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2部、1章

着いた先で

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 装甲車に乗って基地へと向かう俺たち。酔ってしまったユウキさんから鞄が返ってきたのは、十分後だ。具合悪そうながらも頑張って仕事してくれた彼に感謝しよう。大荷物ですみません。

 藍華の鞄も返ってきた。その際に鞄の口が開いており、中には藍華の好きな小説や漫画が見えている。

 俺は気がついた。藍華の鞄を覗いているエリカ大尉に。とっさに彼女は顔をそらした。

「運転手は伊藤アキラ。無口だが、仕事は真面目だ」

 装甲車の前に小窓が付いており、エリカ大尉の声が聞こえたのか手を上げて返事をした。

「では、自己紹介も終えた。本題に入ろう」

「はい。ダンジョンの調査ですよね」

「そうだ。最近出来たダンジョンだが、管理するために中をある程度調査しなければならない」

「俺がかつて入ったダンジョンも、調査をしたんですか?」

「ああ、あのダンジョンの調査は大臣が一人で行った」

「危険かもしれないのに、単独でですか?」

「この世界で一番ダンジョンを知っているのは大臣だ。あちらの世界へ渡航し、勇者の旅を終えて帰還した強さも国の認めるところだ。もう一人の協力者、中村悠大ともどもな」

 大臣の麗音さんは奥さんを助けるために、ダンジョンを管理していた。いくら魔力が高い調味料を用いても、一回分の食材では全快には至らない。これからも少しづつ魔力を貯めていくのだろう。

「大尉は父さんについて知っているんですか?」

「知っている。魔法の訓練で手合わせをしたことがある」

「父さんもやっぱり魔法が使えるんですね」

「悠大さんは大臣に並ぶほど強い魔法の使い手だった」

「その後の行方は知っていますか?」

「私の預り知ることではない。だが、大臣なら知っている」

 俺たちの言葉に藍華が身を乗り出した。

「お父さんに会えるの?!」

「分からない。でも、俺も聞いた。遺跡の調査しているって、あっちの世界の友人リュセラが言っていたよ」

「久しぶりに会いたい」

「そうだな」

「魔法を教えて欲しいし」

「俺じゃダメなのか?」

「おにーちゃん、エンチャントお菓子で魔法使ってるでしょ。私、ちゃんとした魔法使いたい」

 藍華にもエンチャントお菓子について説明をしてある。彼女に聞かれて、隠そうとしたが。すでに見られているので押しきられ、仕方なくだ。なるべく危険なことはさせたくないのだが。

「仕方ない、私が訓練をしてやろう。魔力も充分貯まってきているようだしな」

「おにーちゃんにエンチャントお菓子貰ったから」

「あくまで、今回の作戦での生存率を上げるためだ」

「それと、藍華ちゃんと軽くトークをしたい。主に小説や漫画について、なんてね」

 エリカ大尉の言葉に続いて、ユウキさんが発言した。エリカ大尉は顔を背け、ユウキさんを睨み付けた。

「大尉は小説や漫画が好きなのですが。この通り素直じゃないので、気が向いたら話し相手になってやって欲しいっす」

「はい。お気に入りの小説とか漫画、紹介してください」

「その誘い、ありがたく受ける。が、ユウキは罰としてスクワット百回だ」

「はーい……」

「私と違い素直なユウキには、さらに荷物付き、十キロランニングも追加だ」

「なんでっすか!」

「口答えするか?」

「謹んでお受けします」

「心配するな、私も付き合う。一人では辛かろう」

「見張りで?」

「それと、余力があるなら追加するため」

「イエス、マム……」

「その後に藍華君、話をしようか」

「はい!」

 話が脱線したが、再度本題について話そうとした時に。装甲車の前の小窓を叩く音がした。アキラさんが手で外を示す。エリカ大尉が窓から外を見る。

「なんだこれは!」

 俺も窓から外を見た。

「基地が壊されている」

 自衛隊の基地、幾つもある小屋が転がっていたり、大きな穴が空いている。並の兵器では不可能な破壊跡。

「魔法によって攻撃されている!」
 
 壊れた基地にたどり着いた俺たち。魔法による攻撃で破壊された建物。中の人を助けないと。それはそうと、水筒のコーヒーを出した。魔法を得るためだ。不安なだけではないつもりだ。
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