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4章

エンチャントお菓子の真髄

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 城での話を終えた俺たちは、宿へと戻っていた。

 宿ではリュセラの道具たちが、メイドの格好で働いている。とうのリュセラは鍋の修理に付き添っているので居ないが、メイドの洗濯板たちにリュセラのことを伝えた。

「それは一安心です。取り敢えず服を寄越せ……。ないだと?」

「今の俺の服はスライムだ。ドラクとの戦いで、魔法まみれになったから」

「なら、仕方ないか」

「俺たちは休んだら帰り支度をする」

「ふっ、寂しくなります」

「俺も賑やかで楽しかった」

「いや、仕事が減るからだ。リュセラの奴は滅多に洗わせてくれないのでな」

「料理も自分で作っちゃうです」

 まな板も少し元気がないように見える。

「リュセラに一緒に作ろうって、伝えてみるといい」

 道具を大切に思っているリュセラの事だ快諾してくれるだろう。

「私がまな板なので、使用中は人の姿になれないです。他のまな板に頼むのもなんか違う気がしますし」

「使ってくれているなら、いつでも一緒だな」

 まな板は笑顔になった。

「それと、手伝って欲しいお菓子作りがあるんだ」

 凛音が休んでいる間に俺はお菓子作りをした。お土産に、それと目的のお菓子を作れた。試食の数だけ魔法まみれになったが。

 一段と魔法まみれな俺に、凛音も欲しがった。

「面白そう、と言うか背中に六枚の羽根とか重そう。私にもちょうだい!」

「後でな、帰ってからこっそり試してくれ。瞬間移動とかあるぞ」

「いいなぁー。ケチー!」

 凛音がリュセラから習った夜の帳を下ろし、俺たちは眠りについた。

 翌日、起きてから片付けをして荷物を整えた。

 魔法まみれなので、カメラとスマホに手伝って貰ったが。俺の手は鍵づめ付いていたからな。扉を通るのにも羽とか、角とかで横歩きする始末。

 いつもの鞄を持ち、凛音から借りているリュックに冒険道具を整えて宿を後にした。

 挨拶のため城に向かう途中、俺と凛音は買い出しをして食料や道具を買った。

 俺はスパイスを買いまくったので、手持ちが尽きた。この世界のお金なので良しとしよう。現実世界でも価値が有りそうな金属硬貨だったけど。

 城の玉座に着くとリュセラとドラクが話をしていた。当然のように半壊している城は放置する。

 俺と凛音を見つけたリュセラは笑顔で迎え入れてくれた。

「来たか、凛音と悠人」

「挨拶に来たってか、義理固いな。そんじゃ早速……」

 斧を構えたドラクを警戒した俺。だが、ドラクを制止する者が居た。リュセラだ。

「ドラク、僕に手番をくれないか? 後で相手してやるから」

 リュセラの真剣さに、ドラクは下がった。

「悠人、僕はお前と決着を着けないとならない」

「何となく理由は分かる。だが、凛音は渡さない」

 彼女には帰る場所がある。俺は絶対に親の元に帰してやりたい。

 俺はスカーフを纏った。ポケットを叩きゴールドボーイに知らせる。

 リュセラは杖を構え、呪文を唱える。

「召喚魔法、光」

リュセラの周りに光が現れ、俺目掛けて飛来した、先に触れたスカーフが、焼ける音がしたので、回避する。

「今のを躱すのか!」

「ちょうど良い魔法があってな、瞬間移動した」

「面白い。召喚魔法、火炎」

 リュセラの杖から火炎が放たれる。それは城の床を焼きながら俺に迫った。もろに受けた俺は焼けただれて、再生した。

「普通の回復では治らないはずだ!」

「ちょうど不死鳥の魔法があってな」

 俺は背中の3種類の羽を動かして見せた。赤い羽根。黄色い羽根。白い羽根。

「どうやってここまでの力を得た?」

「コーヒーがうまいからだ!」

「なんだそれ?」

 ポケットを叩いた俺は、ゴールドボーイを鞭のように連ねリュセラを叩いた。杖で弾かれたが、攻撃を続ける。

「威力が上がっている。魔力も異常なレベルだ、そこまで鍛える時間はなかったはず!」

「俺には負けられない理由があるからな」

 リュセラは魔法を使い浮遊した。そのままあの構えをする。最強の魔法の構えを。

「召喚魔法。星の海!」

 広がった暗闇から、無限とも思える光の聖霊が俺に衝突した。当たる瞬間だけ俺は、白い羽根を羽ばたかせる。

 全ての闇が、光が吹き飛ばされて消滅した。

「まさか、それは天使の羽根か? 魔法消去なんて高等魔法は天使しか使えない。例外がいたが……」

「この羽根も何か出来ると思ったが、魔法を吹き飛ばせるとはな」

「強くなったな。これ以上はここでは出来ない」

「俺の勝ちだ。今回は引き下がってくれ」

 リュセラは杖を納める。

「僕は問わねばならない、邪法なら看過できないからな。どうやって強くなった?」

「俺は理解したんだ。エンチャントお菓子の真髄を」

「ランダム魔法なのに、どうしてそこまで強い魔法が出せる?」

「俺はセレストとの屋台巡りで魔法まみれになった。でも、どれも普通の動物化とか、能力だけ。強い魔法は出なかった」

 俺は鞄から水筒に入ったコーヒーを取り出す。

「俺のコーヒーはうまい。毎日五杯飲んでいる。飽くなき探求の中で常に至高のコーヒーを淹れることが出来るようになった。それだけは自身がある」

「不安になるといつも飲んでるもんね」

「だから分かった。うまい料理ほど、強力な魔法が出せる。自分で淹れたコーヒーにマジカルシナモンを淹れた時だけ、ずっと強い魔法がでたからな」

 一度目はドラゴン、二度目は魔法無効、三度目は分身。どれも強かった。

「そうか、僕の負けだな……。諦めるしかないのか」

「リュセラ、俺は凛音のことなんとも思ってないぞ」

「なんか失礼だ! なーかーまでしょー!」

 騒ぐ凛音は放置して、俺はリュセラを見た。

「悠人は保護者ではないのか?」

「そうだ。俺たちは他人。目的が一致しただけ。だから、俺にリュセラの気持ちを遮る権利はないぞ」

「僕の戦いの意味とは一体……」

 リュセラは落ち込んだが、やや嬉しそうでもある。恋敵なんて居なかったと分かったからだろう。敵対した覚えはないが。常識の範囲では、止めたがな。
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