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4章
秘匿
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一通りの手続きを終えた俺たちは、自衛隊の大きめの小屋へと呼ばれた。
凛音は俺から貰った回復の杖を握っている。彼女が杖の構造を見ながら、火をつける魔法を使ったので、俺の瞬間移動で遥か上空に火を飛ばした。
「ここの人は魔法知らないかもしれないだろ」
「知る喜びは最高だよ」
「教えていいものならな。凛音のお父さんもわざわざ封鎖しているんだから、なるべく隠すんだ」
「えー、けちー」
リュセラは自衛隊の施設に興味を持ち見て回っている。手にはこちらの世界のペンとメモ帳を持っていた。取り調べしてくれた自衛官に貰ったらしい。
「こんなに書きやすい紙があるなんて。しかも量産品、薄くて沢山あって歪みの無い白い紙で見易い」
「リュセラは相変わらず、物が好きだな」
「ああ、この世界の品物は品質もいい」
「喜んでくれるなら何よりだ。でも、貰いすぎも良くないぞ」
一応、資源は大丈夫だし。物資にはお金もかかっているからな。
「代わりに光る魔石を渡しといた」
「やめい! こっちの世界に未知のものを持ち込むな」
「魔法は便利だぞ?」
「確かに便利だが、この世界の法則とか乱れるかもしれないだろ!」
「悠人が持ってきたスパイスは?」
「あれは、美味しかったからつい……」
小屋の入り口から凛音のお父さんが入って来た。スーツを着込み、二人の男と女を連れている。男はスーツを着た柔らかな表情の好青年。女は自衛官の服を着た、鋭い目付きの女性。
「今から病院に行こう、そこまで魔法は使うなよ?」
「それってお母さんを治してくれるの!」
「そうだ、特例として。本来ならこの世界に魔法は無いのだから、許されない」
「あの、俺も妹の足を治したいんです」
「それも許そう。冒険を成し遂げた報酬と凛音を守ってくれた礼だ」
凛音のお父さんはリュセラの方を見た。リュセラも睨み返してバチバチしだした。ので、俺は間に入った。
「とにかく、早く治してあげましょう」
「そうだな、妻の苦労を取り除くのが優先だ。凛音に寄り付く悪い虫は後でいい」
「過保護だな、さぞかし凛音を困らせているだろう」
リュセラが杖を出した時に凛音は声を出す。
「はい、そこまで。お父さん、病院に行こう」
「ああ、行こう」
凛音のお父さんに案内されて車に乗った。病院に着いた頃には街明かりが増えた。病院はすでに暗くなっている。
「人払いをしてあるんですね」
「そうだ。ダンジョンや異世界、魔法については世間に公開していないからな。不要な混乱を招かないように」
「流石は防衛大臣ですね」
「認識阻害の魔法使っているがな」
「使っているじゃん! お父さんずるい!」
「ごめんな、凛音ちゃん。でもここまでしないと危険な情報なんだよ俺たち家族のために」
「着きました。私たちは待機しています」
スーツの男性と自衛官の女性は入り口で待機してくれた。俺たちも待機しようかとリュセラを見たが、彼はやや迷っていた。
「凛音のお母さん、会っておいた方がいいのだろうか?」
「いいと思う。俺は友人として挨拶してもいいか?」
「いいよ! お母さん病院で寂しそうだったから」
凛音のお父さんに続いて部屋の中へと入った。だが、最初に踏んだのは床でなく苔。柔らかな感触で一帯は緑と、カラフルな花たちに彩られている。
唖然とした、俺とリュセラ。凛音たちは部屋を進んでベッドの横に立った。奥にいる女性は透き通るような、薄い色の髪の毛をした女性。
「俺の妻は精霊なんだ」
「俺と違って凛音の魔力が有るのって」
「精霊の娘だったからか」
「そうだったの? お父さん」
「「凛音も知らなかったんかい!」」
部屋のベッドで微笑む女性は凛音たちから俺の方を見た。その輝く瞳に驚く。普通の人と違うと分かる。だから、凛音はエルフのリュセラの容姿にも驚かなかったのだろうな。
凛音は俺から貰った回復の杖を握っている。彼女が杖の構造を見ながら、火をつける魔法を使ったので、俺の瞬間移動で遥か上空に火を飛ばした。
「ここの人は魔法知らないかもしれないだろ」
「知る喜びは最高だよ」
「教えていいものならな。凛音のお父さんもわざわざ封鎖しているんだから、なるべく隠すんだ」
「えー、けちー」
リュセラは自衛隊の施設に興味を持ち見て回っている。手にはこちらの世界のペンとメモ帳を持っていた。取り調べしてくれた自衛官に貰ったらしい。
「こんなに書きやすい紙があるなんて。しかも量産品、薄くて沢山あって歪みの無い白い紙で見易い」
「リュセラは相変わらず、物が好きだな」
「ああ、この世界の品物は品質もいい」
「喜んでくれるなら何よりだ。でも、貰いすぎも良くないぞ」
一応、資源は大丈夫だし。物資にはお金もかかっているからな。
「代わりに光る魔石を渡しといた」
「やめい! こっちの世界に未知のものを持ち込むな」
「魔法は便利だぞ?」
「確かに便利だが、この世界の法則とか乱れるかもしれないだろ!」
「悠人が持ってきたスパイスは?」
「あれは、美味しかったからつい……」
小屋の入り口から凛音のお父さんが入って来た。スーツを着込み、二人の男と女を連れている。男はスーツを着た柔らかな表情の好青年。女は自衛官の服を着た、鋭い目付きの女性。
「今から病院に行こう、そこまで魔法は使うなよ?」
「それってお母さんを治してくれるの!」
「そうだ、特例として。本来ならこの世界に魔法は無いのだから、許されない」
「あの、俺も妹の足を治したいんです」
「それも許そう。冒険を成し遂げた報酬と凛音を守ってくれた礼だ」
凛音のお父さんはリュセラの方を見た。リュセラも睨み返してバチバチしだした。ので、俺は間に入った。
「とにかく、早く治してあげましょう」
「そうだな、妻の苦労を取り除くのが優先だ。凛音に寄り付く悪い虫は後でいい」
「過保護だな、さぞかし凛音を困らせているだろう」
リュセラが杖を出した時に凛音は声を出す。
「はい、そこまで。お父さん、病院に行こう」
「ああ、行こう」
凛音のお父さんに案内されて車に乗った。病院に着いた頃には街明かりが増えた。病院はすでに暗くなっている。
「人払いをしてあるんですね」
「そうだ。ダンジョンや異世界、魔法については世間に公開していないからな。不要な混乱を招かないように」
「流石は防衛大臣ですね」
「認識阻害の魔法使っているがな」
「使っているじゃん! お父さんずるい!」
「ごめんな、凛音ちゃん。でもここまでしないと危険な情報なんだよ俺たち家族のために」
「着きました。私たちは待機しています」
スーツの男性と自衛官の女性は入り口で待機してくれた。俺たちも待機しようかとリュセラを見たが、彼はやや迷っていた。
「凛音のお母さん、会っておいた方がいいのだろうか?」
「いいと思う。俺は友人として挨拶してもいいか?」
「いいよ! お母さん病院で寂しそうだったから」
凛音のお父さんに続いて部屋の中へと入った。だが、最初に踏んだのは床でなく苔。柔らかな感触で一帯は緑と、カラフルな花たちに彩られている。
唖然とした、俺とリュセラ。凛音たちは部屋を進んでベッドの横に立った。奥にいる女性は透き通るような、薄い色の髪の毛をした女性。
「俺の妻は精霊なんだ」
「俺と違って凛音の魔力が有るのって」
「精霊の娘だったからか」
「そうだったの? お父さん」
「「凛音も知らなかったんかい!」」
部屋のベッドで微笑む女性は凛音たちから俺の方を見た。その輝く瞳に驚く。普通の人と違うと分かる。だから、凛音はエルフのリュセラの容姿にも驚かなかったのだろうな。
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