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4章
願いのために
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悲劇教団の劇場にある、大きなカフェに来た俺たち。カフェはガラス張りの天井により明るく。現実世界のおしゃれなカフェと同じように見えて、所々柔らかなイエローに輝く鉱石により落ち着いた雰囲気になっている。
カフェの窓際に座っているセレストは物憂げに外を見ながら、コーヒーに持参のハチミツを垂らしていた。
「それ俺のだな、いつの間に?」
「まだ返してなかっただけよ」
「返す気は有ったんだ」
「有るに決まってるでしょ、いつ返すかは決めてないけど」
セレストはカップを傾け、とても甘いコーヒーを飲んだ。
「ねえ、取引しない?」
「何を?」
「私とお金儲けしようよ」
「悲劇教団を解体するんじゃなかったのか?」
「そう、その後に商売を始めたいの」
「俺にはまだ、やるべきこともある。学校も卒業したいし、出来れば大学も」
「せっかくこっちの世界で強くなったのに、戻るなんてもったいない」
「元々帰る予定でこの世界に来たんだ」
セレストは荒々しくカップをテーブルに置いた、割れなかったのがすごいくらいの勢いだ
「決闘を申し込む」
「それで納得するならやろう」
俺たちはカフェの外に出た。今日のセレストは妙に不機嫌だ。いつもの余裕の笑みがない。
「セレスト。気が立っているが、何かあったのか?」
「うるさい! 悠人が負けたら、私の配下になって貰う」
「じゃあ俺が勝ったら元の世界に帰るし、たかられたハチミツを返して貰う」
俺の発言の終わる頃に、セレストの撃った弾丸が飛んできた。狙いは足だった。サンダーバードの羽ばたきで回避する。
羽ばたいた俺は、町を見下ろすほど上空へと飛んだ。セレストも同じように空を飛ぶ。
「重力は有らずの加護!」
俺よりも高く飛んだセレストは俺にかかと落としをする。頭に直撃した。蹴り落とされた俺は途中で意識を取り戻す。赤い羽根、不死鳥の力で回復した。
「悠人にもお金が必要でしょ!」
「俺は貧乏でも、生きていければそれで良い」
セレストに向けて俺は飛翔する。高く上がるほどに、空気は冷たくなる。天井の光る鉱石の尖った結晶の形が良く分かる。
「いつもあれだけ、調味料買っている癖に!」
セレストはさらに銃を構える。
「止まらずの加護、塞がずの加護、外さずの加護!」
セレストが撃つ瞬間が見えたので、俺は背中の羽根を羽ばたかせ回避する。だが、弾丸が追ってきて俺の足に当たった。痛みを感じるが、加速した回復力で持ちこたえる。
「俺は妹の足を治すために帰る。意志は揺るがない」
「その羽根、邪魔!」
セレストが俺の背中を指差した。
「それは有らずの加護!」
彼女の言葉と同時に俺は白い羽根を羽ばたかせた。無効の魔法に無効の魔法が衝突し、まばゆい光が爆発した。
そして、俺は聞いた。あらゆる魔法で強化された俺だから聞こえるか細い声。空から落ちていくセレストの言葉を。
「一緒に居たいだけなの……」
俺は瞬間移動して、セレストのもとへ行き、手を掴んだ。
「どうしてもダメなの?」
「ああ」
俺は帰る事をやめない。セレストの誘いは高校三年生となり将来について迷った俺には嬉しかった。
でも。
「俺は冒険者になるからな」
全ての羽根が消えた今、俺は飛べない。だからセレストを連れて瞬間移動し、凛音とリュセラの元に戻った。
「また会いに来るさ」
セレストは目に溜まった涙の粒を指で拭った。
「回復の杖を返しに来るだけ?」
「それはそうだが、一緒にこの世界を冒険をしたい」
「なら、許す」
別れの言葉は終えた。これからの事も決まった。後は帰るだけだ。冒険者になるのは母さんに止められそうだけど。それが俺の、やりたい事だから。
カフェの窓際に座っているセレストは物憂げに外を見ながら、コーヒーに持参のハチミツを垂らしていた。
「それ俺のだな、いつの間に?」
「まだ返してなかっただけよ」
「返す気は有ったんだ」
「有るに決まってるでしょ、いつ返すかは決めてないけど」
セレストはカップを傾け、とても甘いコーヒーを飲んだ。
「ねえ、取引しない?」
「何を?」
「私とお金儲けしようよ」
「悲劇教団を解体するんじゃなかったのか?」
「そう、その後に商売を始めたいの」
「俺にはまだ、やるべきこともある。学校も卒業したいし、出来れば大学も」
「せっかくこっちの世界で強くなったのに、戻るなんてもったいない」
「元々帰る予定でこの世界に来たんだ」
セレストは荒々しくカップをテーブルに置いた、割れなかったのがすごいくらいの勢いだ
「決闘を申し込む」
「それで納得するならやろう」
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俺の発言の終わる頃に、セレストの撃った弾丸が飛んできた。狙いは足だった。サンダーバードの羽ばたきで回避する。
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「重力は有らずの加護!」
俺よりも高く飛んだセレストは俺にかかと落としをする。頭に直撃した。蹴り落とされた俺は途中で意識を取り戻す。赤い羽根、不死鳥の力で回復した。
「悠人にもお金が必要でしょ!」
「俺は貧乏でも、生きていければそれで良い」
セレストに向けて俺は飛翔する。高く上がるほどに、空気は冷たくなる。天井の光る鉱石の尖った結晶の形が良く分かる。
「いつもあれだけ、調味料買っている癖に!」
セレストはさらに銃を構える。
「止まらずの加護、塞がずの加護、外さずの加護!」
セレストが撃つ瞬間が見えたので、俺は背中の羽根を羽ばたかせ回避する。だが、弾丸が追ってきて俺の足に当たった。痛みを感じるが、加速した回復力で持ちこたえる。
「俺は妹の足を治すために帰る。意志は揺るがない」
「その羽根、邪魔!」
セレストが俺の背中を指差した。
「それは有らずの加護!」
彼女の言葉と同時に俺は白い羽根を羽ばたかせた。無効の魔法に無効の魔法が衝突し、まばゆい光が爆発した。
そして、俺は聞いた。あらゆる魔法で強化された俺だから聞こえるか細い声。空から落ちていくセレストの言葉を。
「一緒に居たいだけなの……」
俺は瞬間移動して、セレストのもとへ行き、手を掴んだ。
「どうしてもダメなの?」
「ああ」
俺は帰る事をやめない。セレストの誘いは高校三年生となり将来について迷った俺には嬉しかった。
でも。
「俺は冒険者になるからな」
全ての羽根が消えた今、俺は飛べない。だからセレストを連れて瞬間移動し、凛音とリュセラの元に戻った。
「また会いに来るさ」
セレストは目に溜まった涙の粒を指で拭った。
「回復の杖を返しに来るだけ?」
「それはそうだが、一緒にこの世界を冒険をしたい」
「なら、許す」
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