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2部、1章

試しと失敗

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 八ツ橋作りも最終工程となった。整形した八ツ橋にマジカルシナモンを振りかけて蒸し器に入れて乾燥させる。待ち時間となった。

「おにーちゃん、これで完成?」

「そうだな。太陽で乾燥させてもいいけど調整できる自信が無い」

「また、魔法まみれになったな悠人」

「そうだなリュセラ。懐かしい。試食、俺がやってもいいか?」

「構わないよな、凛音?」

「えー、私もトライしたい! 自分で作った八ツ橋とか超食べたい!」

「凛音。一人が試せば、周りがフォローできる。後で分け与えるから」

「一番最初に、たーめーしーたーい!」

「今の俺なら何でも対応できる。凛音は最近、魔法使ったか?」

「お父さんに杖を取り上げられてた……。後で絶対ちょうだいね!」

 藍華とカインも聞いたが、全員が俺に試食を任せてくれた。

 俺は自分の作った八ツ橋スタンダードな八ツ橋を食べた。俺の手から炎が燃え上がった。

「火の手になる魔法か。扱いどころが難しいが、強力な魔法だ」

 次に凛音の作ったチョコレート味の八ツ橋を掴もうとしたが気がつく。触れないことに。

「さっそく、不便だな」

「じゃあ私が食べさせてあげる」

「セレスト! あ、藍華に頼みたいかな……」

「私じゃ嫌なの?」

「嫌ではないけど……」

「じゃあ悠人、口を開けて」

 恥ずかしい。だが、今の俺の手では掴めないし。口を開けて待つ。セレストはチョコレート味の八ツ橋を口に入れてくれた。

 魔法の効果は直ぐに現れた。俺の背中に風が集まり竜巻のように渦巻いた。足が浮かんだ気がしたので地面を蹴ると、俺の体は宙を舞った。

「風の翼か」

「悠人。空飛んでる! 私の八ツ橋の魔法だ」

「しかも、意思のままに動けるぞ」

 俺は上がり下がりなどをして見せた。確認をしたので降りる。

「一応打ち消しとくね」

「最初から打ち消す魔法、使ってくれよ……」

 セレストの魔法、それは有らずの加護により魔法効果を打ち消しながら使用していく。
 燃え上がっていた俺の手は元に戻った。ハイドラの鱗生えてるけど。

 藍華の作った抹茶味の八ツ橋は、食べた時には何も起こらなかった。俺は踏み出してみた、すると足が沈んでしまう。見れば影に足がはまっていた。

「ほう。影に入る魔法だな。出入りしてみろ悠人」

「やってみる」

 俺は影に飛び込んでみた。中は真っ暗だが、上だけが明るく穴がいくつも空いていた。泳いで近寄り、穴の一つから顔を出す。

 だが、暗い。手探りで何かを掴んだ。柔らかく、温かく、すべすべしたものを。

「キャッ!」

「ごめん!」

 慌てて手を離し引っ込もうとした俺の後頭部(ハイドラなので沢山有る)を蹴られて影から蹴り出された。基地中の壁に衝突し、突き破った。

 前を見たらそこにセレストが居た。

「ゆーうーと! いつもの仕返しでしょ!」

「いや、本当に見えなかっただけで! ごめん、触る気はなかったんだ!」

「でも、見たでしょ?」

「明かりは少なかったから、見てない!」

「そんなに頭が有るのに?」

 俺はハイドラの頭たちと顔を見合わせた。見えてない方が間違っている。本当に暗かったとしても。俺はそれを証明出来ない。

 セレストは次の瞬間には拳銃を取り出して撃って来た。俺は逃げ惑う、謝罪を続けながら。

 空飛んだり、影に潜ったり。どこへ移動してもセレストの弾丸は貫通してきて、打たれまくった。

 俺は反省として、影から出る前にしっかり確認しようと心に決めた。確認の時点でダメだろうと思い至ったのだが。
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