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4章

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 凛音の魔法により照らされた部屋の中で、立ち止まった俺は。背後から感じた何かを見るために振り返った。

 凛音とリュセラも感じ取った気配に辺りを見回している。
 壁や天井の岩肌にも変化がないから、罠が起動したわけでもない。

 だが、俺は見た。リュセラの背後に突如として現れた鎧姿の男。顔まで隠したフルフェイスのため誰なのか分からない。相手は手に美しい剣と鞘を持っている。相手は鞘を振り下ろす瞬間だ。

「避けろ、リュセラ!」

 リュセラは軽やかに回避した。だが、相手の振り下ろす速度の早さに負けた。

 肩に当たった鞘による一撃はリュセラを地面に叩きつけた。鎧の男は追撃に剣を振る。転がって回避したリュセラは杖を出して敵を殴る。敵は回避し距離を取った。

「大丈夫か、リュセラ?」

「問題ない、すでにヒールをした」

 鎧の男は剣を構える。彼の構えだけで分かる隙のない熟練の構え。相手は口を開くとささやくように言う。

「返せ……!」

 俺もスカーフを装備し戦闘態勢となる。凛音はと言うと、呆然としていた。あのリュセラが攻撃を受けたのだ。しかもヒールを必要とする大ダメージ。相手は鞘で叩いたはずなのに。

 俺は鎧の男へと走る、ポケットを叩きゴールドボーイを展開し相手にけしかけた、分身して増えた金貨は視界を埋め尽くす。剣では捌ききれない。と考えた俺は甘かった。

 背後から危機を感じ取り振り返ると、鎧の男が剣で俺を切りつけていた。スカーフのガードにより切断はされなかったが、スカーフの端は切断される。

 何より恐ろしいのは剣を振った事により、衝撃波が起こった事だ。そのまま吹き飛ばされた俺は壁に激突する。スカーフのガードすら追いつかない。

 そして、鎧の男を見た。彼は凛音に目を向けている。凛音は戦闘態勢も取らずに、静観していた。鎧の男が凛音へ走った。

「逃げろ、凛音!」

 次の瞬間、鎧の男の鎧が破裂した。パーツごとにバラバラの方向へと外れて、中から男性が現れる。白いシャツにスーツのズボン。おしゃれなネクタイをやや緩めた中年の男性。

 中年の男性は剣と鞘を持ったまま、凛音へと走る。

 俺は立ち上がり、凛音の前に瞬間移動を使おうとした、

 対応するように中年の男性はこちらに向けて剣を軽く振った。

 今度は衝撃波が起きなかった。だが、魔法を使ったはずなのに効果が現れない。魔法を無効化したのか?

 間に合わないと走り出した俺。だが、凛音は落ち着いた様子で手のひらを中年の男性に向ける。

「恥ずかしいからやだ」

 その言葉を聞いた中年の男性はその場に崩れ落ちる。泣きながら凛音へと目を向けた。

「凛音ちゃん。心配したんだよ?」

「お父さんいつもそう。私がちょっとサバイバル体験しに行った時もそうだったじゃん。大袈裟だよ」

 端から見ていたリュセラが問いかけた。

「貴様、勇者の麗音だな?」

 リュセラや俺の父さんと世界を救った勇者。それが彼で。彼が凛音のお父さん?

「凛音の、お父さんがなのか?」

「お前にお父さんと呼ばれる筋合いはない!!」

 凛音のお父さんは俺に接近し鞘を振るった。スカーフでガードするも押されてしまう。続いて来た剣による攻撃。俺はとっさに叫んだ。

「中村悠大の息子です!」

 凛音のお父さんは俺の発言に手を止めた。

「悠大の息子か。じゃあいっか」

 剣を下ろした凛音のお父さん。だが、剣を収めずに持ったままだ。

「凛音を誑かしたのどっちだ?」

「誑かしたのは私。悠人は心配して付いてきてくれたの。リュセラもそう」

「良かった。意気地無しのリュセラはあり得ないし。悠大の息子なら、しっかりしているだろう」

「僕は意気地無しではない! 凛音を大切だと思っている!」

 凛音のお父さん、麗音は剣をリュセラに向ける。

「ならここで俺を越えて見せろ!」

「ストップ!」

 止めに入ったのは凛音。凛音の発言に二人とも戦う姿勢を止めた。

 リュセラは杖を下ろし。凛音のお父さんは剣を鞘に収めた。凛音のお陰で戦闘は終了した。二人の戦う理由は凛音だったけど。
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