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2部、1章

厳格な副隊長

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 無事に八ツ橋を作り終えた俺たちは、自衛隊のエリカ大尉に合流した。ただし俺だけは無事でなかったが。

「次はないからね、悠人」

「気を付けます……」

 俺の体はハイドラの再生能力で治ったが、服は弾丸により穴だらけだった。途中からセレストは殴る蹴るに切り替えたので服の消滅は避けられた。途中、骨が折れた音したけど。

 エンチャントお菓子により、服にも再生能力が有るため、その内直るだろう。

「あと、打ち消された魔法が戻っているんだけど……」

 俺の手は燃え上がった状態に戻った。背中にも風が渦巻いている。

「罰です。今日はそのままで居て!」

「仕方ないか。ごめんなセレスト」

 セレストはそっぽを向いてしまった。俺がやったことを考えれば、仕方の無い処置だ。受け入れよう。

 エンチャント八ツ橋はあの場にいた全員に手渡してある。俺が渡したのではないが。セレストが配ってくれた。

 作戦会議をした場所で自衛隊の人々が並ぶ隣に俺たちは立っていた。前にはエリカ大尉が立っている。

「集合したな。悠人君に他の隊のメンバーを紹介しよう」

 エリカ大尉に促され、自衛隊の男性が前に出た。気難しい風の怖い顔の中年男性だ。

「エリカ隊、副隊長佐藤タケシ中尉だ。戦術指揮を担当する。今回は待機隊において、臨時の指揮をする」

 タケシ中尉はなぜか俺を睨んでいた。俺、何かヤバいことしたっけ? 

 確かにセレストに迷惑掛けたけど。

 マジカルスパイスを特別待遇で持って帰った事だろうか……。勝手に魔法まみれになったことだろうか……。思い当たる節が有りすぎた。

 横に居たユウキさんが、俺のハイドラの頭の一つを引き寄せた。

「目を付けられたっすね。お菓子が」

「俺を睨んでるみたいですが?」

「タケシ中尉は甘いものが好きなので、分けてやれば解決っす」

「エンチャントお菓子なのですが?」

「ルールに厳しい人だからなあ。タケシ中尉。没収、かもよ?」

 ユウキさんの発言に咄嗟に鞄に手で触れた。だが、俺は手を掴まれる。掴んだのはタケシ中尉だった。

「私語は今すべきことか?」

「すみません!」

 俺は諦めて鞄を開けようとしたが、タケシ中尉はそれを手で押さえた。

「大臣の許可を貰ったなら大丈夫だ。だが、分けてはくれないか?」

「はい!」

 怖い人だと思ったが、打ち解けられそうだ。ユウキさんにからかわれただけだったのだ。

「ユウキの鞄に入ったゲーム機は没収だがな」

「そんな~」

 タケシ中尉が厳しい人なのは言う通りなようだ。ちゃんとした大人が指揮を執ってくれるなら待機隊の方は安全だろう。俺の方の先行隊に居るアキラさんのが不安になってきたな。
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