことしないって。でも、これは試練なんだ」
「なぜ加減をしなかったんですか?!」
「セレストはこちらの世界ではもう成人している。加減して勝てる相手ではないよ」
「だからって!」
「五十万人。僕らの世界の一日の死者数だ。厳しい世界で生きている人々には力が必要だ」
「……」
セレストたちの世界はモンスターがいて、危険なダンジョンが幾つもある。さらに、こっちと同じで人同士の争いまである。俺たちの世界よりも危険な世界なのは納得していた。
「僕はセレストに生きていて欲しいから、強くなって貰わないと」
「ここまですること無いじゃないですか!」
魔法で眠ったセレストを見る。時折穏やかな表情から、苦悶に変わる。抵抗しているからだ。
「いやあ、それは無理だ。世界を滅ぼす魔法を使おうとしたから。止めるしかなかった」
「何やってるのセレスト!」
「セレストが強くなって嬉しいけど。そこまでしないと僕に勝てないのはダメだからね。例えこれでも。親だから」
エルリックさんは俺に首元を見せた。そこには数字の二。彼はコピーだった。カインの魔法の恐ろしさを理解した。
エルリックさんはやり過ぎだと思ったが。セレストもやり過ぎてた。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
お坊ちゃまはシャウトしたい ~歌声に魔力を乗せて無双する~
なつのさんち
ファンタジー
「俺のぉぉぉ~~~ 前にぃぃぃ~~~ ひれ伏せぇぇぇ~~~↑↑↑」
その男、絶叫すると最強。
★★★★★★★★★
カラオケが唯一の楽しみである十九歳浪人生だった俺。無理を重ねた受験勉強の過労が祟って死んでしまった。試験前最後のカラオケが最期のカラオケになってしまったのだ。
前世の記憶を持ったまま生まれ変わったはいいけど、ここはまさかの女性優位社会!? しかも侍女は俺を男の娘にしようとしてくるし! 僕は男だ~~~↑↑↑
★★★★★★★★★
主人公アルティスラは現代日本においては至って普通の男の子ですが、この世界は男女逆転世界なのでかなり過保護に守られています。
本人は拒否していますが、お付きの侍女がアルティスラを立派な男の娘にしようと日々努力しています。
羽の生えた猫や空を飛ぶデカい猫や猫の獣人などが出て来ます。
中世ヨーロッパよりも文明度の低い、科学的な文明がほとんど発展していない世界をイメージしています。
理学療法士だった俺、異世界で見習い聖女と診療所を開きました
burazu
ファンタジー
理学療法士として病院に勤めていた宮下祐一はある日の仕事帰りに誤ってマンホールより落下するが、マンホールの先はなんと異世界であり、異世界で出会った聖女見習のミミと出会い、道行く怪我人を彼女の治癒魔法で救うが、後遺症が残ってしまう、その時祐一(ユーイチ)はなんとかリハビリができればと考えるが。その時彼のスキルである最適化≪リハビリ≫が開花し後遺症を治してしまう。
今後の生活の為ユーイチとミミは治療とリハビリの診療所を開く決意をする。
この作品は小説家になろうさん、エブリスタさんでも公開しています。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる